階段に立つ。 詩、評論文、短篇小説集
摂氏七十度
旅路
夕闇にこびり付いた将来を払い除けようと月を隠すと、更に太陽は僕の頬を焼いて、一帯を風来の旅人の本の表紙の様にした。
椅子に立って眺む景色に溶かされて、僕は本当に表紙に落とし込まれそうになった。
絵の中の旅路は止めどなく続くばかりで、きっと、終わりという概念も存在しないのだろう。
土がしがみ付くサンダルと波を打つステテコを履いて、熱された日常を歩いて帰る。
帰途を辿る最中、石を見つけて、蹴り飛ばしてやった。
その石は、僕の頭の中で、どの様な存在で合ったのだろうか。
跳ね返って、僕に来るのか。痛いのか。
壁に当たって、音を立てるのか。五月蠅いのか。
何も無いと言う事は、それは明日に在るという事なのだろうか。
椅子から降りて、旅を終え僕は又、本当の人生を渡る。
木目を並べる二階は音を立てて僕を立てた。
椅子から降りて見る太陽も又、僕を焼きつける様だ。
手を刎ねた月は、優しくまやかしとして僕を抱く様だ。
その灯火に照る、顔が少し、見える。
僕は汗をかいている。
明日は、あの石は落ちているのだろうか。
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