バナナの皮を捨てないで下さい
ガビ
第1話 バナナとは、油断して食べるものである
『バナナの皮を捨てないで下さい』
「‥‥‥?」
午後10時のコンビニのトイレで、俺は首を傾げていた。
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今日もクタクタになるくらい働いた。
家路についている途中、どうしても便意が我慢できなかったので、コンビニのトイレを借りることにした。
しかし、男女兼用トイレのドアの張り紙に『トイレを使用する場合は、店員に声をかけて下さい』と書いてあった。
なんだよ面倒クセーな。と思ったが、何かしらの事件なりいたずらがあった対策の可能性が高いことを考える。
パンを並べている金髪の若い女性の店員さんに声をかけてから、トイレに入る。
「‥‥‥ふぅ。」
出すものを出して、トイレットペーパーを千切る。
そこで、便座と少し離れた位置にゴミ箱があることに気づき、そのゴミ箱にも紙がはってあり、何か書いている。
このトイレを借りている身だから、何を書いているのかを確認しておこうと、お尻を拭いて、パンツとズボンを履いてから読みに行く。
『バナナの皮を捨てないで下さい』
「‥‥‥?」
予測していなかった文言に首を傾げる。
バナナの皮?
コンビニのトイレのゴミ箱に捨てる奴がいるのか‥‥‥。
わざわざ、こうして注意書きしているということは、常習犯なのだろう。
そいつは、バナナをトイレで食べて、皮をその流れで捨てた‥‥‥みたいなことかな?
なんだか、犯人が哀れに思えてきた。
バナナとは、油断して食べるものだ。
バナナの味なんか分かりきっているので、不味いわけがないと油断してアホ面になる。
暗殺者の皆さん、ターゲットを始末する際は、バナナを食ってる時がおすすめですよ。
閑話休題。
犯人はバナナを油断して食べれる環境が、コンビニのトイレしかない可能性が出てきた。
「‥‥‥」
思考の海に沈みそうになったが、長居してしまっては、他のトイレを求めている人に申し訳ないので、退出する。
さて、俺は、コンビニでトイレを借りた時は、何からしら商品を買うことで恩返しすることを自らのルールにしている。
いつもは、缶コーヒーを買うのだが、今は喉が渇いていないので、他に欲しいものを探す。
お菓子もなぁ。
今、お腹周りが気になるから遠慮したい。
夕飯は、職場でカップ麺を食べてしまった。
そうなってくると、買いたいものが見つからない。
ウロウロしていると、普段見ないコーナーに目が向いた。
弁当コーナーの端っこに、バナナが置かれていた。
「‥‥‥」
なんだが、無性にバナナが食べたい。
俺は、自然な動作でバナナをレジに持っていく。
あの張り紙効果で、このバナナは売れた。
名前も知らない犯人よ。
お前、間接的にこのコンビニの売り上げに貢献してるよ。
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