第12話 クエストの種類
見つめる僕の視線が気になったのか、ライカさんは話し掛けてきた。
「あのー? ここまではよろしいですか?」
「す、すみません、大丈夫です!」
またもや近づいてきた顔に驚きながらも首を縦に振る。
すると、ライカさんはその返事にニコッと微笑み、今度は冒険者ランクの昇級について説明をしてくれた。
「次に冒険者ランクを上げる方法ですが、各クエストへの達成率、ギルドへの貢献率、難易度の高いクエストを達成など、単純な強さではなく、冒険者ギルドが総合的に判断してランクを上げることになります」
なるほど、つまりランクを上げたければ、単純な強さだけではいけないということ。
それにしても覚えること多い。
説明をしてもらった直後は覚えているだろうけど、今の自分に関係してこない昇級については、クエストやじいちゃんとの修行をこなしている間に忘れてしまいそうだ。
それにライカさんの様子からして、まだ説明することがありそうに見える。
彼女は席を立つことなく後ろの棚から、クエストの種類と詳細と書かれた緑色の本を取り出し、微笑み声を掛けてきた。
「ふふっ、こちらで説明は最後ですので、もうひと頑張りして下さいね!」
「は、はい!」
「うふふ、いい返事です。ではクエストの種類について説明していきますね」
「よ、よろしくお願いします」
「主に三つの種類があり、採取クエスト、討伐クエスト、あとは特定の期限が設けられた特別クエストがあり、それぞれに難易度が設定されており、またそれによって報酬が変わります。
例として、わかりやすいので先程リズ君が受注した採取クエストで説明させて頂きますね」
そういうとライカさんは取り出した本を開き見せてくれた。
「こちらをご覧下さいませ」
開いたページ上部には、【主な薬草の種類と買い取り価格について】と書かれている。
どうやら、彼女が気を使って初クエストに挑む僕でもわかるよう、薬草採取のクエストで説明してくれるようだ。
―――――――――――――――――――――――
【主な薬草の種類と買い取り価格について】
薬草名 回復草
色 緑色
生息環境 林や森の中
価格 3000ペル
薬草名 毒消し草
色 紫色
生息環境 林や森の中、枯れ木そば等
価格 3000ペル
薬草名 シビレン草
色 黄緑色
生息環境 日当たりが良く、雨の降らない地域
価格 4000ペル
薬草名 アロン草
色 青緑色
生息環境 潮風の吹く地域
価格 5000ペル
――――――――――――――――――――――
「ここに載っているように、薬草採取となると、見分けやすい緑色や紫色をした物は、報酬は安くなっていき、逆に見分けがつきくい黄緑色や青緑色をした物は報酬が高くなっていきます。また入手しにくい場所に生息していることも、関係してきますね。これは薬草採取だけではなくて、採取クエストの全体的な傾向です」
ひとえに薬草といってもこんな種類があったんだ。
知らなかった――。
でも、中身が複雑じゃなくて良かった。
これなら僕でも覚えていられるから、わざわざギルドに来て読み込む必要もない。
彼女は本を真剣に見つめる僕へ微笑んできた。
「一応、他のクエストについてもご覧になられますか?」
気になる。
今の僕に直接関係はしてこないだろうけど。
「お願いします!」
「ふふっ、承知致しました」
すると、今度は赤色と黄色の本を後ろの棚から取り出した。受付の机に並ぶ緑、黄、赤色の本。
「この赤色が討伐クエストについて、黄色が特別クエストについてですね!」
「そうなんですか……あの、少し気になったんですけど、この三冊にクエストの全てが載っているんですか?」
「おお、よく気付かれましたね! 実はギルドでも全てを把握しているわけではありません。実際、未だに生態系が不明な魔物や植物も存在していますからね! こちらに載っているのはあくまでも代表的な魔物や植物、特別クエストの事例が載っているのみです」
なるほど、じゃあ広い世界を見て回れば冒険者ギルドでも、わからない未知の魔物や植物に会えるってことだ。
なんだろう、ワクワクする。
やっぱり、冒険者ギルドに来て良かった。
その心踊らせている雰囲気が表に出ていたのか、ライカさんは、笑みを浮かべながら優しく語り掛けてきた。
「ふふっ、緊張が解けたようで良かったです! 他に聞きたいことはございますか?」
やっぱり、優しい人だ。
この緊張を解くために色々と考えて接してくれたのだろう。
僕はそんな彼女が口にした「他に聞きたいことはございますか?」という言葉にずっと気になっていたことを聞くことにした。
それはライカさんの種族についてだ。
何故、気になったかというと、その見た目が凄く特徴的だったから。
冒険者ギルド内には町と違って僕らと同じ人族、頭に耳の生えた獣人族以外にも、耳の尖っているエルフ族、背の小さなモジャモジャの髭を蓄えたドワーフ族も居る。
でも、ライカさんの特徴はそのどれにも当てはまらなかった。
帽子にしまっていても、わかるくらい艷やかに輝く鮮やかな赤い髪。
吸い込みそうな深い紫色をした瞳、そして褐色の肌だ。
「あ、あの、それではライカさんの種族を教えて下さい」
その声がギルド響くと、賑わっていたギルド内が嘘のように静まり返った。
間違いなく、今ここにいる人たちは、僕らの会話に聞き耳を立てているようだ。
こちらへ直接視線を向けるなんてことはしないけど、耳がピクピクと動いていたり、不自然なところで動きを止めている人もいる。
それに気がついたライカさんは、こちらにウインクしこの話題を強制的に終わらせた。
「それはまた今度ね!」
「は、はい」
その僕らの会話を聞いて、先程の静寂が嘘のように再び賑やかになるギルド内。
そして、聞き耳を立てていた事を誤魔化すように、この場に居た全員が大袈裟な反応をしながら大声で話をしている。
その様子を見ていたライカさんは、頬に手を当てながら口を開いた。
「ウフフッ♪ ほーんと困った人たちですよね!」
笑みを浮かべているが、その瞳は全く笑っていない。間違いなく怒っている。
「あはは……そうですね」
「ホントですよ! 人のプライバシーに聞き耳を立てるなんてよくありませんからね!」
「た、確かに、プライバシーって大切ですもんね……」
「そうですよ! せめて気になるなら、自分で聞けばいいのに……あ、こちら素材回収用の袋になります」
「ははは……ありがとうございます! それではクエスト頑張ってきますー!」
僕はそんなライカさんを前に苦笑いをすることしか出来ず、初のクエストを受注すると素材回収用の麻袋を受け取り、逃げるようにギルドを後にした。
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