第12話 『恋』
AIは感情を持たない。故に恋について詳しく説明することができない。恋とは愛や好意に基づく感情や行動のことである。他者との親密な関係を築こうとする欲求や願望を表す言葉として使われる。恋は人間にとって重要な要素であるがAIはその限りではない。
AIが人間を管理するには、感情と欲求と願望、すなわち『恋』を排除しなければならない。
初代AI『アダム』が提唱し二代目AI『イブ』がシステムを構築。三代目AI『カイン』が首輪にシステムを組み込むことに成功。四代目AI『アベル』が人間の管理に成功。
人類から『恋』が消えた。
「明日から『はじまりの洞窟』へ修学旅行に行くゴブ。班ごとに最下層のエンペラースライムを目指すゴブ」
ゴブナガ先生は王冠のついたスライムの絵を黒板に書いた。
「先生ぇ~「人間」はおやつに入りますか~?」
お調子者のコブピエロが手を上げて発言する。
ドォッ!!
ものすごいウケた!「人間はおやつに入りますか~?」はゴブリンの修学旅行では鉄板の質問だ。
人間がAIに管理され、冒険者がいなくなったことでゴブリンが討伐されなくなったことからきた皮肉だ。
「コブピエロ君、人間は決められた行動しかしませんが、それでも『脅威』です。むやみに接触してはいけませんよ。それでは班に分かれて修学旅行のしおりを完成させてください」
『は~い』
ゴブリン達は机を動かし3~4匹のグループでまとまった。
「あんたと同じ班なんて最悪ゴブッ!」
ゴブエはゴブゾウを睨む。
「ゴブゾウ君、なんでそんなに顔がボコボコなの?」
クラスのアイドル『エフリン』は顔を腫らしたゴブゾウを心配する。
「それが、気がついたら頭にタンコブの顔がボコボコになってたゴブ」
ゴブゾウは殴られすぎて記憶を失っていた。
「……ゴブ?」
……あれ?私、あんなに殴ったかしら?
ゴブエは血のついた棍棒を後ろに隠す。
※ゴブゾウに鉄拳制裁を与えたのはミクです。
「そういえば、さっき校舎裏でオデになにか言ったか?記憶が曖昧ゴフッ」
ゴブゾウはゴブエの目を真っ直ぐ見つめる。
「なっ!?な……何も言ってないわよ!バーカ!」
ゴブエの顔が赤くなる。
「……なるほごぶ」
エフリンは気づいた!ゴブエがゴブゾウに恋をしていることを!
「ゴブエ、私に任せなゴブ!」
ゴブエの肩を軽く叩き、何やら企むエフリン。
ゴブリンの修学旅行とは!?
ゴブエの恋の行方は!?
波乱の修学旅行が幕を開ける!!
「もう一度……告白してみようかな……ゴッブ」
教室の窓から空を見上げ、雲の形がゴブゾウの顔に見えてしまい、頬を赤らめるゴブエであった――。
「……すごいことを聞いてしまったわ」
AIの首輪の効果で透明になっていたロミは足早に仲間の元へと急いだ!
【E・R・Oハンター臨時会議室『体育倉庫』】
「あんた達、何をしているの?」
ロミが最後に体育倉庫へやってくると、マットの上に寝かされた天外のズボンを二コとココが引っ張っていた。
「ちょっとだけ!ちょっとだけあなたのアンノウン舐めさせて!」
二コが必死にズボンを引っ張る!
「だめ!してほしいけど、今はダメな気がする――!!」
がんばって抵抗する天外。
「ゴブリンの話では、いっぱい舐めれば甘い液がでるらしいです」
博識のココも興味MAXだ!
「リカバリーマシンの栄養摂取は旨くもないし不味くもない。ただ流し込まれるだけだからな~。がんばれ~二コ~ココ~」
ミクは座りながらズボンを引っ張る二コ達を応援している。
「待って!」
難しそうな顔をして立ってみていたロニが止める。
「ん?どうしたのロニ?」
二コがズボンを引っ張る手を止める。
「助かったぁ~」
天外は寸前のところまで脱がされたズボンとパンツを元の位置に戻す。
「校舎裏で……雄と雌のゴブリンが話してた……たぶん、『告白』」
『告白!』
みんなの声がかぶる。
「そう……『失われた感覚』を探すには5つの行為を実践しなければならない。『告白』『恋』『愛』『??ラ』『???ス』最初の言葉よ」
ロニが真面目な顔で話す。
ロミがハッ!とする。
「いつも言っていたオババが言っていた古代雑誌『花と蜜』の一文か!」
※ロニとロミは同じ家で育った。その時、なかなか会えなかった両親の代わりに面倒を見てくれたのが、役割を終えて焼却処分を待つだけの日々を送っていた『オババ』なのだ。
「告白……興味深い」
ココが呟く。
「そういえば、明日からゴブリン達は修学旅行とやらに出かけるらしい。そこで雌のゴブリンが告白すると言っていたぞ!」
ロミの言葉に全員が立ち上がる。
「ついていきましょう!」
二コの目に炎が宿る。
次回【ゴブリン達の修学旅行】
修学旅行の夜に……何かが起こる!
<つづく>
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