第8話 『洗浄浴場マシン』
AIが管理する王国『アプリ』。その入口に俺達は立っていた。
「君たちはレジスタンスなんだよね?頑丈な門が見えるけど、大丈夫なの?」
俺は隠れもしないで門の前まできた彼女達を心配する。
「たぶん、大丈夫よ」
二コが門に手をかさした。
ピピッ……。
『スキャン完了。二コ・ハイヒューマン。マザーゴットAIがお待ちです。お入りください』
頑丈な門がいとも簡単に開いた。
「どゆこと?」
俺の疑問にココが答える。
「私達の行動は、この首輪で全て管理されている。場所も行動も……意思さえもね」
確かに彼女達がはめている『AIの首輪』は人間が何も考えなくても生きていけるようサポートする。
では、なぜ彼女達がAIの王国に反旗を翻したのか。
そういえば、彼女の潜伏先の洞窟にだって、ちゃんと彼女達の個室とリカバリーマシンが設置されていた。
「反乱するように……仕向けられた?」
俺は疑問を口にした。
「そういうことね。私達が普段、手に取りようがない『日記』や『書物』を手にしたことによって、芽生えた『個性』。なぜそんなことをさせたのか、『マザーゴットAI』に聞きにきたのよ」
二コは王国の真ん中にそびえ立つ城を指差しながら話した。
「その前に『洗浄浴場』で体を流さない?私、久しぶりに長時間歩いて、汗かいちゃったわ」
ロニがブラジャーの下の汗を拭う。
「ん?どうした天外。『ロニのおっぱいの下の汗を舐めたい』みたいな顔して」
ロミが俺の顔を見て言う。
「変態」
二コが俺を睨む。
「どんな顔だよ!!」
俺は精一杯のツッコミをした。
胸の小さなミクとココが胸の下に手を入れて汗がついていないのをガッカリするのを横目で見ながら俺も王国の門の前に急ぎ向かう。
ピピッ!
『稀人。勇者ウチュウ。マザーゴットAIがお待ちです。お入りください』
やはり俺のことも把握済みか。
マザーゴットAIとはマザーコンピュータのようなものだろうか?
考えても仕方ないな!それよりも……。
お風呂……だな!!
【洗浄浴場】
『洗浄浴場』と書かれた建物に入った俺達だが、中には人がすっぽり入れるカプセルが数台並んで置かれており、俺が想像するようなお風呂のイメージとは違った。
「じゃ、お先に~」
ロミがカプセルの中に入る。
……ブラジャーとパンツは脱がないんだ。
少し残念がっていると、カプセルの中で水がシャワーのように勢いよく噴射し、上下左右から回転したブラシが泡をたてながらロミを洗った。
……洗車機見たい。俺は思った。
ゴゴゴォ――!
次にカプセルの中に風が吹き濡れた髪を乾かす。
「なんか……楽しそう!」
「待って!」
俺もやってみようとカプセルに乗り込もうとした瞬間、二コに腕を捕まれる。
「洗浄浴場マシンは登録制なの。天外はここに横になって」
二コが奥のベッドまで移動してベッドに手を添える。
「手動で洗ってあげるわ」
泡がついたスポンジを両手に持ち、少し頬を赤らめながら二コが言った。
「ずるい!私も天外洗う!」
ミクもスポンジを掴む。
「私は『天外の足』を洗うわ」
ココもスポンジを持って、なぜか俺の部位の担当を決めた。
「私はここね」
ロニが俺の股間に抱きつく。
「ロニ!だめ!そこは私がやるの!」
二コが怒る。
「あらあら~残念。二コが最初に見つけたから、今回は譲るわ。じゃぁ私は『太もも』担当ね」
「私は『手』~」
ミクが俺の腕に手をまわす。
「仕方ないわね。ロミは「胸の辺り」でいい?」
『洗浄浴場マシン』から出てきたロミに二コが言う。
「なんのこと?あ、そういうことか。いいよ」
すぐに理解したロミは俺の顔から胸までを舐めるように見た。
「あの……俺の意見は?」
ま、断る理由なんてないけどね……。
すぐさまベッドに横になった俺は、彼女達に服を脱がされる。
「二コ。あんまりソコを凝視しないの」
俺の股間をガン見していた二コにロミが注意をする。
「し、してないわよ!も、もう!!」
焦った二コは俺の股間にデコピンをした。
ビシッ!!
「あた――――!!」
……なんで?
「あ!ごめん!つい!」
謝る二コの隣でミクが俺の股間の異変に気づく。
「ん?大きくなってない?ソコは突っつくと大きくなるの?」
俺の股間をツンツンする。
「やめて~」
あまりの恥ずかしさに股間を両手で隠す。
「洗浄しないの?研究するの?」
ココが真面目な顔で俺を見る。
「も、もちろん『洗浄』よ!さ!みんな!天外の体をくまなく洗うわよ!」
二コは慌ててアワアワのスポンジを俺の体にあてた。
「あらあら。では、誰が一番綺麗に洗えるか勝負しましょうかね」
「勝負!?よし!受けてたつ!」
ロニの提案にロミがのる。
「もう真面目に洗いなさいよ!」
コシコシ……アワアワ……コシコシ……アワアワ。
そういう二コも俺の股間ばかりスポンジで擦り、けっこうヤバイのだが……。
全身をくまなく洗われた俺は、心も体もスッキリとした。
「ありがとう!みんな!」
「誰が一番、綺麗に洗えた?」
ミクが目をキラキラさせながら聞いてくる。
「え?みんな丁寧に洗ってくれたよ。一番か……やっぱりロニかな?脇の下まで丁寧に洗ってくれたから」
二コは結局、股間しか洗わなかったし……。
「あらあら。では、ご褒美を貰おうかしら」
ロニはそう言うと、みんなの前で俺にキスをした。
――!!?
固まる俺と彼女達。
「ロニ!何をしてるの!?」
二コが叫ぶ!
ロニはそっと唇を話すと、みんなの方を向き直して言った。
「うふふ……ただの『唾液交換』よ。古い書物だと『キス』って言うらしいの」
頬に手を当てて照れた様子で話す。
「あ、私もしたい!」
ロミが手を上げる!
「ダメよ。勝負に勝ったらね」
ロニが手を下ろさせる。
「と、とにかく!早く私達も洗って城に行くわよ!」
二コの号令で彼女達はしぶしぶカプセルへ足を運んだ。
すでに『洗浄』を終えたロミが俺の唇をじっと眺めていたが、俺はさきほどのロニの唇の感触を思い出しながらニヤニヤしていた。
「キスって……」
ロミが自分の唇に指をつける。
洗浄浴場マシンの中の彼女達も自分の唇に指をつけて頬を赤らめていた。
<つづく>
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