理解者のために
D.I.O
第一章
一話(プロローグ)
カフェの店内にある窓際のテーブル席に腰を落ち着けるや否や、
「友達のマンションの部屋の中で、エイリアンを飼育してたんだ。ところがそいつが猫だったかな、それとも犬だったかな、まあとにかく、同じく部屋で飼ってたペットの体内に寄生しちゃってね。養分をたっぷりと吸い取ると、その腹の中から喰い破って出てきたんだ」
ここまで話したところで、女性店員が水の入ったグラスを二つ運んできた。そのついでに晴乃はコーヒーを注文した。
「それでまあ、俺は一目散にそのマンションから逃げ出したね。オーバーかも知れないけど、もう地球は終わりだと思った。獰猛なエイリアンはすぐさま巨大に成長し、やがて人間達を餌食にするだろう。そして卵を生み、幼虫を人間の体内に寄生させて、どんどん成熟したものの個体数を増やしていく。そう思い込んでたんだ」
晴乃はグラスに手を伸ばし、口の中に水を含ませた。それから少し間を置いてから、再び語り始めるのだった。
「気づくと俺は自分の部屋に居た。テレビをつけてみると、ニュースでエイリアンのことが話題になってた。謎の宇宙トカゲ現る、こんな見出しだったな。大騒ぎさ。それで俺はとにかく西の方に逃げようと思ったんだ」
一呼吸を置き、話を続ける。
「だけど、辺りを見渡してみると、何故か俺はまだ友達のマンションの近くをうろうろしてたんだよ。頭では早く逃げなきゃって思ってるのに、身体が言うことを聞かない。この近辺には、エイリアンがうようよ蔓延ってるって言うのにさ」
晴乃は、彼の目の前に座る彼女の表情を一瞬伺った。彼女は晴乃のことをずっと見つめている。
「マンション下の通りには、ビッグスクーターが一台停めてあった。友達二人と俺は、それに跨って逃げ出した。俺は一番後ろだったんだけど、振り向くと、なんと一匹のエイリアンが白の軽トラックをバック運転しながら、超速いスピードで追いかけて来るんだよ」
何でエイリアンが車を運転してるんだ、というツッコミはある。晴乃はそう説明する。
「まぁ、とりあえずそれは置いておこう。夢ってそんなものだし」
晴乃はここまで喋りきると、乾いた唇を舐めた。それからグラスの水を一気に全部飲み干した。
「ふふふ」
彼女が、いつもと同じように微笑む。
「俺達は全速力で逃げたね。けど、軽トラックもバックしながら追いかけてくる。くねくねとジグザグ走行しながら、ね。逆走行が不安定なせいか、その次の瞬間、トラックが勢いよくガードレールに激突したんだ。その衝撃で中のエイリアンが後の窓ガラスを突き破って吹っ飛んで来た。俺達はビッグスクーターを停めると、しばらく道路の路面に落ちてもがいているエイリアンを眺めてたんだ」
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