第12話 ゼウス、俺と取引しないか?
「……駄目だな。完全にどっちに向かってるのかわかんねぇ」
アランは荷物を置いた地点まで戻ってきたものの、元々遭難していた事を思い出す。
アラン、ユキミ、ゴーマ、ゼウスの四人は闇の森を抜けて街へ帰る為に進んでいるが、咄嗟に逃げ込む様に深緑へ入った事もあって、どちらへ進めば森を抜けられるのか全く分からなくなっていた。
「そもそも俺らは迷ってたんだよな?」
「とにかく進むしか無いけど『エルフ』達が追い付いてくると面倒な事になりそうだよ」
「あの爆発で奴らが生きてると思うか?」
「彼らの持ってる技術は僕たちが知るモノよりも遥かに優れてた。それで起きる事故に対しても対策があるハズだ。追撃が来るって考えて動いた方がいいさ」
「……あのゼウスって子供にそんなに価値があるとは思えねぇけどな」
アランは少し離れた所で座って泣いているゼウスと、それをなだめるゴーマを見る。
「ゼウス、モウ泣クナヨ」
「ごめんなさい……でも
悲しみが心から溢れて来る。きっと……ゼファーは
彼は……
「
「ゼウス、ソレダケハ、オ前ガ口ニシタラ駄目ダゼ」
ゴーマはゼウスの言葉が間違っていると肩を掴んで告げる。
「ゼファーハ、オ前ノ為ニ命ヲ使ッタンダ。オ前ガ殺シタンジャネェ!」
「……ゴーマ」
「そいつの言う通りだ。あの金属のヤツとお前さんがどんな関係かは知らないが、少なくとも、涙を流して足を止めて欲しいとは思っていないハズだぜ」
「彼は最後に君へ前に進む事を望んだ。君がそれに応えてくれると信じてあの場に残ったんだ」
アランとユキミの言葉にゼウスはゼファーの言葉を思い出す。
“行って”
そして、涙を一度袖で拭くと立ち上がった。
ゼファーの望み……皆が
「……
“アナタを探してください”
「それが答えなのね」
「俺はアラン・ライバックだ」
「僕は
アランとユキミは改めてゼウスへ自己紹介を行った。
「ゼウス・オリンです。この度は……
ゼウスはペコリと二人に頭を下げる。
「気ニスルナヨ、ゼウス。旦那方ニトッチャァ、アノ程度ハ日常茶飯事ダ。デスヨネ、旦那方」
「ちっ、相変わらず調子の良いヤツだ」
「ふふ。僕は実入りがあったかな。ああ、言うのは大歓迎だからね」
「『
「蜥蜴……そういやそうだったな……」
「何かあったら僕に言ってね。戦闘は大歓迎」
「マァ、旦那方ト一緒ナラ軍隊カラ狙ワレテモ安心ダゼ、ゼウス」
「そんで、ゼウス。お前に聞きたい事がある」
アランは本来の目的だった。自分にかかっている“呪い”に関してゼウスへ尋ねた。
「俺は元はイケメンの『人族』でな。変な呪いを食らって今は『
「そうだったの……」
「イケメンは要る?」
「自分デ言ウト嘘クサイデスゼ」
「うるせぇ! それで、お前の知恵を貸して欲しい。元に戻る手段はあるか?」
ゼウスは『エルフ』達が己に与えた知識の中から対応出来そうなモノを引き出す。
「……呪いは本来なら、魔力の汚れを浄化する事で解除されるわ」
「それはやった。【聖人】セルギウスってヤツと知り合いでな。診てもらったが……駄目だった」
「それなら『アンブロシア』ね。アレはどんな病でも正しい形に治す事が出来る秘薬よ」
「その件も、もう当たった。『アンブロシア』は見たことがあるが……今は何処にあるのか分からねぇ」
ゼウスは自分を頼ってくれるアランの為に有益となる情報を与えられないかと、うーん、と、ここ100年で『エルフ』達が与えてきた“知識”を思い起こす。
「……やっぱりねぇか」
「――いえ。一つだけ方法があるわ」
「本当か!?」
アランはクワッと嬉しそうに口を開ける。
「『アンブロシア』を作るの。【創世の神秘】の元を訪れて少しずつ欠片を分けてもらうのよ」
「そいつは考えてなかったが……【創世の神秘】は伝説だ。ソレを全部探すのは……現実的じゃねぇな」
【創世の神秘】はおとぎ話の領域だ。実在するかも定かでないソレを求めるのは雲に足を乗せる様なモノ。
「【創世の神秘】は実在する。
「なに!?」
ゼウスは『エルフ』達がいずれは全ての【創世の神秘】を手に入れる為に集めた情報も知識として渡されていた。
「『創生の土』『原始の木』『始まりの火』『呼び水』『星の金属』。この五つの内、四つだけは場所が分かるわ」
「分からない一つってのはどれの事だ?」
「『原始の木』」
それだけは『エルフ』達が渡してきた知恵の中には全く情報が無かった。
「ごめんなさい。中途半端な答えで」
「いや……先の見えない所に道が出来たんだ。何とかなりそうだ」
アランは立ち上がるとゼウスへ告げる。
「ゼウス、俺と取引しないか?」
「取引?」
「俺はお前の望みを叶えるまでお前を護る。だから【創世の神秘】を集めるのを手伝ってくれ」
「……取引じゃなくていいわ。アランは
「……やれやれ。少しは打算的に考えろよ」
そう言ってアランは呆れた様に笑うと、差し出してくるゼウスの小さな手を握り、握手を交わした。
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