まっさらな命をきみに。

古都 一澄

左耳のピアス

 わたしは高校二年生だった。

 文芸部部長、という名だけの肩書きを背負っていた、一人の少女だ。


 そして、きみはわたしより一つ下の歳で、私と同じ文芸部に所属していた。

 部員数はわたしときみの二人だけ。



 二人しかいない小さな部屋で、小説を書いたり宿題をしたり。

 好き勝手に過ごした自由な時間は、お互いにとって本当に心地よかった。






 きみは、不思議な子だった。

 綺麗で、儚くて。


 きみの全てが絵になった。

 悪戯っ子のように笑う顔。口を尖らせて愚痴を言う姿。興味津々にパソコンを見つめるその瞳。

 稀に見せる、憂いを帯びた顔さえも美しかった。



ーーもう全部、戻らない記憶。



 それでも、わたしときみだけの空間を、わたしは今もあいしている。

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