第12話 辺境伯代行メリッサ

俺達が入っていった空洞の奥は居住空間になっていて、ベッドや家具などが並んでいる部屋の区画に出たのだった。


そしてその区画の一つの部屋の扉が開いており、その開いている扉をくぐるとその部屋の中にメリッサがいたのだった。


メリッサは16歳の女子でピンク色のセミロングの髪型をしており、とてもかわいらしい顔をしていた。


やや大きめな胸を持っていてスレンダーな体型であった。


メリッサはオーラリカ辺境伯家の令嬢であったが、メリッサの両親はすでに亡くなっておりこの歳で実質的にオーラリカ辺境伯代行を担っていたのである。


俺はメリッサに言った。


「メリッサ無事だったんだね、良かったよ。」


「クリードさんはガイボルスに味方していなんですね?」


「ああそこは誓うよ。俺はライオスにもガイボルスにも味方していない。」


「良かった、クリードさん怖かったです。」


メリッサはそう言うとが涙目で俺に抱きついてきたのだった。


「クリードさん、クリードさん。」


メリッサはよっぽど怖かったのか俺に抱きついてきてしばらく離れなかった。


俺はメリッサに優しく声をかけた。


「メリッサ、怖かったんだね。でももう大丈夫だから安心して。」


メリッサはそう言うとようやく安心したのか笑みを浮かべてくれた。


「はい、クリードさんの顔が見れてとても安心しました。私だけではどうにもできなくて、ただただ隠れている事しかできなかったので。」


「大丈夫だよメリッサ、俺が来たからね。もう安心して。」


「はいありがとうございます。クリードさん。」


だが後ろから怒りに震えるような声が聞こえてきた。


「メリッサ、安心できたならそろそろクリードから離れてくれないかしら?」


メリッサは顔を赤くしながら慌てて俺から離れたのだった。


「すいません。」


「クリードもさ、メリッサに抱きつかれて嬉しそうな顔しないでくれる!!」


ミリーはそう言うと俺にすごい怖い顔で迫ってきたのだった。


「ミリー何を怒ってるんだ?」


「別に何も怒ってないから、気にしないで。」


「ミリー、気に障ったのなら謝るよ。」


「いや別に謝ってほしいんじゃなくて、クリードには私だけを見てて欲しいの。」


「えっ?」


「ごめん、な、なんでもない。それよりもメリッサの話を聞きましょう。」


「そうだね。」


俺はメリッサに詳しい話を聞く事にした。


「メリッサ一体何があったんだ?」


「はい2か月ほど前の事になります。突然ガイボルス達が大勢の部下をつれてオーラリカ村にやってきました。そしてガイボルスは堂々と私をさらいに来たと言っていました。」


「ガイボルスの奴、人目もはばからずにそんな事をしたのか。」


「でもメリッサ、その状況からよく逃げ出せたね?」


「オーラリカ村のみんなが逃がしてくれたんです。それで私は何とかここに逃げ込む事ができました。それからずっとここに籠っています。ここには食料なんかも備蓄してありましたから。」


「メリッサ、ここは何なんだい?」


「ここは魔王軍に備えた避難用のシェルターなんです。避難した人達が一定期間暮らしていけるように家具なんかも揃っています。ここはラストダンジョンも近いですから。」


「それじゃあ魔法エレベーターの動力を抜いたのは?」


「それは私です、ガイボルス達が下層に降りてこられないように。」


「やっぱりそうだったんだね、それじゃあ最下層にいた岩石トーロルは?」


「この避難シェルターを守るように設定されている召喚術式です。シェルターが使われている場合に、侵入者が現れると岩石トロールが召喚されるようになっているんです。」


「だいたいクリードの予想通りだったね。」


「ああ。」


「とにかくメリッサがガイボルスに捕まってなくて本当によかったよ。」


「クリードさん、よく私がここにいるって分かりましたね?」


「メリッサ、クリードはすごいんだよ。メリッサがここにいるってすぐに予想しちゃったし、伝説のスキルも覚えちゃってるんだから。」


「伝説のスキルってなんですか?」


「全(ぜん)スキルっていう、聖典に出てくる伝説のスキルなんだよ。クリードが聖典に予言されてる英雄なんだから!!」


「えー、すごいですクリードさん。クリードさんは伝説のスキルを覚えたんですか?それに予言されてた英雄なんですね!!」


「まあそう言ってくれるのは嬉しいし全(ぜん)スキルを覚えてはいるけど、ここに来たのは当たりをつけて来ただけだし大した事はないよ。」


ミリーとメリッサの俺への称賛はさらにヒートアップしていった。


「そんな事ないよ、クリードは高い洞察力で切り抜けてきたんだよ。リアーの羽が無かったのにすごいやり方でリアーの羽を復活させちゃうし、ラストダンジョンからガイボルスの部下達に気づかれずにうまく脱出できたのも全部クリードのおかげなんだよ。」


「そうなんですか、クリードさんすごすぎです。」


「ウォールメイラが壁に化けてたのも一発で見破ったうえに、一撃でウォールメイラを倒しちゃったんだから。」


「うああああ、クリードさん本当に素敵です!!」


ミリーやメリッサが俺への絶賛が続いた。


「ありがとう。」


「ミリーやメリッサが褒めてくれるのは正直悪い気は全然しないけど、今は話を戻さないか。」


「そうだね、ごめんクリード。」


「メリッサはライオスが今どこで何をしているかを知っているかい?」


「すいません、ガイボルス達がやってきた事以外はさっぱり分からないです。あれからずーっとここに隠れていましたから。」


「そうか分かった。だったらメリッサ、俺の知っている限りの事を話すよ。」


俺はメリッサにライオス達の計画を教えたのだった。

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