戻りしは人の心か

気にはなるがここ引き下がろう

何しろ怪我人けがにんの前でのおしゃべりは不謹慎ふきんしんだろうから___。


「それはそうと、お疲れでしょう。

看病かんびょうは私が致しますので横になっては如何いかがですか?」


問いに返し___


「お心遣こころづかいには感謝します。

ですが部屋には戻れませんので

すみをお借りします。

後の事はお任せして宜しいのですね」


こちらから言い出した事だが

よく血の匂いがする部屋で寝られるものだなと僅かながら思う___。

視線しせん患者かんじゃからはず

浅間殿に戻した時にはもう寝息ねいきをたてている。

男として情けない話しだが

すさまじい胆力たんりょくだなと思わざるにはいられない。

それからやく四半刻しはんどき(30分)ほどった頃に文隆ふみたか殿は医者と共に帰ってきた

7人の徒党ととうれて_____


医者の玄翁げんおうあきれ顔で文隆殿を、視線をふと落とすと

おどろきと発見に目をかがやかせ患者かんじゃ見張みはる___。

まぁ、玄翁げんおうさんの反応で大体の経緯いきさつは察しがつく。


医者を呼ぶところ迄は納得がいくが

家臣に打ち負かされたはじに落ちないから、

ここは力づくでもうばい取らないと気が治まらない、

といったところだろうか。

まぁ、当たらずも遠からずと言った様子でしょう。


玄翁げんおうもう其方そなた

従者じゅうしゃ治療ちりょうをしかとたのむ。

素人しろうと応急処置おうきゅうしょちでは如何いか不備ふびが有るかれたものではないのでな!」


玄翁げんおう殿はあきれたからなのか、

溜息ためいきをつき、浅間あさま殿がほどこした治療に仕上げを掛ける。


仕上げと言っても手を付けたのは包帯ほうたいめ付けが甘かったのをめ直しただけだ、

で在れば当然のように文隆殿は文句を付ける___


「何をしている老耄おいぼれが!

我が従者の治療に手を抜くのか。

其方そのほう覚悟はよいで有ろうな!」


捨て台詞ぜりふとしては拾っても面白くも無いつまらないものだが。

さらに輪を掛けて面白く無いものが文隆殿が連れてきた七人の徒党だ、

さっきから口に何を入れているのか知らないけどクッチャクッチャと耳障みみざわりな事この上無うえないい。

それは玄翁殿と浅間殿を見ても同意で有る事は顔を見れば明らかだ。

私達が呆れて居ると文隆殿は声高こわだかあらげる___、


「さぁみなしゅう

このらえわれに続け!

特に働いた者には別に報奨ほうしょうつかわそう」


居丈高いたけだかれいはっすると七人の悪徒あくと達はダラダラと全員立ち上がり………。


二人が浅間殿に色目いろめで見ながら近寄ちかより、

残り五人の内二人が、文隆殿を背後から角材かくざいなぐりつけた___。


朦朧もうろうとする意識いしきの中、

根性でとどまり文隆殿は悪徒あくともっさけぶ。


「何を血迷ちまようてか!斯様かよう狼藉ろうぜき許されると思うのか」

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