第8話 うれしい訪問者
刑事達が現れた二日後に、父さんは意外なお客さんを連れて、じいちゃんの家にいる私の所へやって来た。璃空センパイだ。父さんの方から連絡したところ、この間のコロッケを売っている店を教えてほしいと言ったそう。たぶん父さんは、この間、センパイが私と翔太を元気づけてくれた事に対してお礼を言いたかったんだろう。
「宮田は、菜々に伝えたい事があるらしいんだ」という父さんの言葉は意味深だ。昨日、由乃がクラスメートの大野君から再来週の夏祭りに誘われたとラインで報告してきた。もしかしてそんな誘いかな、と思っていた私にセンパイは、「月島先生の事件の事だけど……」と打ち明け始めた。
そうよね。まだ事件の事は終わっていない。私は、璃空センパイをこの家の庭に案内した。今日も真夏の陽射しが容赦なく照りつけている。でもこの庭だけは、涼し気だ。私達は、庭を見晴らせる縁側に座った。
近くの木から蝉達の合唱が聞こえてくる。子どもの頃はそれがやかましいとしか感じられなかったけど、蝉の命が思ってた以上に短い事を知ってからは、不思議とうるさく感じなくなった。
「私もね、事件の事で報告する事があるの。もうこのニュース、知ってるかもしれないけど、精華中学校の盗難事件の犯人、一人だけしか捕まってなかったけど、残りの犯人達についても分かって、捕まるのも時間の問題だって」
「そっか。とにかく良かった。月島先生に危害が及ばなくて、ケガしなくて良かったよね」
「そうなのよね。本当、もしかしたら暴力振るわれててもおかしくない出来事だったんだなって思う。神様に感謝しなくちゃね」
「うん、そうだよ」
「それでね、後は父さんが学校に隠してたっていうアクセサリーの事なんだけど……」と私は刑事達から二日前に言われた事を話した。自分達で関係者に会いにいくなと釘を刺された話を。
「親切な刑事さんだよね。本当に危ない連中と関わる事を心配しているんだ、きっと」
「だけど、何だか気になるの。父さんの過去の事」
「実はさ、今日、菜々ちゃんに見せようと思って持って来た物があるんだ」
「何?」
璃空センパイは一冊の雑誌を取り出した。
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