第48章−2 異世界の面会はドキドキです(2)
まあ、そういうわけで、どっと疲れて、どっとやる気がなくなってしまった……。
いわゆる、燃え尽きたっていうヤツだろうか?
ちょっと、心がポキっと折れました……っていうかんじかなぁ。
一体、前の大神官長さんは、どうやって、異世界召喚の知識を得たんだろうか?
それに、女神様情報によると、すぐにオレがいた元の世界が滅ぶことはない、ということがわかった。
さらに、放置状態だった三十六番目の勇者もちゃんとミスティアナがフォローしてくれたっていうし……。
ひらたくいえば急いで元の世界に戻る理由がなくなったんだよね。
というか、オレがこっちの世界でその……エッチなことを……たくさんやってたら、元の世界は滅びの危機を回避できるというのなら、オレはここにいた方がいいのだろうね。
元の世界に戻って欲しいと願っているのは聖なる女神ミスティアナくらい……というしょっぱい現実も、やる気が奪われた一因になっているんだよ。
勇者に討伐された後、オレの復活に百年、二百年という歳月が必要なので、魔王の空位が続いたとしても、ちゃんと日常がまわるようには手をうってある。
三十五回も繰り返したことなので、しっかりとしたマニュアルができあがっているから大丈夫だ。
しかも、毎回見直して、アップデートをつづけているから、内容はいたれりつくせりで、充実している。
今回もまた幹部連中がそれを参考に、つつがなく政務を行ってくれればいい。
別にオレがいなくとも『夜の世界』に不都合はない。
だから心配する必要はない。
戻らなくても大丈夫。
とみんなから言われても、オレが統治していた『夜の世界』のことは気になるし、なんだかモヤモヤする。
女神の話がホントウなら、女神様が望まれるとおり、ここ数日はフレドリックくんとアレヤコレヤとやった……いや、あったので、元の世界は安定しているはずだ。
問題は、どういう頻度で、どれくらいやれば、魔素問題が解決するのかよくわからない……ってことだよな。
でもなあ……いくら世界のためとはいえ、オレのエッチが世界を救うってどうなのさ?
さすがにそんなことまで、口にする気にはなれなかったよ。
オレは聖女様と違って、オレの口は堅くて重いからね。
このことは誰にも……フレドリックくんにも話していない。
適応能力は高い方だと思っていたんだけどね、この世界の多夫多妻の感覚に馴染んでよいものなのか迷いもあるよ。
正直なところ、馴染めるのか自信がないし、馴染めたら馴染めたで、ちょっと怖い……。
異世界って、ホント、怖いよ。
旅行気分で気安く行く場所じゃないよね。
自分の城に帰って、自分の寝室で、自分のお気に入りの枕で寝たいよ。
歴代勇者たちも、慣れない異世界で苦労したんだろうなぁ……。
と、しんみりしてしまうオレは、情緒不安定なのだろうか。
オレはこうして部屋に籠もって、ゴロゴロしてるだけの存在に成り下がってしまったけど、オレのいた異世界の勇者たちは、なんだかんだといって、ちゃんとオレを討伐してたもんな。
『昼の世界』では歴代勇者たちを称える銅像があるらしいが、『夜の世界』にも設置した方がいいかもしれないね。
よし、今度、見積もりを依頼して、予算を計上するように伝えよう。
いや、職人に相見積もりさせるよりも、賞金という形でコンペティションにして、芸術分野の振興をはかってもいいかもな。
ゴロゴロしているだけだから、考えもあっちに転がり、こっちに転がり……と、まとまりがないね。
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