10. 空へ
「師匠おおおお!!!」
叫ぶエニカの声は瓦礫の山に虚しく響き渡り、返事は帰ってこない。
岩山は跡形もなく崩れ去り、生き物の気配など一切しなかった。
「うそ……そんなことって……」
エニカの目から涙がポロポロとこぼれ落ちる。
しかし、いくら泣いても誰もその口にパンを放り込んではくれない。
不器用に涙を止めてはくれないのだ。
「師匠……師匠……」
ポツリポツリとつぶやきながら、エニカは拳を握り締め瓦礫を叩いた。
溢れ出る涙が乾いた瓦礫の表面にこぼれて点々と染みをつくる。
そのとき、エニカは気付いた。
落ちていく涙が、その先にある瓦礫が、いやそれだけではない、エニカの視界に映るもの全てが、赤く染まっていく。世界が赤色に変わっていく。
エニカはゆっくりと振り向いた。
その視線の先には、真っ赤に輝く夕日があった。
日が落ち始め、太陽が空と大地を真紅に染める。
「師匠が言ってた、山を爆破する真の目的って……」
なぜ全て爆弾を仕掛け終わったにもかかわらず、作戦の開始を夕方にしたのか。
今日は、空が青く澄み渡ったとても天気の良い日だ。
こんな日は、夕方になれば鮮やかな夕焼けが見られるだろう。
盗賊たちの狙いはまさしくそれだった。
彼らの真の目的は、爆破による山の崩壊と夕日が降り注ぐこの赤い世界で、バルシーダを根絶やしにすること。
夕日の赤を見れば、バルシーダの子供たちは泣き叫び、いずれ死んでしまうだろう。それがこの計画の狙いだった。
その恐ろしい目的に気付いたとき、エニカは言い知れぬ恐怖を感じ体をブルッと震わせた。
「ひどすぎます……こんなこと……」
燃え盛る炎で多くの命と居場所を奪うだけでは飽き足らず、今度は子供ごと皆殺しにしようというのか。
その赤い鷲は、自らが植え付けた消えることのない真っ赤な記憶を利用して、あのとき以上の悲劇を生み出そうというのか。
エニカの胸中を、怒りより先に悲しみが襲った。
いくら空を自由に飛び回ることができようと、いくら大きくしなやかな翼を持っていようと、エニカの目に映る赤い鷲は、汚い羽と赤黒く濁った瞳を持つ化け物でしかなかった。
エニカはそれよりも大きな翼を知っている。まっすぐに澄んだ瞳を知っている。
例え体が血だらけになろうと、その身に苦痛を味わおうと、決して折れることのない真っ白な翼を持ったその男を、エニカは知っている。
その強く大きな翼に守られて、エニカは今ここにいるのだから。
しかし、その翼も今は瓦礫の下。羽の一枚も見当たらない。
赤い夕日が、エニカの体を真っ赤に染める。
どす黒い絶望が、エニカの心をむしばむ。
途方もない喪失感が、心臓をつかんで離さない。
涙が止めどなく溢れる。
そのとき、エニカのぼやけた視界に、3つの真っ黒な影が映った。
「おやおや、鳥籠から小鳥が一匹逃げ出したみたいだねえ」
その影は夕日を背にエニカの正面に立った。
見覚えのある赤い髪に赤い鷲のエンブレム。レティとその部下二人が、口角をつり上げ卑しい笑みを浮かべてエニカを見ていた。
「よく見たら、あのとき馬車に乗ってたガキじゃないか。川に落っこちてそのまま死んだと思っていたけど、まさか採掘場に潜り込んでいたなんてね。もう一人の男はどうした? もしかして、あたいらが仕掛けた爆弾で、あの植物どもと一緒に潰されて死んだのかい? はははっ、ざまあないねえ!!」
レティとその部下は嬉しそうに声を上げて笑った。
それを見て、エニカは眉間にしわを寄せて唇を噛み締める。
「あなたたちは、どうしてこんなひどいことができるんですか……! たくさんの命と、そこに込められた思いを、どうしてこんなにも簡単に踏みにじれるんですか……!」
エニカは涙声で絞り出すように言った。
その切実な問いを、レティは何を言っているのかと言わんばかりに鼻で笑った。
「私たちに喧嘩を売ったのがそもそもの間違いなんだよ。ルータス盗賊団の象徴であるこの赤いエンブレムを嫌うやつらなんて、一人残らず消えちまえばいいのさ」
「赤色に攻撃するのは、子供を守るためなんですよ……!」
「そんなことはわかってる! だから子供を殺すんだよ! 山を爆破しても、大人たちは自らを犠牲にして子供をかばうだろう。そうやって必死に守った子供を、この夕日で焼くんだよ! 絶望するだろうねえ、例え泣き止ませても、この夕日を浴びる限り子供は泣き続ける。生き残った大人たちはどうすることもできずに大切なものを全て失う。そして最後には、爆破で弱ったそいつらを私たちが始末して晴れて皆殺し完了だ。絶望と悲しみと苦痛と怒りにまみれて、赤い鷲に首をかっきられるのさ! 私たちに矛先を向けたバカで愚かな下等生物には、お似合いの最後だよ!!」
レティは目をカッと見開き、口角を限界まで上げて歪んだ笑みを浮かべた。
その気持ちの悪い顔をを向けられて、エニカは悲しみと怒りで頭がおかしくなりそうだった。
ずっと焦がれていた外の世界。空はこんなにも美しいのに、なぜここまで醜く歪んだ化け物が飛び回っているのか。
エニカが求めた空とは、冒険とは、こんな醜悪な化け物たちに踏み荒らされるようなものでは決してない。
小さな世界で願った理想は、こんなにも汚く不快なものではない。
「さてそれじゃあ、あんたにはここで死んでもらおうか。鳥籠の中でおとなしく潰されていればよかったものを。調子に乗って外に出たばっかりに痛い目をみるなんて、笑えるねえ」
レティは腰にぶら下げたホルスターから銃を抜き、指でクルクルと回した。
「こいつは特注の魔法銃さ。予め魔力を注入しておけば、魔力消費なしで炎魔法【
そう言ってレティは、魔法銃の銃口をエニカに向けた。
早く逃げなければ殺される。その焦燥にかられて、エニカは絶望で重くなった足に無理矢理力を入れた。
逃げ切れるかはわからない。しかし、逃げなければエニカの冒険はここで終わる。
そのとき、背後からかすかに物音が聞こえ、エニカはチラリと後ろを見た。
エニカの影が当たっている部分に、わずかだが岩の割れ目がある。
その割れ目の中に、小さなバルシーダの子供がいるのが見えた。
「なんで、こんなところに……!」
爆発の後、一人だけ取り残されたのだろうか。
瓦礫に囲まれた狭い空間でうずくまり、プルプルと震えている。怯えているのだろう。
突然の爆発に加え、いつもそばにいた親が今はいない。
一人暗く冷たい場所に取り残され、どうしたらいいのかわからなくなっている。
今もし、エニカが移動したら、岩の割れ目から夕日が入り、子供は泣き叫んで死んでしまうだろう。
それを一瞬で理解して、エニカは動かそうとしていた足を止めた。
そして、手を大きく横に広げレティに向き合った。
「そこにいるのはバルシーダの子供だね。あんた何のつもりだい。まさか、守ろうっていうんじゃないだろうね。そんな子供一人守ったところで、何の得があるっていうんだい。それよりも、一縷の望みにかけて全力で逃げる方が賢明だと思うけどね」
「黙ってください! 私はあなたたちとは違います。私は、暗くて冷たい場所で、一人で泣く辛さを知っています。どれだけの恐怖と寂しさを感じるか知っています。そして、そこから引き上げてくれた優しい温もりが、どれほどの救いになるか、私は知っています。だから見捨てません。絶対にここを動きません!」
いつか、誰かがそうしてくれたように。
暗い日陰から、明るい日向に連れ出してくれたように。
本当は怖い。足が震え、涙が出そうになる。
銃口の前に身をさらすなど、どれほどの恐怖だろうか。
ほとんど外に出たことがない少女が、どす黒い悪意の塊を受け止められるものだろうか。
無理だ。そんなことは無理に決まっている。無理だということをエニカは十分にわかっている。
今回の冒険で、自分がいかに弱い人間かを知った。
外の世界に出れば、自分を少しでも変えられると思っていた。
しかし、結局は何も成すことができず、人の足を引っ張り続けて迷惑をかけ、誰かに守られてばかり。
何も変えることなどできなかった。
何かを変えられると思ったのは、ただの思い上がりだった。
自分はただ、華やかな夢を見ているだけの、何もできない弱い存在だった。
自分の無力さは痛いほどに知った。
だからせめて、今まで守られてきた分、誰かを守ってあげたかった。
自分には、尊敬する師匠のような立派な翼はないけれど、この背中で今、守れるものがあるのなら、震える足に鞭を打って、そこに立ち続けたい。
師匠のように、温かくまっすぐな人間になりたい。
「そうかい、ならどこまで耐えられるか見せてもらおうじゃないか!」
レティが魔法銃の引き金を引いた。
その瞬間、重い発射音とともに銃口から真っ赤な炎の球体が飛び出した。
人の頭ほどの大きさがあるその炎の玉は、一瞬でエニカの目の前に迫り、肩に直撃する。
「うっ……!」
鈍い音が響く。視界がぐらりと揺れる。
衝撃でエニカは後方に吹き飛ばされ、岩に背中を強打した。
肺の空気が一気に押し出される。
肩に鋭い痛みが走り、それと同時に焼けるような熱さを感じる。
血がにじみ、今までに感じたことのない強烈な痛みがエニカの肩を貫いた。
「ううっ……ああっ……痛い……!!」
その痛みにポロポロ涙をこぼし、呼吸を荒げる。
そんな焼け付くような痛みを感じながらも、エニカはチラリと後ろを見た。
岩の割れ目はいまだエニカの影の中、その内部に夕日は届いていない。
子供のバルシーダは震えながら、割れ目に目を向けた。そこには、影で覆われたエニカの背中がある。
「大丈夫……だからね……私が守ってあげるから……泣かなくていいんだよ……」
エニカはかすれた声で優しくつぶやいた。
涙で声が震えそうになるのを抑えて、痛みも苦しみもないかのように必死で取り繕って、まるで子供をあやす母親のように柔らかい声でつぶやいた。
「ふん、なかなかしぶといね。ならもう容赦しないよ!」
レティが魔法銃を連射する。
エニカに向かって降りしきる炎の雨。それらが無慈悲にエニカの体を殴りつける。
体中に響く重い衝撃。飛び散る血と、止まらない痛み。
倒れてしまえば楽になれる。諦めて、静かに目を閉じれば、この苦しみは終わる。
しかし、エニカは決して倒れなかった。決してその目を閉じることはなかった。
いつか誰かがそうやって、自分を守ってくれたから。
血だらけで、何の得もなくて、痛くて苦しくて、終わりの見えない暗闇なのに。
決して折れることなく、その広い背中で、大きな翼で、守ってくれたから。
「大丈夫……大丈夫……必ず守るから……絶対に死なせないから……」
あのとき見た真っ白な翼。
自分の背中にも、羽は生えているのだろうか。
真っ白で、大きくて、温かい。
そんな立派な翼がついているのだろうか。
誰かを守れるような、強い翼が。
エニカは止まない炎の雨の中、そっと空を見上げた。
夕日で赤く染まり、広く晴れ渡る空。
いつも小さな部屋の中から、焦がれ眺めることしかできなかったあの空。
いくら手を伸ばしても届かなかったあの綺麗な空。
もし自分にも翼があるのなら。
自分にも、強く羽ばたける羽があるのなら。
例え小さく無力な小鳥でも、高く飛ぶことができるだろうか。
「師匠……私は、弱くて、泣いてばっかりで……何もできない……不器用で、小さな翼しか、ないですけど……」
血が混ざった赤い涙が、地面にこぼれる。
「私もあの空を……飛びたいです……」
師匠がくれた、自由な翼。
例え小さくとも、その羽ばたきが弱くとも。
そこに何者にも負けない強く大きな思いが乗っているのなら、高く、さらに高く、赤い鷲を見下ろせるほどに高い場所まで、飛んでいける。
師匠がそう教えてくれた。命がけで血反吐を吐いて、エニカにその道を示してくれた。
炎の雨がエニカの体を無慈悲に打つ。
焼けるような痛みと、呼吸さえままならない苦しみ。
小さな世界では想像することさえできなかった、身を焦がすような辛さ。
あのままずっと安全な部屋の中に閉じこもっていれば、こんな思いをすることはなかっただろう。
自分の夢も理想も全て捨て去って、決められたレールの上を心を空っぽにして進んでいれば、この体に傷がつくことなどなかっただろう。
何の痛みも苦しみも感じなかっただろう。何の悲しみも悪意もなかっただろう。抗うことをやめれば、何の苦労もなく生きて行けただろう。
そしてそこには、何の喜びもなかっただろう。
冒険のワクワクも、自然を駆け回るときめきも、空を飛ぶ自由も、不器用な手の温もりも、抱きしめられる幸せも、道標となるその光も、尊敬する師の背中も、何もなかっただろう。
「師匠……私、外に出てよかったです……。大変なことも辛いこともありました……。嫌なことも泣きたいこともありました……。でも……それ以上に……今まで知らなかった温もりがたくさんありました……。私の小さな背中でも……誰かを守れるんだって気づけました……」
だから、後悔はなかった。
何も成してこなかった頼りないこの体でも、まだ誰かの傘になることができる。
泣いている子供に手を差し出して、大丈夫だよと言って、その傘で雨をしのいであげることができる。
降り止まない炎の雨に打たれ、もう傘はボロボロだ。いくつも穴が空き、ギシギシと音を立ててきしみ、もういつ折れてもおかしくない。
それでも、歯を食いしばって耐える。ありったけの力を込めて抗う。
傘の下にいるのは自分だけではないから。もうそれは、自分だけを守る傘ではないから。
絶対に足を止めてはいけない。雨に流されそうになっても、絶望に押しつぶされそうになっても、無理矢理力を振り絞って歩くのだ。
そうすれば、いつかきっと、雨は止む。
そう教えてくれた人がいた。自らの体で、止まない雨はないのだと示してくれた人がいた。
いくら傘に穴が空こうと、おかまいなしに進む背中を見た。
自分もあんなふうに、決して折れない傘を差す人間になりたいと思った。
何ができるとも知れない自分の小さな傘でも、この背中に背負った命だけは、是が非でも守り抜く。
「泣いてる子供一人助けられないで、何が最強の冒険者の弟子だって話ですよ……!!」
エニカは確信していた。
きっと師匠は生きている。必ずこの瓦礫の下で、外に出ようともがいている。
それはただの勝手な願いなのかもしれない。
しかし、師匠のような真の強さを持つ人間が死んでいいわけがない、そんな人間をこの世界が殺すはずがないと、エニカは信じていた。
独りよがりで、何の根拠も説得力もない考えだが、エニカにとってはそれが全てだ。
そして、エニカは強く信じている。
いつか師匠は本当に、最強の冒険者になるのだと。
「私は……師匠が最強の冒険者になったとき……師匠にふさわしい……誇れる弟子でありたいんです……。自慢の一番弟子だって……言ってほしいんです……」
師匠が最強の冒険者になる未来で、胸を張って師匠の弟子だと名乗れるように。
師匠が自由に空をかけるその場所まで、自分も飛んでいきたい。
朦朧とする意識の中で、エニカは未来を想像した。
師匠は今より遥か遠くまで、自身の道を歩いて行くだろう。
そのとき、自分はまだ師匠の背中が見える場所にいるだろうか。
少しでも強くなれているだろうか。
少しでも早く走れるようになっているだろうか。
暗闇も怖がらず進めるようになっているだろうか。
虫を見ても騒がない、おしとやかな人間になっているだろうか。
いや、きっとそんなこと、師匠は望んでいないだろう。
師匠は自由に飛べと言った。だからきっと、今みたいに弱くても、歩くのが遅くても、暗闇が虫が怖くても、その自由な翼で自分らしく飛べているのなら、師匠は笑ってくれるだろう。
「そんな幸せな未来が……いつか……きっと…………」
エニカの意識が徐々に薄れていく。
傘を持つ手に、力が入らなくなる。
もうとっくに限界は超えている。
例えこのまま意識が深い暗闇に落ちていくとしても、この手に握った傘だけは、まっすぐ上に差し続けよう。
自分が倒れても傘が開いてさえいれば、子供に雨は当たらないのだから。
目がかすむ。呼吸が浅くなっていく。
意識がゆっくりと消えていく。
そのとき、レティが銃口を下ろした。
「クソ、魔力切れか」
炎の雨が止んだ。
レティは銃を握り締めると、再び魔力を込め始めた。
エニカの消えかかっていた意識が少しずつ戻り始める。
体は血まみれで、立っていることすらままならない。
全身がきしみ、痛みが、苦しみがおさまらない。
涙がボロボロと溢れてくる。
それでも、カイトの背中を思い出して、エニカは立ち続けた。
消えかけていた命の火を灯し続けた。
「師匠は、すごいです……誰かを守るって……とっても大変ですね……」
エニカはカイトに何度も守られた。
カイトが持つその大きな傘が、どれだけの雨をしのいでくれただろうか。
エニカは思う。きっとこれから先、カイトが持つ傘の下には、たくさんの人が集まるだろう。
雨をしのぐ者。
傘の穴から空を見上げる者。
共に傘を持つ者。
その人々の波に埋もれて、いつかエニカは傘から離れ、カイトの姿が見えない遠くまで流されてしまうかもしれない。
しかし、それでいいのだ。そうしたら今度は自分自身の傘を握って、カイトがいるその場所まで走って行けばいい。
そして、隣に並んで一緒に歩く。それぞれの好きな傘を持って同じ方向に進んでいく。
「そのときは、またその温かい手で……私の手を握ってくれますか……?」
頬を伝う涙より、止めどなく溢れる血液より、世界を赤く染める夕日より、絶望を生み出す炎より。
優しく温かく広いその手で、そっと握ってくれるだろうか。
朦朧とする意識の中でも、エニカは背中に背負った大切なものを守るため、決して消えない決意の火を、その目の奥に灯し続けた。
「私も、師匠と一緒にこの空を飛びたいです」
世界を変えようともがく小鳥が一羽。
その体は小さく、細い翼は虚しく鉄の鳥籠を叩く。
何も変わらない。何も変えられない。
自分の弱さと無力さに絶望する日々。
それでも、いつか見たどんな雨の中でも力強く羽ばたく、あの真っ白な翼を思い出し、必死に鳥籠を叩き続けた。
もう翼はボロボロで、羽が抜け落ち、血と涙にまみれている。
しかし、あがき続け、叩き続けた鳥籠にはいつしかひびが入り、少しずつ世界が広がっていく。
そこにはもう、小さな世界に閉じ込められているだけの無力な小鳥はいなかった。
変えられないものなどない。
空はいつだってそこにある。
光が差す。
鳥籠が砕ける。
窓は開かれた。
あの焦がれた広い空へと、自由な翼を大きく広げ、鳥籠から小鳥が今、飛び立つ。
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