第21話 セオside  俺の感情

「僕だよ、クリス。」


「どうぞ。」


 不本意ながらも招き入れる。


「ありがとう。あのさ、セオ、レイナと会っていなかったの?」


 こいつは、レイナから名前を呼ぶ許可をもらっている。


 悔しい。


 無言を肯定とふんだようで、話を続けた。


「婚約者なんだから、ちゃんと会った方がいいよ。父上からもそううかがっているし。」


「…父上と会ったのか?」


「さっきね。教育の進路のことを聞いたんだけど、セオが進んでいなさすぎるって。だから、今日も負けたんだよ。」


 痛いところをふみながら、話す。


「今日のことは関係ない。それに、ちゃんと会いに行くから。お前に説教される筋合いはない。」


 イラついたから、言い返す。


「じゃあ、ちゃんと会いに行きなよ。勉強真面目にやらないと学校で、王族なのに落ちこぼれになるだろうしね。」


「は?出ていけ。」


「ハイハイ、じゃあね。また来るよ。」


「来なくていい。」


 俺のこと、気にかけても父上からだし、俺のことが一番の人はいないんだ。


 でも、わずかな期待をしてしまった。


 婚約者なら。


 あの子なら。


 俺を好きになって欲しい。


 俺を一番に考えて欲しい。


 そのためなら、俺は頑張る。


 だから、俺のことを考えて欲しい。


 明日は、勉学。


 明後日は、武術。


 明々後日は…、空いてる。


 会いに行こう。


 約束した。


 少しだけでも、俺の気持ちを伝えられるようになりたい。


 そして、俺は…

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