幽霊ザライド

ソコニ

第1話

幽霊が陰鬱な声で語りかける。

「ようこそ、我々の世界へ…」


深夜の暗闇に包まれたある晩、悟は友人たちと共に幽霊ザライドという新しいアトラクションに足を踏み入れた。幽霊ザライドの没入感が素晴らしいという噂を聞いて、今回の体験に胸を高鳴らせていた。


アトラクションの入口に到着すると、不気味な雰囲気がただよっていた。

暗闇の中に佇む入口は、まるで別世界への入り口のように不気味で、心を引き寄せるような力があった。


不気味な声が奥から漏れてきた。低い重々しい響きが背筋に寒気を走らせた。


薄暗い灯りが陰鬱な光を放ち、周囲を怪しく照らし出している。悟たちは心の奥底で微かな恐怖を感じながらも列に並ぶ。いよいよ乗車時間が近づいてきた。


悟はゴンドラの座席に身を沈めると、ハーネスが慎重に締められるのを感じた。


車両がゆっくりと動き出すと同時に、悟は周囲を警戒しながら眼差しを走らせた。暗闇の中に現れるリアルな幽霊のプロジェクションに、悟たちの心臓は高鳴りを増していった。幽霊たちの姿が次々と現れ、まるで実体のあるかのように悟を取り囲んでいた。


幽霊が冷たい声で語りかける。

「今、あなたも我々の一員となる…」

その声はまるで闇から湧き出るようで、悟たちの心に永遠の恐怖を刻みつけるようだった。


アトラクションが進むにつれ、悟は没入感をますます感じるようになっていった。幽霊たちが周りを舞い、冷たい風が頬を撫でる感触があまりにリアルで、自分が本当に幽霊の世界に入り込んでいるのではないかと思い始めた。


ゴンドラは次第に暗闇の中を進んでいき、幽霊たちの姿も消えていく。周囲は静寂に包まれ、不気味な沈黙が彼を襲った。悟は不安を感じつつも、次の展開に期待を膨らませていた。


突然、ゴンドラが揺れ始め、悟はひるんでしまう。明かりが点灯すると、彼は自分が廃墟のような場所にいることに気づいた。歪んだ壁と崩れた家屋、薄暗い空気が彼を取り囲んでいた。


同じく乗車している他の乗客たちの表情も恐怖に怯えているようだった。その度に悟の心臓は高鳴り、さながらドキドキというリズムで時を刻んでいました。


悟は恐怖に怯えながらも、その状況を奇妙な興奮と共に楽しむような感情が芽生えた。悟は自分がホラー映画に出演しているかのような気分に浸り、本当に幽霊の世界にいるかのように感じるのだった。絶望感に襲われ、自分が本当に幽霊の世界に取り込まれてしまったのではないかと恐怖に震えた。悟は逃げ出すこともできず、ただ恐怖に耐えるしかなかった。


ゴンドラがついに元の場所に戻り、幽霊ザライドは終了した。悟はハーネスから解放されると、安心した表情を浮かべた。彼の友人たちも同じような安堵の表情を浮かべていた。幽霊たちとの恐怖の旅が終わり、解放された感覚が彼らを包み込んでいた。


アトラクションを出ると、夜の闇が再び街を包み込む。


悟は夜の闇の中を歩きながら友人に言った。

「今の夜の景色、なんだか前とは違うような気がする。」


友人らはそれに応える。

「そうだね、何か解放された感じがするんだろうか?」

「確かに、幽霊ザライドを終えて、今の街の静けさが心地よく感じるよね。」


悟は微笑みながら応える。

「幽霊の恐怖に縛られてた気持ちが、もうなくなったみたい。みんなと一緒で本当によかった。ありがとう、みんな。」


幽霊ザライドで味わった恐怖は、もはや悟を縛り付けることはなくなった。悟は友人たちと別れ、一人で自宅へと急ぐ。足取りは軽く、幽霊の恐怖は終わって、心からほっとした気持ちが胸を満たした。


街の灯りが次第に遠ざかり、悟は静かな夜の中を進む。影が建物に投影され、木々が風に揺れる音が耳に届いた。夜の風景には以前とは違う、解放された感覚があった。






自宅に帰った悟が自宅の庭に足を踏み入れると、彼は後ろへ下がった。


その時、悟は気が付いた。幽霊の世界から本当は戻ってはいないことに。


首のない愛犬がうれしそうにしっぽを振って寄ってきたのだ。

彼の心臓は激しく打ち震えた。


「幽霊ザライドは終わったはずなのに…」


周囲を見渡すと黒い人影がたくさんいる。目が赤く光り、不気味な空気が家の雰囲気を支配していた。


幻想と現実が交錯する中、悟は深い恐怖に包まれたまま、この恐ろしい旅が果たして終わることなく続いてしまうのか?

悟はただ一人彷徨うのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

幽霊ザライド ソコニ @mi33x

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る