キャンプはみんなで 9

「相手の動きをよく見ろ!」


「動き出しが遅い!」


「指示を待つな!」


「周囲に気を配れ!」


「しっかりトドメをさせ!」


騎士団の訓練とはまったく違う。

ティファは実戦の中で泥臭く、冒険者の戦い方を叩き込まれる。



「クリスは回復担当だから無理に前に出る必要はねぇ。」


「モンスターの攻撃を数回しのげるようになるとチームの生存率が高まるからな。」


「味方の動きと敵の動きをよく見ろ。ポジショニングが重要だぞ。」


クリスには回復担当としての動き方を教えてくれた。

ドッヂたちのパーティーには回復担当はいないが、そこはベテラン。経験でカバーして指導してくれた。



ティファとクリスの頑張る姿におじさん冒険者たちは感化された。

最初は1日だけの予定であったが延長となり、結果、3日間の特訓が行われた。


ティファは戦闘の基礎を身につけた。

クリスも戦闘の基礎を身につけた。

レオナとアイシャはモンスターの解体、素材の採取、ダンジョンに入る前の準備、ダンジョンの歩き方など、冒険者として必要なノウハウを色々教えてもらった。



「まぁ、とりあえずはこれで最低限のことは出来るだろう。」

「俺たちもそろそろ本業に戻らんとな。」


「本当にありがとうございました。」

レオナが言い、3人も頭を下げる。


「かまわんよ。報酬代わりに、解体した素材はもらったからな。」


・・・実際は、初日は解体が下手過ぎて売り物にならなかったが。


「それで、これからどうすんだ?」


「とりあえず、このダンジョンを攻略してみるわ。」


「ダンジョンは深く潜れば潜るほど、モンスターが強くなるからな。」

「このトロンコダンジョンでも下層はけっこう強いモンスターが出てくるぞ。」

「基本を忘れずにやるんだぞ。」


「本当にありがとうね。

攻略終わるまでしばらくここにいるから、また会うと思うけどね。」


「ドッヂさん、ボロンゴさん、ゲレーロさん、マッチソンさん、ありがとうございました。」


「おう、頑張れよ!」



こうして、ティファたちは冒険者としての第一歩を踏み出した。

勇者と言ってもいきなり強い訳ではない。

しっかりと鍛えないと強くは成れない。

片田舎の冴えないおじさんたちが勇者パーティーを鍛えるとは誰も思わなかっただろう。


ティファたちの魔王討伐の旅は始まったばかりだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る