第12話「魔族は打ち倒されるべきだ」
「マイナーさん、今最高に気分がいいですよ!」
良い笑顔でそう言うマリアの前には大量の魔族の死体が積んであった。
「魔族の急襲を喜ぶのはお前だけだろうよ……」
呆れながらそう言った。この前助けた村が解放されたことを知った魔族が、ナカマノカタキとばかりに俺たちに襲いかかってきたのだ。
「人間! 貴様ら下等生物ごときがよくも……」
「死ね」
ちなみに死ねと言ったのはマリアだ。魔族の家族が集団で襲いかかってきたのでそれらを根こそぎ殺してしまった。
「一応、魔族には子供も居たようだが……容赦ないのな」
「当たり前でしょう、魔族に私みたいに復讐に燃える個体を出すわけにはいきませんからね」
「いいこと言っているようで要は一族郎党全滅させれば復讐の心配は無いって言ってるな」
いやまあ確かに復讐の心配はないんだろうがな……もう少しこう、人の心とかはお持ちでない、そうですか。根絶やしにすれば禍根は残らない、シンプルすぎるマリアの考えに触れる度に震え上がりそうになる。
「敵は全て倒すべきなのですよ。人間と魔族はわかり合えません」
「そういうもんかねえ……」
そんなことを言っていると魔物が襲いかかってきた。狼タイプだが、茂みから飛び出て俺たちに牙を向けて飛びかかってきたところで、空中でマリアに首を切り落とされた。ドサリと体は落ち、スパッと切れた首は遠くの方へ勢いそのまま飛んでいった。
「マイナーさん、こういうのってお金になるんですかね?」
「止めとけ、この前の町でもらった礼金がまだあるだろうが。そんな運ぶのが大変なものを好き好んで運ぶ気にはならんよ。
「そうですか、もったいないですね」
こうして普通に話しているが、貧乏揺すりの如く剣でブスブスと狼の死体を刺し続けている。マリアを敵に回したことを後悔していて欲しいと心から思う。
「さて、話し込んでいても魔族の一匹も狩れませんし、先に進みましょうか。もっと強い魔族が待っているかもしれませんからね!」
「安全にしような、わざわざ危険を冒すような真似はするなよ?」
「大丈夫ですよ! 私はマイナーさんの出した武器を信用していますから!」
その厚い信頼が重いんだよな。その代わりに心強い味方であることも確かなんだよなあ……
世の中自分の思うようにはいかないものだ、それでも理不尽だとは思っているがな。この世の全てを司る神というものが本当にいるのなら、きっとそれはどうしようも無く度し難いクズなのだろう。でなけりゃこんな理不尽を送ってよこしたりはしないはずだ。
そしてミンチ状になった魔物の肉を放っておいて俺たちは再度歩みを進める。俺たちが離れた途端に魔物の肉を狙っていた魔物が茂みから出てきたのだが、少し離れたところからマリアの剣から飛んだ衝撃波で全滅した。コイツはこれを待っていたのだろうか? なかなかやることがエグいな。
ともに歩きながらなんでもない話をしてみる。しかしマリアは両親を失っているので家族の話は出来ないし、俺も自分のクソみたいな家族の話をしたいとは思わなかった。そんなものだろう。
「マイナーさん、狙ったアイテムを出すことは出来ないんですか? この剣、便利なので狙って召喚出来るととっても便利だと思うのですが」
「残念ながら無理だよ、何度も試しただろう? それに狙って出せるんだったら強力な仲間を召喚しているに決まってるだろ」
俺のスキルは縛りがあるようで、一度召喚に成功したものも次に出てくるかどうかはガチャの運次第らしい。おかげでマリアの幸運が非常に強力なスキルになるんだがな。
「貴様が我が友ヴェノムを殺した女だな! 血統をもうしこ……」
ひゅん
全てを聞き終わる前にマリアの剣から風の刃が飛んでいた。魔族は胸から血を出しながら言葉を続ける。
「よくも人間ごときが我ら魔王軍にたてついたものだな……貴様らは絶対に殺す!」
「うるさいですよ、黙って死になさい」
マリアが突貫して懐に飛び込み、剣を相手の腹から背中に貫通させた。普通の魔族ならこれでかたがつくのだろうが、コイツはもう少し耐久性があるらしく、その一撃には耐えた。
「この人間め! よくも我を、あ! 話を聞けいい!」
「問答無用!」
グリンと魔族に突き刺していた剣を回転させる。内臓がえぐれただろうなと思うのだが、持ち前の体力でマリアを突き飛ばしてなんとか剣が抜けたようだ。
「許さん! 許さんぞ……」
「うるさいですねえ、死ぬことすらも黙って出来ないんですか?」
マリアは左から右へ剣を薙いで魔族の体を真っ二つにする。それからその魔族に飛びかかって剣を獰猛に振るって肉片土地を飛び散らせていく。魔族の内臓が人間とどこまで同一なのかは分からないが、その内容はあまりにもグロテスクな様だったので、どうかマリアが早く原形をとどめないほどに潰してくれるのを祈った。
「待てっ! 人間よ! 今回見逃してぐぇ……」
「見逃すというのは立場が上の者が言う言葉ですよ。あなたのような下等魔族が私の意見を変えられるとでも思っているんですか? 舐めているでしょう、一族郎党鏖殺してやるので覚悟しなさい」
最後にみっともない命乞いをしたのがこの魔族の最後の言葉だった。それから後は言葉にならない残虐ショウが繰り広げられ、魔族の頭が綺麗に潰れてもまだ残っていた下半身もザクザクと切り刻んでいった。その有様は憎しみ以外の感情を失ったかのような表情で、楽しそうに魔族を切っていった。
『アイテムガチャが解放されました』
おお、新スキルか。まだ魔族の形が残っているので、もうしばらくマリアは切り続けるだろう。というわけで『採掘』を使用して石を出してアイテムガチャを回した。
一応通常ガチャと同じくらいの石は用意したのだが、アイテムガチャで使用されたのは半分ほどだった。どうやらコストが安いらしい。
ガチャで出てきたのは薬草をはじめ、魔石なども出てきたが、なんと言っても目玉になるのはエリクサーだろう。俺が見たこともないのにソレがエリクサーであると理解出来た。
「ふぅ……魔族のくせに生意気なんですよ」
「お疲れ、一杯どうだ?」
魔族を地面の染みにしたマリアと二人で疲れを癒やすためにエリクサーを半分ずつ飲んだ。半分に分けても体に染み入って疲れがとれる素晴らしい薬だと理解し、これはそうそう出回らないと、その理由が分かった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます