6. 反応

 新記録を達成した佐助の配信が思わぬ反響を呼ぶ。最初に反応したのは、RTA界隈の人間だった。佐助の動画に対し、次のようなコメントを残す。


====================


キラキラスマイル:速すぎだろw

ねっとりめがね:この速度、俺じゃなきゃ見逃しちゃうね

くのー:やっぱ、RTAは忍者だよな

黒の慟哭:あそこの岩の後ろに道があったんだ

アクション好きな冒険者:鳥に変身はずるくね

くのー:忍者の特権さ!

ニンコ:さすにん

まほまほ:忍者じゃなくても変身くらいできるだろ

くのー:ならやってみろ^^

キラキラスマイル:煽るなよw

あああ:RTA素人なのですが、入口から出口まで瞬間移動すればいいのでは?

黒の慟哭:@あああ 瞬間移動は、距離が遠くなるほど精度が落ちるし、発動に時間が掛かる


====================


 また、忍者だけではなく、他のジョブの冒険者も佐助の動画に興味を持った。


====================


黄昏剣士:忍者は不死鳥に変身できるのか

サスケ:@黄昏剣士 闇魔忍法の変化の術で隼になった後、炎魔忍法の火天で炎を噴射しながら飛んでいます 

銃心ファイヤードラゴン:解説助かる

黒の慟哭:闇剣士の俺にはできないな

くのー:@サスケ 今度私にも教えてください!

槍サーの王子:俺の突きの方が速い

ぶつ切りマッチョ:岩のシーン。俺なら殴って壊すけど

キラキラスマイル:タイムロスができちゃうだろw

カマキリオ:あの日見た不死鳥はこれだったか


====================


 さらに、一般層にもじわじわ受けた。


====================


ハッピーなお笑いタイム:セルフ倍速助かる

フードマスターのレシピ帳:わかる。速すぎて、見えないところもあるけど

キュートなコスメラバー:ダンジョンってこんな感じなんだ

うっぴー:とりさんかわいい

内気な夢泥棒:冒険者になったら、飛べるのか。いいなー


====================


 概ね好評だったが、中には否定的なコメントもあった。


====================


GG:説明がないから、よくわからん

ネラー:合成だろ

クレイジーバナナ:だよな。合成じゃなきゃこんなに速いわけない

グリーンティーウィザード:次の〇通枠

inCa:声が陰キャっぽいw

ココア:@ GG @ネラー @クレイジーバナナ @グリーンティーウィザード @inCa お前ら全員〇ね


====================


 この配信で佐助はある程度認知されるようになり、2回目の配信では、配信中の最高視聴者数が234人に増えた。そして、2回目以降も怒涛の速さで記録を更新したことで佐助の認知度は上がり、5回目の配信では最高視聴者数が9235人となった。佐助の記録と最高視聴者数の推移は次の通りである。


====================


対象階:B3階 記録:58分29秒→10分 最高視聴者数234人

対象階:B4階 記録:1時間14分44秒→7分42秒 最高視聴者数1434人

対象階:B5階 記録:47分01秒→9分10秒 最高視聴者数3897人

対象階:B6階 記録:2時間11分58秒→28分33秒 最高視聴者数9235人


====================


 これらの配信や後日に投稿した解説動画の効果もあり、チャンネルの登録者数が増え、配信を始めて1か月しか経っていないが、登録者数は10万人を超えた。ただ速いだけではなく、鳥が優雅にダンジョンを舞う姿は、RTA界隈以外の人間にも好評だった。


 そして、登録者が伸びるほど、佐助はRTA走者としての自信を深めていった。コメント欄を眺めながら、佐助はにやつく。


(10年前の自分が見たら、驚いちゃうな、これは)


 ダンジョンが出現してから、ずっとダンジョンに対する憧れがあった。そして、上京すると同時にダンジョンを探索し、その魅力に取りつかれた。B2階の岩の後ろにあるトンネルのように、ダンジョンにはまだまだ知られていない秘密がたくさん眠っていて、それをいつか発表したいと思っていたから、配信という形で示すことができて良かったと思う。


(心に感謝しなきゃ)


 心がいなかったら、動画配信なんてしなかったと思う。それに、心たちの安全のために奮闘した結果が、冒険者としてのレベルアップに繋がった。


(ただ、まだ機嫌が悪いんだよな)


 あれから2週間が経った。たびたびメッセージは送っているし、直接会ったりもしているが、無視されたり、逃げられたりが続いている。そろそろ、ちゃんと話したいのだが、それがいつになるか、佐助にはわからなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る