第64話 宮廷魔術師ダルカン

俺達が王宮に戻って夕暮れ時になっていた。


俺はみんなにせがまれて、厨房を借りて料理を作っていた。


「お兄ちゃん、ルーファはまだ?」


「あと少しでできるから待ってて。」


ルーファというのはスープ料理の一種で人気のある定番料理であった。


俺はルーファを完成させると、大広間にそれを運んだ。


そして大広間のテーブルにお皿を並べてよそっていった。


「みんなできたよ。」


待ってましたといわんばかりにみんなが席についた。


「いただきます!!」


「クリード、おいしいよ。」


「クリード先生、とってもおいしいです。」


「クリードって本当になんでもできるよね。戦闘も強いし、魔法もエキスパートだし、料理はとっても美味しいし。」


「あー、ちょっとマリーそれ私の分だよ。」


「お兄ちゃんの料理は美味しいからどれだけでも食べたいの、だから譲ってお姉ちゃん。」


「そんなのダメよ。」


「はは、大丈夫。まだまだたくさん作ってあるからいっぱい食べていいよ。」


みんなはおいしそうに料理に頬張っていた。


さらには王宮の人達もルーファの匂いにつられて集まってきていた。


そんな時大きな悲鳴が大広間に響いてきたのだった。


「うぎゃあああ・・・・。」


「何?」


みんなが困惑している所に再び悲鳴が響いた。


「うああああ・・・ああああ・・・。」


この声には聞き覚えがあった。


「これはゴードの声だな。」


「ゴードが悲鳴をあげてるみたいだな。」


ゴードの悲鳴が続いたのだった。


「く・・苦しい・・!!し・・死ぬ!!・・たすけて・・!!」


すると衛兵が慌てて食堂に入ってきた。


「大変です、ゴードやライオス軍の兵士達が地下牢の中で苦しんでいるようです。」


「大変すぐに地下牢に行かないと。」


「待った!!みんなはすぐに謁見の間に移動してくれ。」


「えっ、でも。」


「頼むからみんなは謁見の間に移動してくれ。」


「うん、分かった。」


「ルーテシア、衛兵や王宮のみんなを集めて待機していてくれ。あと全員に絶対に地下牢に降りて行かないように伝えておいてほしい。」


「それはいいけど。クリードはどうするの気?」


「俺は地下牢の様子を見てくる。」


「分かった、クリードお願いね。」


「ああ。」


俺は地下牢への階段までやってくると階段を少し降りたところで立ち止まった。


「さてとそれじゃあ設置探知(せっちたんち)」


俺はスキルの一つである設置探知(せっちたんち)を使って設置されている魔法を探した。


俺はすぐに設置されている魔法を発見した。


「即死魔法のマーダルをこんなに設置してあるのか。さっさとこの即死魔法マーダルを解除しないとな。」


俺はキャンセリアの魔法を使う事にした。


「この地の魔をすべて打ち消せ!!キャンセリア!!」


キャンセリアの魔法は設置されている魔法を打ち消して消滅させる事ができる魔法だ。


俺のキャンセリアの魔法で設置されていた即死魔法のマーダルの魔法を全て打ち消したのだった。


「さてと、これで確認できるな。」


俺は地下牢の中を確認していった。


そこには地下牢の中で横たわっているライオス軍の兵士達だった。


「どのライオス軍の兵士達も毒魔法のポイズンを掛けられて殺されているな。」


更に奥の牢屋にいるゴードも確認しにいった。


「ゴードも死んでいるか。」


ゴードがいる地下牢の中にはゴードの亡骸が転がっていた。


ゴードも同様に毒魔法のポイズンをかけられて苦しんで死んだようだった。


「地下牢にいるゴード達にポイズンをかけて、悲鳴を出させたうえで設置した即死魔法のマーダルで駆けつけた衛兵達を殺そうって罠か、なかなか悪辣だな。」


「さてと確認は済んだから国王様に報告に行くか。」


俺はルーテシア達がいる謁見の間にやってきた。


謁見の間やその周囲には王宮の人々が集まっていたのだった。


国王様が俺を見つけて声を掛けてきた。


「おおクリード殿、一体どうしたというのだ?」


「国王様、地下牢にいたライオス軍の兵士達がポイズンの魔法で殺されていました。そのうえで地下牢に降りていくルートに即死魔法のマーダルが設置されていました。囚人達にポイズンをかけて悲鳴をあげさせて、それを聞きつけた衛兵達を設置した即死魔法マーダルで始末しようとしていたと思われます。」


「なんと!!そんな事になっておったのか?」


「ですがご安心を、即死魔法のマーダルはすべて解除しておきましたので、もう大丈夫です。」


「そうなのか、クリード殿この危機を察知してくださり感謝いたします。」


「だけど誰がこんなことをしたんだろう。」


「たぶん王宮魔導士のダルカンかと。」


「なんとダルカンがか。」


「クリード、どうしてダルカンだって分かるの?」


「ダルカンはこの場にいないからだ。今は王宮中の人達がここに集まっているのにダルカンだけ姿が見えないからな。ゴードやライオス軍の兵士達以外は地下牢で巻き込まれた人間はいなかったから、それも踏まえるとダルカンが犯人である可能性が高いだろう。」


「おいダルカンはどこにいる?」


「実は先ほどからダルカン殿の姿が見えないのです。」


「なんだと!!すぐにダルカンを探すのだ!!」


「はっ!!」


「でもダルカンがどうしてこんな事を。」


「恐らくダルカンもライオスの息のかかった奴だったんだろう。だけどゴード達が捕まって自分も同じように捕まるのは時間の問題だと考えてこの事件を仕組んだってところだろうな。」


「なるほどね。」


「本当にクリードの洞察力ってすごいよね。」


「本当です、クリード先生は本当にすごいです。」


「うむクリード殿がいるのは本当に頼もしい。」


「ありがとうございます。」


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