第19話 Baby love(19)

うつぶせになって身動きできずに泣く翔を元に戻してやった。



ひょっとして。



これが寝返りか???



なんかの拍子にこうなっちゃって、1回転できなくて泣いてたのか・・



え、こんなん初めてだよな??



って、翔が寝返りをしたのを初めて見たのはおれってこと??



そう思ったら非常に小さなことではあるが嬉しさがわきあがって来た。




なんか。



日々成長してんだなァ。



生まれたばっかのころは寝てばかりだったのに。



人間ってすげーな。



またもわが子の成長にジンとしてしまった。



自分が食事をしている時はベビーラックに寝かせて少しだけ背もたれを起こしてやった。



自分が食べている姿をじーっと見ている。



よく見ると口がもぐもぐと動いている。



食べたいのかな・・



尋常じゃないその視線が気になって仕方がない。




みそ汁の豆腐を箸でつかんで、



「・・食うか?」



と、ほんの少しだけ口の中に入れてやった。



本格的な離乳食はまだはじめていなかった翔は少しびっくりしたような顔をしてから



もごもごと口を動かしてそれを飲み込んだ。



その瞬間。



翔は偶然なのか、にこーっと笑った。



笑った拍子に豆腐のカケラが口から出てしまった。



思わず笑ってしまった。



そして口元をハンカチでぬぐってやった。



「そっか。 うまいか。 これから、どんどん食って、飲んで。 でっかくなってくんだなあ、」




・・ビデオ。



買っちゃおうかな・・



その笑顔に斯波はもう親バカの典型のようになっていた。



玉田や八神が娘のためにビデオやカメラを新調したりしているのを見ても



なんでそんなに撮りたがるかね・・



と、冷めた目で見ていた。



しかし。



子供は日々成長する。



この成長を記録しておくことは、やっぱり大事なんじゃないだろうか・・・・



いつも冷静で的確な分析をする斯波らしく



いちいちビデオを買う理由づけを考えたりしていた。



・・どう考えても。



斯波は翔をじーっと見て難しい顔をして腕組みをした。



真尋ンとこの赤ん坊よりかわいいよな。




それはそれは大まじめに考えていた。



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