第26章−2 異世界のデートはイチゴが先です(2)

 ただ、ちょっぴり心配なのは、オレのいた世界と、こちらの世界、ドレスの認識は一緒なのだろうか。


 書庫で得た知識では、ドレスは女性が着るもの、となるのだが……。

 改めて確認することでもないが、オレは立派な男だよ。


「ええ。勇者様ならきっと、ドレスも素敵に着こなせてしまうでしょうね。そうですね……勇者様は、はっきりとしたお顔立ちなので、その瞳のお色のような、真紅のドレスが素敵ですわ。濃い藍色のドレスなども、似合いそうですよね」

「そ、そうですか……」


 オレのメイドたちが推してくる色をズバリと言い当てられ、背中に冷や汗がダラダラと流れ落ちる。


 このままドレスを専門に扱う仕立て屋に連れて行かれて、女装させられる……ってことはないよね?

 誰にも確認することができず、オレの心拍数はどんどん増していくよ。


「翠色のドレスなどはどうだ?」

「黙りなさい! 独占欲が強い男は嫌われますよ」

「…………」


 ドリア王太子が口を挟んだが、エリーさんの一言で見事に撃退される。


 王太子の瞳の色と同じドレスは……色々と面倒なことになりそうだから、ちょっと嫌だねぇ。


「……それにしても、勇者様の髪って、すごく艶やかで、美しい黒色ですね」


 会話に入れずしょぼくれているドリア王太子は軽く無視して、エリーさんは女子トークを続ける。


 ものすごくマイペースなひとだよね。


 そういうエリーさんの長い赤い髪も艷やかで、キラキラと光沢を放っているよ。ポニーテールがよく似合っている。

 毎晩しっかり手入れをしているんだろう。


「エリーさんの髪も艶があって、絹糸のように美しいですよ」


 オレの社交辞令に、エリーさんの頬がぽっと赤く染まる。


「社交辞令でも、勇者様のようなお方に褒めていただけるなんて、とても嬉しいですわ」

「事実を述べたまでです」

「まあ……」


 エリーさんはフフフと嬉しそうに笑う。


 王太子とフレドリックくんが驚いたような顔で、オレとエリーさんを見比べているぞ。


 このところ、リーマン勇者が三代続いたからな。

 彼らの記憶を覗いてたら、ゴマスリ、タイコモチとかいうスキルを自然獲得していたんだよ。

 そのスキル……使うなら今だろう。


 上機嫌なエリーさんが、オレの髪にさわりたい、と言ってきたよ。

 この流れでは断るわけにもいかないし、それでエリーさんが機嫌よく任務を遂行してくれるのなら、お安い御用だな。


「勇者様の髪は、サラサラしていて、とても柔らかいですね。触っていて、とても気持ちがいいですね。わたしが理想とする髪です。お手入れの秘訣とかあるのですか?」



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