第10話 オーラリカ辺境伯国

俺とミリーはラストダンジョンの最も近くにあるオーラリカの村へと向かっていたのだった。


「オーラリカ村はラストダンジョン前に入る前に寄った最後の村だったよね。」


「ああ、ラストダンジョンはオーラリカ辺境伯国の中にあるからね。」


「クリード、やっぱりオーラリカ村に入らない方がいいかな?」


「その方がいいだろうね。恐らくガイボルスが村を占拠しているようだから。とりあえずオーラリカ村の近くまで行って村の様子を確認してみよう。」


俺達はオーラリカ村の近くまでやってくると遠くから村の様子を確認してみた。


オーラリカ村は小さな村で山の丘陵地帯の高い場所にあった。


俺は能力スキルの一つ千里眼(せんりがん)を使って村の状況を確認していった。


千里眼(せんりがん)を使えばある程度の距離の離れた遠い場所も見る事ができた。


「どう、クリード?」


「オーラリカ村の村人の姿が全く見えない。代わりに赤い鎧を着たガラの悪い連中がオーラリカ村のあちこちにたむろしている。やはりオーラリカはガイボルス達に占拠されているようだな。」


「オーラリカ村の人達はどうしたのかな?」


「これだけでは何とも言えないな。」


俺はオーラリカ村の別の場所を千里眼(せんりがん)で観測してみた。


「ミリー、どうやらメリッサはまだガイボルスに捕まっていないみたいだ。」


「どういう事?」


「村の広場にクエスト依頼用の掲示板があっただろう、そこにさデカデカとガイボルスの命令書が張り出されているんだ。一刻もはやくメリッサを見つけ出してガイボルスの屋敷に連れてこいと。」


「それじゃあ。」


「たぶんメリッサはうまくガイボルスから逃げおおせる事ができたみたいだね。」


メリッサというのはライオス達が勇者パーティーでこのオーラリカ村にやってきた時に出会った少女だ。


メリッサの歳は16歳で、オーラリカ辺境伯家の一人娘でありメリッサの御両親は魔王軍との戦いですでに亡くなっているので実質的にメリッサがオーラリカ村を預かる立場だったのだ。


「ガイボルスはメリッサに入れ込んでいたから、恐らく最優先で確保しようとするはず。だからその前にメリッサを見つけよう。」


「でもメリッサどこにいるんだろう?」


「この周辺にある場所でガイボルスやその部下達から長期間に渡って隠れ続けれらる場所となるとオーラリカ坑道(こうどう)ぐらいだろうね。」


「それじゃあ。」


「うんすぐにオーラリカ坑道に向かおうか。」


俺達はすぐにオーラリカ坑道にやってきたのだった。


オーラリカ坑道はオーラリカ村よりもさらに山奥にある場所であった。


すでにオーラリカ坑道は閉山されて使われなくなっていた。


俺達は古くなっている出入口からオーラリカ坑道に入ったのだった。


ミリーが後ろから声を掛けてきた。


「真っ暗だね。」


オーラリカ坑道の中は真っ暗になっていた。


「とりあえずライトを唱えておこうか。」


「この暗闇を明るき光で照らしたまえ!ライト!」


俺はライトの魔法を使って暗い坑道の中を明るく照らしたのだった。


「これだけ明るければいいかな。」


俺のライトの魔法によってダンジョン全体が明るく照らされた。


出入口から奥へといくつものトンネルが続いていたのだった。


「クリード、オーラリカ坑道の中って結構広そうだね、闇雲に動くと簡単に迷いそう。」


「大丈夫、今からダンジョン内をパパッと調べちゃうから。」


俺は能力スキルの一つであるダンジョン探知を使った。


「ダンジョン探知」


ダンジョン探知はダンジョン内の構造や魔物の種類を一気に調べる事ができる便利なスキルであった。


ダンジョン探知のおかげで詳細なオーラリカ坑道内の構造や魔物の配置を確認する事ができた。


「ミリー、大体このオーラリカ坑道内のマップは把握できたよ。」


「本当?」


「ああ、やっぱりかなり大きなダンジョンみたいだ。ラストダンジョンほどではないけど相当に広い。ここに隠れられたらガイボルスが部下達を使って大捜索をしてもなかなか見つける事はできないだろうね。」


ミリーは俺を褒めてくれたのだった。


「すごいよ、クリード。ダンジョン探知を使ってもダンジョン全域を調べられる人なんて他にはいないよ。ダンジョン探知を覚えている人でもせいぜいできるのは、その階層のマップを把握できるぐらいなのに、クリードは広大なこのオーラリカ坑道内のマップを一発で調べちゃうなんて。さっきのライトの魔法も一発で坑道の中が明るくなったし、クリードは何でも魔法が使えるから本当にすごいわ。」


「ああ、ありがとうミリー。」


「ミリー、確かライオスのパーティーでオーラリカに来た時は、この坑道にはガイボルスは入っていなかったな?」


「うん、ライオスもガイボルスも入ってなかったはずだよ。」


「ならガイボルスがこの中の構造を熟知している可能性はかなり低いな。」


「分かった、それでメリッサはどこにいるの?」


「それがね、どこにも見つけられないんだ。魔物はたくさんいるみたいなんだけど、人の気配はほぼ感じられない。」


「それじゃあメリッサはこのオーラリカ坑道の中にはいないって事?」


「いやたぶんそうじゃないと思う。ダンジョン探知はダンジョンの構造や魔物や人の配置まで分かる便利なスキルではあるんだけど、一つ精度を大きく下げてしまう要因があるんだ。」


「その精度を大きく下げてしまう要因ってなに?」


「高純度の魔法石がある場所ではダンジョン探知は精度が下がってしまうんだよね。ここは昔は魔法石の採掘で知られた鉱山らしいから、もう閉山してるとは言っても最深部なら高純度の魔法石がまだ残っていたとしても全然不思議じゃない。」


「それじゃあ。」


「メリッサはダンジョン探知にひっかからないようにあえて高純度の魔法石が多く残っている最深部にいると思うんだ。それにこの周辺に他にメリッサが隠れ続けられる場所があるとも思えないし、俺はメリッサがこのオーラリカ坑道内の最深部に隠れている可能性がかなり高いと考えてる。すぐにここの最深部に向かうべきだと思う。」


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