第71話 勇者の称号剥奪

ライオスはルステリア法国にある自分の宮殿の大広間にてクリードからの通信を見ていた。


「よって各国政府の同意の元にライオスから勇者の称号を剥奪する。これでライオスお前は勇者ですらなくなった。ライオスもはやお前はただの罪人でしかない。」


「ライオス!!ただちに聖都ルスタニアの人々の石化を解除して、ゼスタニア王宮まで出頭せよ。さもなくば実力でもって聖都を解放しライオスお前を捕まえにいく!!逃げる事はできない!!覚悟しておけライオス!!」


ライオスは怒り心頭でクリードからの通信を叩き切ったのだった。


「ええいFランクの奴め!!このライオス様が勇者の称号をはく奪されるなんてあってたまるか!!このライオス様の誘いを断ったばかりか、このライオス様を追い込むような事をしやがって!!」


ライオスの傍に控えていたベルーガが言った。


「全てが遅きにしっしましたな。どうやらオーラリカもブリテスクも襲撃に失敗していたようです。ガイボルスもブルムットもFランクにやられてしまったんでしょうな。」


「ライオス陛下なんでFランクを追放などしたんですか?どうみても一番に囲っておかなければならなかった人物だと思いますが?」


「あの時はFランクを雑用もできない奴隷だと思っていたんだ。」


「とんでもない判断ミスです。Fランクいやクリードはライオス陛下よりも優秀なんですよ。一番敵に回してはいけない相手です。」


「分かっているわ、だから戻って来てくれと頭を下げたんだろうが。」


「だからそれじゃあ遅いんですよ、追放した後で追い込まれたから戻って来てくれって頼んだって戻ってくるわけないでしょう。これじゃあクリードを追放した時点でライオス陛下の失敗は確定していたようなもんですよ。」


ライオスは泣きそうな顔でベルーガに言った。


「ええい、このライオス様ばかり責めるんじゃない!!このライオス様の心が傷ついてしまうだろうが。優秀で寛容な人間であるこのライオス様でも傷つく事はあるんだぞ!!」


「ライオス陛下、こんな時に冗談を言わないでください。無能で不寛容な人間の間違いでしょう。ライオス陛下が優秀なら今こんな事態になってないでしょうが!!」


「そんな事を言ったらベルーガ、お前だってペンドラゴでFランクにしてやられてるだろうが。」


「その件はさっきちゃんとライオス陛下に謝罪したでしょう。それにあっしはクリードとは面識がないんですよ。それに比べてライオス陛下は自分のパーティーにクリードを加えていたんですよ。それなのに自分で追い出して、今それで追い込まれているんです。ライオス陛下の目がふし穴だったという事に他なりません。ライオス陛下に人を見る目がないから今こんな事になっているんでしょうが!!」


「ええいだからベルーガ!!このライオス様の心をえぐるような事ばかり言うんじゃない!!もうこのライオス様の心は大きく傷ついているんだぞ!!」


ベルーガがため息をついて言った。


「はあー、分かりました、ではこの話はここまでにします。」


「そうしてくれ。」


「それでライオス陛下、この後の対応はどうなさるんですか?あの言い回しだと、近々クリードがこの聖都奪還に動いてきますぜ。」


「なんだと、この聖都を奪還しにくるだと。聖都はこのライオス様によって支配されるべきなんだぞ。このライオス以上にこの聖都を支配するにふさわしい人間などいないぞ!!」


「そんな事はむこうさんは思ってませんよ。不当に占拠しているあっしらを排除しにくるに決まってるでしょう。」


「なぜFランクは勇者ライオス様がこの聖都を支配するべきだという事が分からんのだ。」


「ライオス陛下、さっき勇者の称号が剥奪されたのもう忘れたんですか。もうライオス陛下は勇者じゃないんです。ただの罪人のライオスです。」


「ええい、いちいちこのライオス様の心をえぐろうとするな!!」


「すいません、ですが早急にこの後の対応を決めなければならないという事です。どうされるんですか?」


「そんなもん分かるわけないだろうが。ベルーガお前が何か案を出せ。」


「それは構いませんが、ちゃんと聞いてくださいますか?」


「もちろんだこのライオス様は優秀で寛容な人間なんだぞ。いい提案なら採用するに決まってるだろうが。」


「我々はとんでもない窮地に立っています。ライオス陛下の計画がバレて全世界を相手に戦わなくてはならない状況になっています。」


「そんなもん分かっておるわ。」


「いまこちらの手持ちの戦力で聖都の防衛に徹したとしても聖都の失陥は時間の問題です。ですので聖都を捨てて逃げるべきだと考えます。」


「この聖都を捨ててどこに逃げろと言うのだ?」


「クリム大空洞に逃げるのです。」


「クリム大空洞だと。」


「クリム大空洞には広大な地下空間が広がっており、その大きさは他の地下ダンジョンなどとは比べ物になりません。大空洞に逃げ込んでしまえば、クリード達といえど簡単には追ってこれないはずです。」


「おいベールガ!!このライオス様に薄暗い地底に潜めとでもいうつもりか!!」


「はい、そうです。ライオス陛下、地底に潜むと考えるのではなく地底を支配するとお考えください。」


「ふざけるな!!なにが悲しくてこのライオス様が無人の地底を支配しなきゃならんのだ!!」


「言い方は悪かったですが、もはや我々には地底に逃げるしかもう選択肢がないんです。」


ライオスは怒り心頭の様子で答えた。


「そんなものは却下だ!!」


「ですが他にどのような選択があるというのです。」


「うー、それは。」


「Fランクを返り討ちにしてやるというのはどうです。」


ライオスがベルーガへの返答に困っていると、後ろから声が聞こえてきた。


「うん。」


ベルーガが振り返るとそこに真っ赤な鎧を着た巨大な魔族が立っていた。


「破壊将軍バルバッサか。」


破壊将軍バルバッサは凍結将軍デミオスや漆黒将軍テスタロッサと同じように、ライオスによって復活した魔王クレスタの四天王の一人だった。


破壊将軍バルバッサはライオスの前に座り、ライオスに頭をさげた。


「ライオス陛下、どうかご安心を。Fランクの奴を返り討ちにしてごらんにいれます。」


「おお、そうか。」


「バルバッサ、でしゃばるんじゃねえ。そのでかい剣を振り回して暴れるしか能がないくせに。」


バルバッサがベルーガを睨みつける。


「ベルーガ、口の利き方には気をつけろ。このバルバッサが忠誠を誓っているのはライオス陛下ただお一人なんだからな!!」


「ふんクレスタ四天王ってのは脳筋で務まるから楽でいいねえ、頭からっぽにして暴れてりゃいいんだからな。」


「ベルーガ口の利き方には気をつけろと言ってるだろうが!!お前なんぞいつでも切り刻めるんだぞ!!」


「そういう所が脳筋だって言うんだよ。」


そこにダルカンもやってきたのだった。


「おいダルカン、陛下に大空洞への撤退を進言してくれ。」


「ダルカン、このバルバッサに盾突いたりはしないよな。」


「あっいえ。」


「盾突かないよな!!」


「おいダルカン、そんな脳筋野郎は無視しろ。」


ダルカンは迷ったすえにバルバッサに従ったのだ。


「ライオス陛下、私もバルバッサ様に賛同いたします。」


ライオスは不安そうにバルバッサに尋ねた。


「バルバッサ、本当にFランクを返り討ちにできるのか?」


「お任せください。この破壊将軍バルバッサはライオス陛下のお力によって、パワーアップをしています。ライオス陛下に盾突く愚か者共を始末してごらんにいれます!!どうかご下知を。」


ライオスは笑顔を取り戻しバルバッサ達に命令を下した。


「よし破壊将軍バルバッサ、そしてダルカンに命じる。改良した魔物共を全て率いてFランク共を始末してこい!!」


「はっ!!」


ベルーガが必死にそれを止めた。


「ライオス陛下、どうかご再考ください。今は撤退するしかないんです。バルバッサの奴を向かわせてもクリードに瞬殺にされるのは目に見えています。現にパワーアップさせた凍結将軍デミオスもクリードにやられてるんですよ。」


ライオスはそれを聞き入れようとはしなかった。


「うるさい!!もうそんな話を聞きたくもないわ!!ベルーガ戦う気のないようだからお前は謹慎してろ!!分かったな!!」


「ライオス陛下!!」


ライオスはそう言うと大広間を出ていった。















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