花びらを華に帰す為に

アキノリ@pokkey11.1

第一章 絶望の空

15年の月日

第1話 逢いたい人が居る

乃木山陽菜(のぎやまはるな)は学校一の美少女とされた。

そして俺、鷺巣一太(さぎすかずた)はそんな陽菜に何時も翻弄されていたのだが。

だけどそんな人生も悪くない、と思っていた。

だがある日全ては一変する。


陽菜が交通事故に遭って死んだ。


というものだった。

俺はその事で精神的にショックを受けてそのまま統合失調症と診断された。

それから奇声を発する様になったりして.....自宅に引き篭もる。

人間関係も上手くいかなくなった。


社会関係も何も上手くいかなくなり俺は絶望に明け暮れる日々。

かれこれそれが15年は続いている。

15年間ずっと引き篭もっている。


「.....ははっ。未練たらたらだよな。陽菜。情けない俺を早くお前の元に連れて行ってほしいもんだ」


いっその事、手首を掻き切ってやろうか。

思いながら俺はカップ麺のゴミとかが散らかっており。

そしてゴミだらけの部屋を見渡す。

カッターあったかな。


「.....なんて下らない事を考えても仕方がないな」


交通事故死。

これは.....俺が原因とされている。

俺が悪い。

全て俺があの時、と思う。

あの時の後悔が。


「やれやれ」


そんな過ぎ去った事を考えても仕方がない。

俺は思いながらパソコンゲームのログインボーナスを受け取ってから。

髭ツラの頭ボサボサのモニターに映った男を確認しつつパソコンを切った。

今日はやる気が起こらない。


「.....」


俺は朝だが寝る事にした。

正直言って早く陽菜に会いたい。

あの太陽の様な笑顔に、と思える。

俺があの言葉を言わなければ、と思いながら。

そのまま寝た。



「.....?」


何か部屋が綺麗な香りがする。

懐かしい香りだ。

カップ麺の、部屋の生臭い香りじゃない。

木の香りがする。

俺はゆっくり目を覚まして起き上がる。


「.....何時だ今」


そんな事をボソボソ呟き.....?

俺は何か違和感を感じた。

それは.....俺自身。


何故か汚らしい服装ではなく。

まともな新品のパジャマを着ているのだが。

あれ?いつ着替えた?


「.....???」


俺は眠気眼で周りを見渡す。

そして唖然としながら酷く愕然とした。

何故なら.....部屋がかなり若返っている。


カップ麺のゴミも。

ゴミもない。

そして.....美少女フィギュアとかも無く。

モニターも無い。


それどころかあるのは.....まるで15年前の景色。

つまりラノベと勉強道具。

それから少し前の旧型テレビ。


俺はあまりの違和感に、な、何が起こっている、と思いながら鏡を見る。

そこに映っていたのは.....15年ぐらい前の俺だった。

つまり高校生になっている俺だ。


「.....嘘だろオイ。何だよこれ!?」


そんな事を呟きながら.....俺は全身を見ていると。

俺の部屋に誰かがやって来る。

それから、何しているの?カズ、と声がする.....は.....へ?

そこには目をパチクリした.....陽菜が立っていた。


「.....?」

「.....お前.....」

「え、えぇ!!!!?」


俺は号泣して陽菜を抱きしめた。

陽菜は、ま、待って!?寝ぼけているの!?、と慌てて声を発する。

体が熱くなっていくが。

これは生きている証であろう。

俺は、違う。寝ぼけて.....無いと思う、と涙声で発する。


何だこれは。

一体何故.....陽菜が生きている?

夢か?


「待って待って。学校に遅れちゃうよ!」

「.....学校?」

「そう。学校。.....今日は学校でしょ?」

「.....学校.....」


正直、嫌な気持ちしかしない。

だけど.....陽菜が生きている。

俺はその事にあまりの嬉しさに涙が止まらなかった。

すると陽菜が俺の涙を拭う。


「どうしたの?まるで久々に会ったみたいに」

「.....いや。ここが天国かと思ってな」

「.....え?」

「.....こっちのセリフだ」


正直怪しいが理解出来た気がする。

俺は.....前世の記憶を持ち15年前にタイムスリップしたのでは無いだろうか、と。

これは夢じゃ無いと思う。


あくまで俺は.....15年前にタイムスリップした様だ。

こんな非現実的な事が起こるもんなんだな。

ラノベの世界だけかと思っていた。


「とにかく早く朝食食べよ」


俺の手を握る陽菜。

それから花咲く様な満面の笑顔を浮かべる。

俺はその姿にまた泣きそうになるが。

それよりも赤くなってしまった。


「.....陽菜」

「ん?なに?」

「.....何があっても今度こそ俺はお前を守る」

「.....え?.....え?」

「.....だから生きてくれ」


え?え?、という感じで陽菜は目をまたパチクリする。

決意しながら俺は真っ直ぐに陽菜を見る。

厨二臭い?そんなもの気にしない。


俺は.....生きる。

陽菜を.....必ず生かしてそして。

俺は.....。


「あはは。変なカズ」

「.....変でも良い。.....俺は.....」

「.....うん。でもそうだね。もし私に何かあったら守ってね。カズ」


そして俺は一階に降りる。

それからご飯を.....。

15年ぶりの陽菜のご飯を噛み締めた。

涙が出そうだ。

質素じゃ無さすぎて。

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