最初の人生で悪女と呼ばれた令嬢(私)、4度目は己の行いを改めます‼︎
七々扇茅江
回帰前と幼少期編
第1話 邂逅
ああ、又なのね。
「⁉︎」
私は驚いた。
なぜならここは絶世の美女で稀代の悪女と呼ばれた
そう、私は私の原点、コンスタンツェ・アーダ・フォン=シュヴァルツベルクになったのだ。
私が色々と考え込んでいると、かつて私が処刑した専属侍女、アンが心配そうに駆け寄って来た。
「コンスタンツェ様ぁ‼︎大丈夫ですかっ・・・うっ、本当に、ごめんなさいっ・・・私がっ、しっかり見ていなかっ、た所為ですっ・・・」
そう言ってアンが泣き出した。
その時、私は『ああ、なんて愚かなのだろう。』と思った。何故ならこんなに優しいアンを、彼女が自分に生意気に口答えして来た(正確には、ドレスを買おうとしたら目の前で買われた所為で荒れていた私の為を思って諫めてくれたのだが)と言って処刑した己が本当に愚かだと思う。
私は、彼女が生きている事に感激したのと、申し訳なさで涙を流した。
「うっ・・・良かったわ・・・本当にごめんなさい・・・」
すると、彼女は泣きながら驚いた顔をして硬直していた。
「なっ、何故お嬢様が謝るのですか・・・?そんな‼︎滅相もっ・・・ございませんっ・・・!私のせきにっ・・・です」
まあ、この反応は当たり前だろう。
寧ろ『そうよ!あなたが見てなかった所為で私が怪我する羽目になったじゃない!』等と言って来そうだと思われても仕方がない。
ふと、私は自分の年齢を知りたくなった。「あの、アン、私って今何歳だったかしら?」「え?あっ、失礼しました。コンスタンツェ様は10歳でございます。」
「それと・・・今日は何日?」
「4月22日です」
「えっ、てことは今日って・・・あ、アン有難う、もしかして今日は
確実、と言うわけではないが、養子で下級庶民出身の義弟、クラウディオが公爵家に入るのは4月22日であっている筈だ。
それにしても頭が痛い。頭痛とかではなく物理的に。確か階段の手摺りを滑り降りようとして途中で落ち、たん瘤を
色々と思い出し、郷愁に浸っていると、漸く泣き止んだアンが口を開いた。
「はい、そうです。卑しい身分から貴族入りなんて珍しいですよね。それも公爵家なんて。」
「アン、口を慎みなさい。卑しいなんて良くないわ。私、身分で相手を下に見るのは悪い事だって漸く知れたの。」
「あ、はい、済みません!」
しかし、アンの言う事もわかる。
元々生まれは良い方の自分達にとって下級庶民は人として扱う価値も無いような存在だ。だから、彼女らの常識で言うと悪気なしで見下してしまうのだ。
かつては私もそうだったように。
「アン、義弟ってもうすぐ来るの?」
「はい!丁度今門からお見えのようです。」「ええ、有難う!」
そう言って私は門に向かって駆け出した。「え⁉︎ちょっ、お嬢様っ‼︎待ってください‼︎」
門に着くと、門番以外に誰も居なく、クラウディオを乗せた馬車が向かって来るだけだった。
「非道い・・・今回も同じなのね・・・。」
平民の扱いは何処でも同じだ。やがて馬車が着くと中から
やはり迎えに出てくる者は私しか居ない。降りて来た彼は、身なりこそは見窄らしかったが、
「貴方が今日から私の
彼は警戒した様子で答えた。
「・・・?多分そう。」
彼の名前は知ってるけれどここで知っていたらおかしい。
「名前は?」
「クラウディオ。・・・です。」
「そう。良い名前ね。私はコンスタンツェ・アーダ・フォン=シュヴァルツベルク。仲良くしてくれると嬉しいわ。」
年齢は・・・忘れていた。回帰前は彼のことはどうでも良いと思っており、寧ろ卑しいと蔑んでいたからである。
「コンスタンツェって何歳なの?」
私が考えて気になっていたことを、逆に彼が聞いて来た。
「えっと、10歳?よ。クラウディオは?」「僕は7歳。呼び捨てでも怒らないんだね。それと・・・なんで自分の年齢なのに上にあがるんだよ。・・・!ですか?」
彼は恐らく公爵家に売られる前に敬語を使えと教えられたのだろう。
でも——とても不自然だ。
「クラウディオ、敬語は使わないで。それと・・・他の方は兎も角、私の事は呼び捨てにしてくれて結構よ。あと、さっきの質問に関することだけれど私、自分の年齢なんて余り気にした事がなかったの。」
私はそう答えた。考えてみれば、こうして誰かに対して比較的穏やかに話したのは初めてかも知れない。2、3回目の憑依、転生では両方とも飢餓に苦んだり仕事に追われる日々でそもそも誰かと話す事自体無かったかもしれない。
それに、最初の人生では己の、公爵令嬢としての気品を保つ為にわざと傲慢に振る舞ってみたり、見下す様な行動を取っていた。
そう、私は傲慢さによって謙虚さを忘れていたのだ。そうこう考えているうちに、気付けばもうお父様の執務室前まで着いていた。
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