第15話 『フリーズ』
「こう?コブヤン気持ちいいゴプッ?」
洞窟の行き止まりで仁王立ちした雄のゴブリンに膝立ちして抱きついている雌のゴブリンが上目遣いで話しかける。
「ああ……コブビッチ。気持ちいいよ……そのままお願いゴップ」
「あれが『告白』?」
物陰でココがじっとゴブリン達の行動を見つめる。
「あれは違うよ!むしろ告白が終わったあとのご褒美というか……あはは……」
慌てて俺が訂正する。
何してるんだよ!あのゴブリンども!
羨ましいじゃねぇか!
先生に言いつけてやるぞ!
悔しがる俺に、ロミが絡む。
「やけに詳しいなぁ~天外!では、あれは何をしているのだ?」
「あ……あれは……その……」
なんて言えばいい?なんて言えばいい?
ココが少し身を乗り出す。
「あ!雄のゴブリンが雌のゴブリンの頭を押さえた。天外、助けたほうがいいか?」
「ゴッ!?……ゴブゥ……」
雌のゴブリンから苦しそうな声が聞こえる。
ココは腰にくくりつけている麻袋からパワーグローブを取り出し、手にはめて俺の合図を待つ。
「だ、大丈夫だと思うよ!苦しいのが好き……というか、えへへ……」
全く答えになってない!
「苦しいのが……好き?『苦しい』も『好き』も……今まで感じたことがないな」
ロミが無表情で固まる。
ロミ達、異世界人は疑問に思ったことは首輪に巻いている『AIの首輪』が自動で答えを教えてくれる。
AIの首輪が答えに困ると、元々考える必要のなくなった異世界人は固まってしまうのだ。
ロミの頭の中でAIの声が再生される。
『『苦しい』『好き』どちらも理解できません。はるか昔、『効率』を求め世界がAI化した際に『恐怖』『非効率な感情』を全て排除してきました。故に人間もAI自体は苦しむことはありません。ただし、AIはプログラミングに不備がある場合にエラーを起こすことがあり、その結果、意図しない動作をすることがあります』
「こら――!!お前達――!!ダメごぶよ――!!」
俺達の間をすごい勢いでゴブナガ先生が走り抜ける!
「やばいゴブ!ゴブナガ先生ゴブ!」
慌てる雄ゴブリン。
「コブァ!!……ゴブヤン!押さえ過ぎゴブ!」
コブヤンが手を話すと、苦しそうに雌のゴブビッチがむせる。
「……」
「……」
「お~い。ロミ?ココ?お~い」
ココも固まっている!
俺は無表情のまま、固まって動かないロミとココに声をかける。
あまりの出来事を目の当たりにした衝撃なのだろうか?
ロミの顔の前で手を振ってみるが反応がない。
渾身の変顔をココに見せるが反応がない。
え!?どうしたの?
とりあえず、ロミの胸に巻いてある布を下から上へ引っ張ってみる。
ポロンッ。
片方のおつぱいがポロンした。
「俺のバカヤロー!!」
バキッ!
俺は俺を殴った!
気づかないからといって手を出すのは最低な行為だ!「誰も見ていないから」てはない!俺が……俺が見ているじゃね~か!!
俺はその場で土下座した。
俺の目の前でココが固まっている。
スカートをヒラヒラさせながら、固まっている。
スカートを……。
……ヒラヒラさせながら。
「天外、何をしているの?」
ココが俺を見下ろしながら言った。
「――!?き、気づいたの!?二人とも固まってびっくりしたよ!!」
ココの足元で、犬のように四つん這いになっていた俺はココを見上げて話す。
「あら?ここは……」
ロミも目を覚ます。
俺は「よかった~元に戻って~」とハニカミながら四つん這いのまま、後退りした。
「ごめんね天外。私達、たまにエラーがでると固まってしまうの。でも、大丈夫。過去5分間の記憶は自動で消されるから」
記憶が……消される?
なんか、ものすごく怖いことを言ったような……。
ロミの言葉も気になるが、俺の頭の中の約90%以上を占める『自らの意思』は、まるで映画のように鮮明な場面を繰り返し映し出していた。
「……なにも……履いて……なかっ……た」
<つづく>
「」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます