異能に咲いた私たち
青白
第一話 「異能」①
〈六月七日、十五時三十四分。●●市中心街にて、異能の発現を探知
対象:男性。二十代後半から三十代
状況:暴走。自我はあるが、いずれ異能に呑まれ異物と化す。被害が拡大する可能性大
被害:近隣のビル一部の崩壊。道路陥没、信号や街灯などの倒壊
死傷者:多数。詳細不明。大勢の一般人が巻き込まれた模様
任務:対象の抹殺〉
1
最初はちょっとした突風だった。被っている人の帽子が吹き飛ぶ程度の、行き交う人々がはっと空を見上げる程度のありふれた風だった。
その日は六月の始まりにしてはやけに蒸し暑く、日差しがアスファルトを焦がすほど雲一つない晴天であった。
それ故に突然開けたスクランブル交差点を吹き抜けていったその突風は、いささか異端な存在だったのだ。
次に、人が吹き飛んだ。交差点の端にいた人々が強い力で押されるようにすさまじい速度で。衝撃でその場の雑踏はドミノ倒しのようになる。悲鳴、混乱。倒れこんだ複数人に押しつぶされた何人かが、このさなか圧死する。
路肩に止められた車の列が浮き上がり、混乱する人々の渦に突っ込む。血しぶきが上がり、さらに悲鳴は折り重なる。
近くのビルの外壁がえぐれ、ガラスとコンクリート片が地面へと降り注いだ。土埃が舞う中、その周辺はまるで爆撃にでもあったような地獄へと化す。
「なんだこれ。なんだこれなんだこれぇ! おいおいおい、すげぇ! すげぇよ俺!」
悲鳴と倒壊音の中で一つ、男の声がする。交差点の外側、逃げ惑う人々を尻目に、地獄絵図を遠くから眺めて笑い出した男の姿があった。
男が手を前にかざす。同時に街路樹と街灯が根元からへし折れて、前方へとすさまじい勢いで吹き飛んでいった。土埃がひどくなる。
「これ俺がやってんだよな⁉ やべぇよ、マジ無敵じゃん……! これが異能ってやつなのかよ!」
男は更に腕を振り回し、突風を巻き起こす。逃げようとしていた人たちが、反対方向へと吹き飛ばされていく。紙屑のように、軽々と。
「……無職だニートだ、散々バカにしやがってよぉ。てめぇら、俺を見ろよ! 俺は、最強だぁ!」
男が両腕を掲げると、彼を中心に衝撃波が走り周りのアスファルトの表面が捲れ上がった。その破片が倒れた人たちに突き刺さり、断末魔が響き渡る。
遠くでサイレンがする。近づいてくる。男はそちらの方向を向くと、にやりと笑った。
「どうしよ。全部ぶっ壊しちまうか、こんな世界」
2
「……あちー。今日ほんと暑すぎない? 地球バグりすぎでしょ、メイク全部はげちゃうよー」
アイスバーを持っていない方の手でスマホをいじりながら、「げっ。今日三十二度⁉ ほぼサウナじゃんっ」と姫沼沙希(ひめぬま さき)はうんざりする。天気アプリに表示された近日中の気温はどれも三十度を超えていた。加えてこの湿気。うんざりしながら首筋に浮かんだ汗をハンカチで拭う。
「あははぁ。汗対策大事だよ、サッキィ。動画撮る前に、うちがメイク直してあげる。めっちゃいいよ、今使ってるプチプラのやつ」
「マジ? それってチャンネルで紹介してる? てか、桃色(ももいろ)全然顔汗かいてないじゃん。どうやってんのそれ」
「動画はプチプラ紹介で特集組んでこれから上げるよてーい。脇の下、ちょっときつめに締め付けとくといいよぉ。顔汗全然かかなくなるから。その代わり、下はもうべっちゃべちゃになるけど」
「やば、桃色やっぱプロだねぇ」
「顔は配信者の命だかんねぇ」
沙希は隣を並んで歩く宝石月桃色(ほうせきづき ももいろ)と笑い合いながら、アイスバーを一口齧る。同じブラウスとベストの制服なのに、桃色が着ているとより洗練されて可愛らしく見えるから不思議だ。これでもあたしも、結構かわいく見えるように努力してるんだけどなぁ。ちょっと悔しい。けど相手は人に見られるプロだ。
くりんと巻いた前髪、ハーフツインに長めのリボンをつけた桃色は全体的に小柄で、何というか愛らしい。対してこちらは図体ばかりでかく、長い髪がうっとおしいのでちょっと適当なポニーテイル。こう比べると、彼女の意識が爪の先まで行き届いているのがよくわかる。すげー。やっぱかっけぇわ、桃色は。
「じゃあサッキィ。このまま電車乗って、街ブラブラしながらvlog一緒に撮る感じでおっけー?」
「おっけー。あ、あとでプチプラのやつ教えてー。ドラッグストア寄ってもいい?」
不意に沙希の腕に埋め込まれたデバイスが振動した。皮膚の下が微かでも震えるのはとてつもなく不快だ。
沙希はため息をつきながら、手のひらを顔の前に広げた。いつものように、ホログラムで画面が目の前に現れる。
「外出中ごめん、沙希。緊急で呼び出しかかった。スクランブル交差点。『異能発症者』が暴れてる」
画面に現れた通話相手は、あまり化粧気のない生真面目そうな女性。沙希と桃色の担任の教師だった。
「えー……。あたし久々に休みで、ようやく外出許可通ったんだけどぉ。透子(とうこ)先生、他の人じゃダメ?」
「今回の奴はやばい。もう被害が広がりまくってるし、死傷者も多数出てる。あんたと、九十九(つくも)のコンビじゃないとたぶん死ぬ」
「……わかった。ちゃんと埋め合わせしてよ?」
「本当にごめん。上には私からもよく言っておくから」
通信を切り、沙希はまた深くため息を吐く。そして桃色に手を合わせて頭を下げた。
「ほんっとごめん、桃色。呼び出し喰らった。めっちゃ楽しみだったけど、お出かけは今度でいい?」
「もちろん。サッキィは人気者だもんね。行ってらっしゃい。……絶対怪我したり、死なないで」
桃色がまなじりを絞り、真っすぐな眼差しで沙希の手を握ってくる。……この子のこういうところが、本当に大好き。
「はぁ。桃色があたしのパートナーだったらよかったんだけどなぁ。あんな年寄りみたいな頑固者じゃなくて」
「聞こえとるぞ。誰が年寄りじゃ。私はお前らと同じ十五じゃぞ」
後ろから声がして、うんざりしながら振り返る。
同じ制服を着た少女が、ちょうど地面に降り立つところだった。着地した彼女は背筋良く沙希たちの横を通り過ぎてそのまま歩いていこうとする。桃色よりちんまりとしているのに、生意気が五倍くらい身長を盛っているように感じる。
「さっさと行くぞ。必殺天誅人の再放送が夕方にある。それまでに終わらせて帰らせろ」
「そんなの録画しとけっての。何であたしがあんたの予定なんか気にしなきゃいけないわけ?」
「アホかしとるわ。リアタイでお茶を吞みながら視聴するのが私の唯一の娯楽じゃ。邪魔する奴は全員嚙み砕く」
「発症者の前に、あんたのこと大人しくさせようかなぁ、九十九ぉ?」
「やってみろ、うつけ者が」
睨み合っていたら、「こぉら、仲良く」と桃色に優しく背中を押されてしまった。彼女に免じて許してやるという心づもりで、沙希は彼女より先に歩き出す。
「てか、電車乗ってくの? 止まってんじゃない? あんたのアレで、手っ取り早く運んでよ」
「コスパが悪い。そんなことでいちいち力なぞ使ってられるか。車なら用意させとる。お前と違ってこっちは臨機応変、用意周到じゃ」
「さっき絶対力使ってここまで来たくせにさぁ……」
つんとした表情のまま、頭一つ分くらい沙希と身長の違う彼女は言い放つ。いちいち突っかかってくる。本当に憎たらしいやつ。
ショートボブ、というよりおかっぱ頭というのがふさわしい彼女は、九十九えなが。
沙希のパートナーで、今のところ唯一『異能』を『共鳴』できる体の相性だけはいいやつだった。
3
「あっはっはァ! やべぇ! やべぇな! 俺敵なしじゃん! 楽勝ぉッ!」
男が叫ぶように笑いながら、両腕を振り回す。突風、貫く。彼は歩きながら台風を巻き起こし、街を破壊していた。
あちこちに嵐の残骸が、人の遺体が遺されている。彼はそれを鼻であざ笑い、更にぶっ飛ばして威厳すら拭い去る。
制服を着た警官たちが辺りを封鎖し銃で応戦しようとするも、銃弾は彼の周りを吹く風で弾かれパトカーさえ宙に放り出される。
「何のための警察だよバカどもがぁ。これが俺だよ! 俺なんだよ! 掛かって来いよ戦車でもなんでもよぉ!」
男は壁に叩きつけられて倒れこんだ警官たちに目をつける。そして腕を振り下ろし、下向きに風を起こす。
「ぐっ、おおっ……!」
警官たちの体が地面に押し付けられる。巨大な壁に、すり潰されるも同然の圧力。じわじわと体を押し付けていく。
「死ね、社会の犬ども」
男が更に腕を振り下ろそうとした。
そこに、沙希は飛び込む。
「いい加減にしろ、バカ」
ぎりぎり周りの風に呑まれない距離で、ぶっ放す。ショットガン。散弾銃。男は衝撃で地面に転がった。警官たちが解放される。それを目視して、沙希は着地しつつ男を睨んだ。
「ダサすぎ。大の大人がこんなはしゃいで何やってんの? 玩具もらったガキかっての」
「いってぇ……なんだお前ぇ……ッ」
「ご要望通り、戦車ですけどぉ?」
男はよろめきつつも立ち上がった。やはり風で防がれ体に痣を作る程度で済まされたようだ。沙希は舌打ちして、ショットガンをコッキングして薬莢を吐き出させる。残り七発。やはり正面からでは致命傷は無理か。
「ガキがぁッ! 死ねぇッ!」
男が腕を振るう。突風。それが走る前に、沙希はその範囲から退いている。地面のアスファルトがえぐれただけだった。
「は……? なんで……?」
「もっかいやる? いいよ、絶対当たらないから」
「うるせぇえええッ!」
男は相撲の張り手のごとく腕を何度も突き出す。風。つむじ風が刃となり、かまいたちの如く飛び掛かる。が、沙希はそれが来る前に既に避けている。男が腕を振る前から、もうどこに来るかはわかっていた。
予測ではない。わかっていたのだ。
「くっそぉ……! なんでだ、なんであたんねぇんだよぉ……!」
「さあ、どうしてでしょう。ねえ、あなた名前は?」
「は?」
「名前。ないわけないよね。あたしは姫沼沙希。名前教えてよ」
「黙れェッ!」
振るう腕。範囲の広いかまいたち。沙希はブリッジをするかのように大きく背をのけぞらせてそれを回避する。そしてそのまま体幹で手を使わず立ったままの体勢に戻る。
「名乗るほどの者でもってやつ? はぁ、あたしの嫌いな奴とおんなじで、あなたも古いドラマとか好きなタイプ? じゃあとりあえず、田中さんとかでいい?」
田中さん、さっさと自首しなよ、と沙希はショットガンを持っていない方の手を差し伸べる。
「は? 自首?」
「今ならまだ間に合う、かも。その異能、何とか治せるかもしれないでしょ。『異物化』する前に、早く手を打たないと」
「バカにすんなよぉ! 俺はこれでいい! これがいいんだァ!」
男が風の刃をいくつも放つ。が、もう沙希はそこにはいない。男の真横にいた。
「残念だよ。ごめんね。──あなたを殺さなきゃいけない」
真横からショットガンで射撃。が、銃口は男の方には向いていない。上空に向かってだ。男の風撃をいなしながら、あらぬ方向に向かってショットガンを放ちまくる。
「下手くそがよぉ! どこ見て撃ってんだボケェ! FPSやめちまえ!」
「何それ、ブランドか何かの名前? てか、あんたも当たってないし」
「クソ女ァッ!」
男が腕を振るう。車がいくつも沙希に向かって転がってきた。が、沙希は動かない。
「蛇足、薙ぎ払え」
転がる車が、薙ぎ払われた。
巨大な尻尾だ。土埃の中から首をもたげたのは、巨大な蛇。バスでさえ呑み込めそうなほど大きな口を開き、舌をちらつかせている。
「なんだぁ!? アナコンダ⁉」
男が目を剥いて大蛇を見上げる。
「蛇足、じゃよ。見ろ、ちゃんと足があるじゃろ」
蛇足、と呼ばれた巨大蛇に土埃を払わせながら、えながが姿を見せる。勿体ぶった演出過剰な登場。沙希は聞こえるように舌打ちする。
「ちょっと、九十九。周りの人の避難終わったの? 時間稼いであげたの無駄にしてないよね?」
「無能なお前と一緒にするな、たわけ。生きてるやつは安全なとこまで全員運んだ。おかげで蛇足が不機嫌じゃ。無駄に働かされたからのう」
えながに応えるように、蛇足が生えている足をどたばたと動かしてシャーッと吠える。
「丁度──機嫌を取る玩具が欲しかったとこじゃ」
えながが構える。掲げた右手、項垂れた手首から先の恰好は蛇に見立てている。
『蛇足』は彼女の異能。力によって具現化された、巨大蛇なのだ。
「蛇足、噛み屠れ」
身をしならせ、蛇足が一気に男に突っ込む。大きな口は男を捉えたが、噛み砕けない。周りに纏わせた風で、かろうじてガードしているのだ。
「おぉ……? すげぇ……やっぱ俺、すげぇじゃん……」
「マジか。今ので嚙み切れんとはのう。やはり私向けの相手か」
「いや、あたし向けでしょ。何勝手にハブってんの?」
「ハブっとるのはお前も同じじゃろうが」
──蛇足、のぼり龍。
えながは蛇に見立てた右手をゆっくり上へと押し上げる。蛇足は身を縮めると、男を咥えたまま一気に空へと上昇する。まるで龍だ。
「ぐっ、おぉぉおおおッ!」
「空で振り回されて感じる風圧はどうじゃ? その風、いつまで持つのう」
「な、舐めんじゃ、ねぇ……ッ!」
上空で踊り狂ったように動き回る蛇足。咥えられた男は振り回され悶えていた。
だが、風切り音の中でもその声ははっきり聞こえてきた。
「し、ねぇえええええええッ! どいつもこいつも、死ね死ね死ねぇええええええッ!」
「うおっ⁉」
声を上げたのはえなが。沙希と彼女の体が、近くにあった瓦礫その他と一緒に空へと舞い上がった。
男の操る風だ。彼を中心に風が渦を巻き、まるで巨大な玉のような空間にかき回している。
そこに沙希たちは巻き込まれた。巨大な竜巻に呑まれたようなもみくちゃ具合だ。
「なんなんじゃこいつ……⁉ この力、マジで覚醒したてのそれじゃないじゃろっ。どうやったらこんな芸当が出来る⁉」
「わかんないけど、とりあえずもう人じゃなくなったみたい」
隣り合って渦巻かれながら、沙希とえながは目にする。
蛇足に咥えられた男の背中が裂ける。そこから繭を破るように姿を見せたのは、あきらかな怪物。体躯が三倍以上に膨れ上がった、真黒な体を持つ獣だった。彼、だったものが吠える。風が更に激しく渦巻いた。
異物化。突然授けられた異能に適合できなかった者が遂げる末路。自我も何もかも消え失せ、ただ衝動のままあらゆるものを破壊する化け物と為る。いわば、超能力を持った怪物だ。こうなると力も更に強まる。
「ちぃ……更に異能が強力になっとる。このままじゃ地区一つ吹っ飛ぶぞ。どうするんじゃ、姫沼」
「あたしの合図で、蛇足にあの人のこと離させて」
「今離したら辺り全部この風に呑まれるぞ⁉」
「わかってる。視えてんだってあたし。信じなくていいから、やって。責任は全部あたし持つ」
円状になった竜巻に振り回されながらえながは悩んでいたが、苦渋、本当に渋々といった様子で頷いた。
「私は知らんからな。上の連中に首切られても」
「出来ないっしょ。あたしいないと困るのその連中だもん」
えながが更に苦い顔をしながら、右手のくっつけていた親指と他の指をがばっと開く。
蛇足が口を開けた。怪物が台風の外へと弾き出され、自ら生み出した風で宙へと浮かぶ。
怪物がまるで喜ぶように、笑うように大きく吠えた。もうそこに、あの男の自我はない。
だから、殺してあげないと。ちゃんと。
刹那。怪物の体に風穴が空いた。衝撃で体をねじれば、更にそこに複数の散弾が浴びせられる。そして別の方向から、更に玉の粒。突如現れた散弾で、至る所から怪物は撃ち抜かれていく。
「十五分きっかり。さすがあたし、狙いばっちり」
手のひらのホログラムで時間を確認して、沙希は言う。
怪物を蜂の巣にした弾丸は。先ほど沙希が、前もって撃ち放っていたショットガンだ。
下手くそな射撃に見せた銃弾を、未来に。この瞬間の今に送り込んだ。
ぐらり。怪物の体がもたげて、風が解け地面へと落ちていく。
同時に沙希たちを捕まえていた竜巻もなくなり、地面へと真っ逆さまになる。十階建てビルの更に遥か上空である。
さすがに死んだかも、と不安になって来た頃。柔らかくて固い感触が背中にぶつかった。空を飛ぶ蛇足がその身でキャッチしてくれた。
召喚した本人であるえながは、得意げな顔で沙希の隣に腰を下ろした。緑の龍の背に乗っている気分だ。そんな歌があったような。
「何だ、助けてくれたんだ。そのまま墜落させられるかと思った」
「さっきも飛んできた車から助けたじゃろ。感謝しろ、敬え、そしてひれ伏せ。私がいなければお前は今頃ひき肉ハンバーグじゃぞ」
「えらっそうに。あたしがいなきゃあんたも今頃あの人の餌食でしょ。……ま、でも。サンキュー」
素直にそう言ったら、えながは少し驚いたような顔でこちらを見てくる。何その顔。っていうか、あんたもお礼言えよ。おい。
地面に降り立つ。沙希は真っ先に、地面に横たわる怪物の元に向かった。
血だまりが広がっている。その真黒な体は光を一切通さず、まるでその空間だけを異物の形に真黒に切り取ったかのように見える。ゆえに、異物と呼ばれている。
頭だったと思わしき部分は散弾で完全に吹き飛んでいた。人間でいう心臓である異物のコアがある胸部も、大きく抉れていた。
完全に死んでいる。もうぴくりとも動かなかった。
「……妙な奴じゃったな。異能を発症してから短時間で、あんなに強力な力は扱えないはずじゃぞ。明らかにこいつは変じゃ」
「そうだね。まあそれは、解析班に任せるとして」
男だった遺体の横に屈みこんだ沙希は、両手を合わせた。目を閉じる。
「……ごめんね。次は、どうか素敵な場所に行けますように」
安らかな旅を、祈る。えながも隣にひざをついて、同じく手を合わせてくれた。
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