世界は勇者を求めてる!

ポリタンク

第一章『Magic and Brave』

プロローグ 「素晴らしい……お話」


 勇者。


 それは聖剣を持ち世界を救う勇ましき者。


 魔物が、魔族が蔓延る混沌とした世界を光となって照らしていく。


 数多の苦難を乗り越え、幾多の苦境を跳ね除け、遙かなる旅路を進む。


 時には小さな村を救い、時には大きな街を救う。救う対象に大小も是非もない。たとえ世界の裏側にいようと、助けを求める者がいればきっと救ってくれるだろう。


 傷つき倒れる事があったとしても決して挫ける事はなく、頼もしい仲間と共に成長し、世界を我が物にせんとする魔王を討つために剣を振るう。


 その偉業や功績を上げればキリがない。あらゆる英雄譚、あらゆるお伽話、あらゆる伝説が、かの者の足跡を語っている。


 そんな存在を嫌うものなどいない。


 誰もが憧れ、誰もが慕い、誰もが待ち望んでいる。


 その憧憬に、その想いに、その期待に応える者がきっと現れる。



 ああ、なんて素晴らしい……話だろうか。



 そう。みな望んでいる、欲している。お話の中じゃない。


 今自分たちが生きる世界。魔王により、多くの犠牲が積み重なり闇に覆われ始めているこの世界。


 それを打ち倒してくれると、に望んでいる。


 いつかきっと助けてくれると、を欲している。



 やっぱり、素晴らしい……話だ。



 あぁ本当に、



 素晴らしい程に、馬鹿馬鹿しい話だ────。




 プロローグ『素晴らしい程に馬鹿馬鹿しいお話』・了








 

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