学園で一番水着が似合う、爆乳な生徒会長の×××な手伝いをすることになった⁉

譲羽唯月

第1話 ようやく夏が来たのか?

 付き合うなら、年上爆乳美少女と付き合いたい――




 七月の中旬。

 太陽の日差しが眩しい。

 真夏の暑さに頭がおかしくなっているのか、変なことばかりが脳内を目まぐるしく回っていた。


 こんなにもクソ暑い日々が続き。その上、彼女ができなかったことも相まって、願望染みたことを妄想したくもなるものだ。




 大野裕翔おおの/ゆうとは今、坂道仕様の通学路を歩いていた。

 夏真っただ中。七月半ば頃は、途轍もなく暑苦しく感じる。


 制服は夏服仕様になっているが、とてもじゃないが涼しくは感じられない。


「早く、学校に着いて、冷房が効いているところに行かないと」


 けだるげな態度で、坂道を必死に歩き続けるのだった。






「そろそろ、彼女が欲しいんだが……」


 生まれてこの方、彼女らしい彼女は出来た試しがなかった。


 できれば美少女がいい。

 もっと欲を言えば、年上の方がいいと思っている。


 年上彼女であれば優しそうだし、なんでもしてくれそうな気がするからだ。


 そんな願望を抱いているからなのか、現実的にはまったく進展がなかった。




 ちなみに、隣近所には爆乳で綺麗な女子大生お姉さんはいる。

がしかし、裕翔には見向きもしてくれない。


 以前、その年上の女の子に聞いたのだが、やはり、年上が好みだと言っていた。

 年下は恋愛対象外という女の子が一般的なのだろう。




「好きになってもらうなら……やっぱ、自分にしかできないことを見つけて、それに向かって努力をした方が建設的かもしれないな」


 どんな女の子でも、努力をしている異性を好きになるはずだ。

 そんなことを以前、何かの本か、ネットで見たことがあった。


「自分にできる事……」


 裕翔は唸りながら考え込んでいた。


「んん……夏休みはバイトでも初めてみるか。それがいいよな」


 バイトをすれば、同期の女の子と一緒になったりして、頑張り具合によっては好意を抱いてくれるかもしれない。


 そうだ、それしかない。


 夏休みは誰かのためになることをしよう。


 気合を入れて駆け足で移動しようとした時だった。

 嫌な奴と、通学路の曲がり角で出会ったのだ。






「うわッ、こんな時に、あんたと出会うとか、最悪」

「……」


 裕翔はその場で硬直した。


 その幼馴染――伊藤佐奈いとう/さなは、自転車を押しながら歩いていた。


 ここら辺は坂が多い為、自転車では移動しづらいのだ。




「というかさ、あんたって彼女ができたの?」

「なんだよ、その質問」

「私、今、あんたに聞いてるんだけど?」

「それは……聞かなくてもわかるだろ……」

「ふーん。じゃあ、できていないってこと?」

「……」

「無言ってことは図星ってことね。高校二年生にもなって、童貞とか。私、耐えきれないんだけど。そもそも、あんたが私の幼馴染ってだけで、なおさら最悪ね」


 佐奈はボブショートの黒髪を弄りながらバカにするように罵ってくる。


 30度近い暑さなのに、こんなにも嫌味な奴のセリフを耳にすること自体が億劫だ。


 なんでこんな奴と、幼馴染なんだろ。




「えっとさ、そういうお前は、できたのかよ」

「⁉ ま、まあ、できたわよ」

「そうなのか?」

「え、ええ、そうね」

「どんな人?」

「それはあんたみたいなパッとしない人じゃなくて、年上で身長が高くて、かっこいい人だから」

「そうか」


 まあ、佐奈は見てくれが良く、八方美人なところがある。

 昔からだが、あることないこと言って誘惑しているのかもしれない。


「なに? その顔?」

「なんでもないけど」


 早くどっかに行ってほしいんだが……。


 そう思っていると――


「じゃ、私は一足先に学校に行くから」


 彼女は偉そうな態度を見せた後、自転車にまたがって、風を切るように遠くの方へと向かって行く。


 数秒ほどで彼女の後ろ姿が見えなくなった。


「はあぁ……やっといなくなったか」


 清々する。


 それにしても、あんな奴に恋人ができるとか。一体、どんな奴なんだ? 

 相当な聖人なのかもしれない。


 性格の悪いあいつに付き合っている人がいると思うと、つくづく人生は不条理だと痛感してしまうのだった。






 はあ……やっと涼しい環境に!


 裕翔はクーラーの効いている教室に入るなり、通学用のリュックを机の脇にかけると、すぐに席に腰を下ろす。


 生き返ったかのように気分だ。


 まあ、今日から金曜日までで終わり。

 来週から夏休み本番だと考えれば精神的にも気が楽だ。

 早く来週になってほしい。


 そんな思いを抱き、夏休みはどんなバイトをしようかと、席に座ったままスマホで学生求人を探り始めた。






「ねえ、ちょっといい?」

「え?」


 聞きなれた感じの口調。

 それはクラス委員長――小鳥遊弥生たかなし/やよいの声だ。


 日本人形のように黒髪ロング。黒縁眼鏡をかけたクールで真面目な彼女は、美少女なのに不愛想で怖く感じる。もう少し笑顔を見せれば、可愛らしくなるに違いない。

 胸の大きさは普通寄り、いや、平均よりも大きいような気がする。




「……どこ見てんの?」

「え、い、いいえ、なんでも。それで何の用でしょうか?」

「ちょっとさ、君の事、生徒会長が呼んでいるみたいなの。今からでもいいし、生徒会室に行ってきて」

「お、俺が?」

「そうよ。さっき、廊下で生徒会長から言われたんだから。別に嘘をついているわけじゃないから」

「そ、そうか、だよな」


 そもそも、嘘をつく理由なんてない。


「わ、分かったよ、行ってくる」

「お願いね」

「うん」


 裕翔は涼しい空間から追放されるかのように、廊下へ出る。


 すごく暑い。


 というか、生徒会長に呼び出されるって何か変なことしたっけ?


 まったく思い当たる節がない。


 考え込んでいても、現状の暑さが変わることはないのだ。


 先早に向かおうと思った。






「すいません、失礼します……」


 裕翔は扉をノックした後、その扉を開けた。


「ようやく来たのね。裕翔」


 朝の生徒会室には、青色に近い黒髪ポニーテイルな会長である夏川美月なつかわ/みつきしかいない。


「何か悪いことでもしたのでしょうか?」

「え? 別にそんなんじゃないよ。いいから、こっちに来て。そこのソファに座ってさ」


 裕翔は促されるがまま、わけもわからずに、ソファに腰かけた。

 その後で、彼女が対面上のソファに腰を下ろしたのだ。




「簡潔に言うとね。夏休み中、私の手伝いをしてほしいの」

「手伝い?」

「そうよ。バイトみたいな感じね。時給はないけど」

「時給はない……でしたら」

「その代わり、私とデートすること。報酬はそれね」

「え⁉ デートですか?」

「そうよ。嫌だった?」

「い、いいえ」


 まさかの生徒会長とデートができるだと⁉


 爆乳で美少女。その上、毎年の水着コンテストで優勝を果たし。今年で三冠を達成したあの生徒会長と⁉


 今年の水着コンテストは、三週間前ほどに終わったのだが、今も尚、見てくれの良さを維持しているのだ。


 断る理由がない。


 むしろ、このチャンスを利用するしかないだろう。


 バイトをするより、断然、爆乳な生徒会長の手伝いをした方がいいに決まっている。


「や、やります――」

「え? 本当?」

「はい。引き受けさせてもらいます」


 裕翔は凛々しい表情で、先輩からの要求を迷うことなく受け入れるのだった。


 今年の夏休みは勝ち格だ。


 多分……そうであってほしい。

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