サキュバス少女の恋

一ノ瀬 彩音

第1話 彼との出会い

それは、私がいつものように屋敷の庭で読書をしているときのことだった。

木々がざわめく音、鳥のさえずり、そしてそよ風によって揺れる草木の音。

それらが混ざり合って、とても心地の良い音楽を奏でていた。

私は、その美しい音色に耳を傾けながら、本のページをめくる。

そんな時だった、突然、茂みの中から小さな音が聞こえてきたのだ。

その音の正体を確かめるべく、私は本を閉じて、ゆっくりと立ち上がる。

そうすると、そこには一人の男の子が立っていた。

年齢は、おそらく10歳くらいだろうか?

幼いながらも整った顔立ちをしており、綺麗な瞳をしていた。

服装を見る限り、どこかの村に住んでいる子だろう。

しかし、どうしてこんな森の中に一人でいるのだろうか?

不思議に思った私は、彼に話しかけてみることにした。

「ねえ、こんなところで何をしているの?」

そうすると、彼は少し戸惑ったような表情を見せたあと、小さな声でこう答えた。

「……道に迷っちゃったんだ」

どうやら迷子になってしまったらしい。

こんな森の中では無理もないことだ。

私は彼を安心させるように優しく微笑んで、こう言った。

「大丈夫よ、私がお家まで送ってあげるわ」

それを聞いて安心したのか、彼はホッとした表情を浮かべた。

そして、私にお礼を言うと、そのまま歩き出そうとしたのだが、途中で立ち止まってしまう。

どうしたんだろうと思っていると、彼がもじもじしながら話しかけてきた。

「……あの、お姉さんの名前は何て言うんですか?」

そういえば名乗っていなかったことを思い出し、私は自分の名前を告げることにした。

すると、それを聞いた瞬間、彼の顔がパッと明るくなったような気がした。

もしかして、私の名前を聞いて喜んでいるのだろうか?

そうだとしたら嬉しいなと思いながら、さらに言葉を続ける。

「ふふっ、ありがとう。それじゃあ、行きましょうか」

こうして、私と彼の奇妙な出会いが始まったのである。

それから私たちは、二人で森の中を歩き始めた。

しばらく歩いているうちに、だんだんと日が傾いてきたので、そろそろ帰らないといけないと思い、立ち止まる。

そうすると、彼もそれに合わせて立ち止まった。

どうしたのかと思って顔を見ると、なにやらモジモジしているようだった。

どうしたのかなと思って見ていると、意を決したように口を開いた。

「あ、あのっ!」

突然大きな声を出すものだから、驚いてしまった。

いったいどうしたというのだろう?

そう思って首を傾げると、彼は続けてこう言った。

「ぼ、僕と結婚してください!」

突然の告白に、思わずドキッとする。

まさかプロポーズされるとは思っていなかったので、動揺してしまった。

どうしようかと思ったが、すぐに冷静になる。

まずは返事をしなければと思ったからだ。

なので、私はこう答えた。

「ごめんなさい、私には好きな人がいるんです……」

そう言うと、彼は悲しそうな顔をした。

申し訳ないとは思うが、仕方がないことなのだ。

だって、本当のことなのだから。

それに、今は彼以外の男性に興味はないのだから仕方ないだろう。

そう思いながら、もう一度謝ると、今度は笑顔で許してくれた。

良かった、これで一安心だ。

そう思い、ホッと胸を撫で下ろす。

その後、私たちはその場で別れた。

別れ際に、また会えるかどうか聞いてみたところ、いつでも会いに来ていいと言われたので、嬉しくなった。

そうして、家に帰った後も彼の言葉を思い出す度に胸がドキドキするのだった。

(ああ、早く会いたいなぁ)

そんなことを考えながら、眠りにつくのだった。

翌朝、目が覚めると、真っ先に昨日のことを思い出す。

そして、自然と笑みが溢れてしまう。

幸せな気分に浸りながら、朝食を済ませると、早速出かける準備を始めた。

といっても、特に持っていくものはないのだけれど。

強いて言えば、着替えくらいだ。

まあ、あってもなくてもいいようなものだし、大丈夫だろう。

よし、準備完了だ!

さあ、出発しよう!

そんなわけで、屋敷を出て森に向かうことにする。

昨日出会った場所に行くと、そこには誰もいなかった。

あれ、おかしいなと思いつつも、もう少し待ってみることにする。

10分後、まだ来ない。

30分後、まだ来ない。

1時間後、まだ来ない。

さすがに遅すぎると思い、心配になって探しに行くことにした。

どこに行ったんだろうと思いながら探していると、近くの茂みから音がした気がした。

急いで行ってみると、そこに彼がいた。

しかも、傷だらけで倒れていたのだ。

慌てて駆け寄ると、どうやら気を失っているようだった。

一体何があったのだろうか?

とにかく、このまま放っておくわけにはいかないと思い、屋敷に連れて帰ることにした。

幸い、そこまで遠くなかったので、なんとか運ぶことができた。

ベッドに寝かせると、傷の手当てを始める。

幸い、それほど深い傷はなかったので、簡単な処置だけで済んだ。

あとはゆっくり休ませるだけだ。

しばらくすると、彼が目を覚ました。

ゆっくりと起き上がると、辺りを見回し始める。

そして、私の方を見ると、不思議そうな顔をした。

なぜここにいるのかわからないといった表情だった。

無理もないだろう。

目が覚めたら知らない場所にいたのだから、驚くのも無理はないはずだ。

だから、ちゃんと説明してあげた。

そうすると、納得してくれたようで、安堵の表情を浮かべていた。

それから、私にお礼を言うと、自己紹介をしてくれた。

彼の名前は、サウト君というらしい。

歳は13歳で、この近くにある村の出身だということがわかった。

それを聞いて、私も自分の名を名乗ることにした。

そうすると、なぜか驚いた顔をされてしまった。

どうしてだろうと不思議に思っていると、その理由はすぐに判明した。

なんと、私の名前がサキュバスと同じだったからだ。

確かに、言われてみれば似ているかもしれないと思ったものの、そんなに驚くほどのことなのだろうか?

気になったので聞いてみると、どうやらこの世界ではあまり馴染みのない名前なのだそうだ。

そのため、驚かれたというわけである。

なるほど、そういうことだったのかと納得した。

それにしても、偶然とはいえ面白いものだなあと思うと同時に、なんだか運命的なものを感じたりもするのだった。

そんなことを考えているうちに、ふとあることを思いついた。

「ねぇ、サウト。キスしない?」

私がそう言うと、彼は顔を真っ赤にして固まってしまった。

ちょっと刺激が強かっただろうか?

でも、どうしてもしたかったのだから仕方がないだろう。

それに、いずれ結婚することになるわけだし、今から慣れておいた方がいいと思ったのだ。

というわけで、さっそくキスをすることにした。

最初は軽く触れるだけのつもりだったのだが、だんだんエスカレートしていき、最終的には舌を絡め合う濃厚なものになってしまった。

それでもなお止まらず、結局最後までやってしまったわけだが、後悔はなかった。

むしろ、とても幸せな気分だった。

「もっとキスして、サウト」

そう言って、再び唇を重ね合わせる。

「うん、いいよ」

彼は照れながらも応じてくれた。

その後も何度も繰り返していくうちに、どんどん気分が高揚してくるのを感じた。

「あぁ、幸せだなぁ」

私の頭の中はもう真っ白になっていた。

「ララ、森の中を探索しないか?」

「えっ!?」

突然のことに驚きつつも、私は頷いた。

そして、二人で歩き出す。

しばらく歩いているうちに、だんだんと緊張してきた。

というのも、二人きりという状況が初めてだからだ。

心臓の音がうるさいくらいに高鳴っているのがわかるほどだった。

そんな状態のまま歩いているうちに、やがて開けた場所に出た。

そこは小さな泉がある場所で、周囲には色とりどりの花が咲き乱れており、とても美しい光景だった。

その光景を見た途端、感動のあまり涙が出そうになったほどだ。

それくらい素晴らしい場所だったのである。

そこで休憩することにした私たちは、地面に腰を下ろした。

そうすると、不意に手を握られたので驚いて顔を上げると、そこには彼の顔があった。

どうやら、無意識のうちに私の手に触れてしまったようだ。

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