ふりまわして
鈴乱
第1話
ほら、だから言ったじゃないか。
僕に近寄ったらダメだって。
君を壊しちゃうよ、って。
―――――――
君がいけないんだよ?
僕の警告を無視するから。
僕の警告を無視して、一緒にいようとするから。
僕は言ったよ。
「離れた方がいいと思う」って。
君は、傷ついたような顔をしたね。
僕だって、こんなこと言いたくない。
でも、しょうがないだろう。
そうやって、僕の下から離さなきゃ、君は永遠に僕の奴隷で終わっちゃう。
君は、それでいいのかい?
そんな人生で、いいのかい?
―――――――
僕は君が好きだよ。
ものすごく好きで好きでたまらない。
離れるなんて、嫌だよ。嫌に決まってる。
本当は、君以外なんてどうでもいい。
家族だろうが、なんだろうが、他人の意見なんかどうでもいい。
……でも、これは、きっと世にいう「愛」じゃない。
言うなら、「執着」とか、「依存」とか、そういうおどろおどろしいものさ。
だから、君は僕に潰されちゃった。
僕の「偽物の愛」に酔って、君が君を潰しちゃった。
あぁ、でも。
もしかしたら。
君も僕に「偽物の愛」を語ってた?
あはは。だとしたら、おあいこだね!
いいよ。僕はそんな君の狡猾なところも、ぜぇんぶ好きだから。
僕はさ、君がどんな人だって構わないんだ。
だって、僕自身がとっても醜くて酷い人間だから。
まるで、人間の心を持っていないような、そんな人だから。
そんな僕に捕まった君だって、きっと、「似た者」だろう?
――――――
世間はね、外面がいい僕をほめてくれるよ。
大人しくて、聞き分けが良くて、立派だって、さ。
見えてるものが、すべてだとでも思ってんのかな。
僕の本当の姿は、きっと誰も知らないよ?
きっと君だって知らない。
僕はただ、自分の利に忠実なだけ。
自分の利になるなら、共にいるし、ならないなら、切り捨てる。
利にならなくても助ける、なんて、そんなわけないだろう?
助けることが、僕の利になるから、ただ、体が動くだけさ。
僕はひどい奴だよ。『人を助けてる自分』が好きなんだ。
『献身的で優しい人間』をずっと演じてきたんだ。
僕が好きなのは、本当は君じゃなくて……僕だけなのかもしれないね。
ふりまわして 鈴乱 @sorazome
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