My sweet home~恋のカタチ。21--happiness blue--

森野日菜

第1話 Baby love(1)

斯波と萌香の息子・翔(かける)は生まれて丸3ヶ月を過ぎた。



年が明けたのをきっかけに萌香は仕事に復帰すると言い出した。



「でも。 ウチの産休の規約は産後5ヶ月だろ? そんなに慌てて復帰しなくても、」



斯波は渋い顔をした。




「わかってます。 でも、」



萌香は北都が倒れてから志藤も以前よりもさらに忙しくなったことはわかっていた。



産休中もそれとなく秘書課の他の社員に様子を訊いたりしていた。



その様子を伺ううちに何だかゆっくりと休んでなんかいられない、と思っていた。



「だいたい。 翔はどーすんだ。 この辺の保育園は待機児童がすごくて何十人待ちだって言われたんだろ?」



保育園不足で認可保育園どころか無認可の保育園もいっぱいだった。



「絵梨沙さんにお願いして。 シッターさんを紹介してもらおうと思って。 そうしたら、北都の家に来てくれているシッターさんに一緒にみてもらうように言ってくださるって、」



萌香はうつむいてそう言った。



「はあ? 真尋んトコで???」



斯波は自分に相談ナシでどんどん話を進めていたことに驚いた。



「そのシッターさんは竜生くんたちが小さい頃からずっと来てくださっている方で、看護師の免許も持ってらっしゃる方なんです。 すごく信用できる方だからって・・」



萌香の説明に斯波はため息をついた。



その意味がわかって



「今、志藤さんだけではなくてみなさん大変な時期です。 翔にはもっと手をかけないといけない時期ですけど、あたしは少しでも会社の力になりたいんです。 毎日、そればかりを考えていました。」



自分の気持ちを正直に話した。



真面目な彼女は自分だけが何もできないことを悩んでいたのかもしれない。



そんな彼女の気持ちがわかってしまうだけに、憮然としながら言葉が出なかった。



「仕事を始めても、家にいる時は精一杯翔のことはみていきますから。 ・・お願いします、」



萌香は斯波にそっと頭を下げた。



ベビーベッドの中の翔は両親の心配もよそに



ごきげんで喃語を発しながらおもちゃを手にして遊んでいた。



萌香はその様子を見てふっと微笑んで、そっと抱き上げた。



翔は嬉しそうにニコニコ笑いかけた。



この頃は表情も出てきてあやすと笑うようになり



かわいくてかわいくて一日中見ていたいくらいだった。





ほんとは



彼女だってまだまだ小さな翔を預けて仕事だなんて心配に決まってる。



斯波はそんな彼女の気持ちもわかってしまった。





萌香は車で北都邸に行き、翔を預けてから出社することになった。



今までと同じ仕事ができるか、と言われたら



正直自信はないけれど、今はとてもじっとしていられない。




「おれ、めっちゃ恨まれてへん???」



志藤のほうが斯波の反応を気にしてしまった。



「いいえ。きちんと話し合いましたから。 彼もわかってくれています。」



萌香はニッコリと笑った。



「エリちゃんとこのシッターさん。 昔っからよく会ったけど、ほんまええ人やもんな。 あの人なら安心やけど、」



「全く知らないところだったら、あたしも躊躇してしまったかもしれません。 絵梨沙さんのお宅にはご迷惑をおかけすることになりましたが、本当に良かったと思っています。」



「ん、」


志藤も本音は萌香が戻ってきてくれたことは嬉しかった。


今は上層部みんなが真太郎をフォローしながら仕事を進めている。


彼女の復帰は本当に心強かった。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る