きみがすべて

希藤俊

第1話 約束

 ほんとに、ほんとに、それでいいの?

 それが、風太くんの望みなんだね・・・・・


 幼稚園、小学校、中学校、そして今の高校まで、風太くんとずっと一緒だった。


 私たち二人はとっても仲良しで、幼稚園の頃から『大きくなったら、結婚しようね』っていつも約束してた。


 小学校の5年生になった頃から、ちょっと恥ずかしくなって、手を繋いで登校しなくなったんだよね。


 それまでは毎朝、風太くんが家まで迎えに来てくれて、二人で手を繋いで登校してたのに。


 でもね、手を繋がなくなっても、毎朝決まった時間に、門の前で必ず待っててくれた。


 「おはよう」って声をかけると、


 「うん」って下を向いて返事。


 登校するときは風太くんが1mくらい前を歩いて、私は少し離れて歩いていた。


 帰りだって私が居残りしたりしても、校門を出ると、必ず門の横の塀に寄りかかって待っていてくれた。


 「風太くん、ごめんね。遅くなって」


 「うん」やっぱり下を向いて返事。


 一緒に登校できなかったのは、私が風邪をこじらせて高熱が出て、お休みをした時くらいかな。


 お母さんにお願いして、門のところで待ってる風太くんに、今日は風邪で休むから先に行ってね、って言ってもらった時くらい。


 中学に入っても、朝は必ず一緒。帰りは、私が書道クラブで遅くなる時は、朝の登校のときに風太くんに話して、先に帰ってもらった。


 私は、高校だって風太くんと離れたくないから、同じ所に行きたかったの。でも中学の3年間はクラスが別だったので、学校にいる間は話はほとんどできなかった。


 「風太くんは、どこの高校受けるの?」


 「まだ決めてない・・・・・」


 3年生になって、風太くんがあんまり話してくれないから、思い切って朝の登校時間に聞いたら、下を向いたままそっけない返事。


 もう風太くんたら、教えてくれてもいいのに。ちゃんと答えてよ。


 「水奈はどこ行くんだ?」


 「うーん、まだはっきり決めてないけど、中村高校に行きたいな」


 「そうか、中村高校か」


 それからもずっと、気にはなっていたけど、あんまりしつこく聞くと嫌われちゃうと嫌だから我慢したの。


 家の両親も、小さい時からずっと一緒の、風太くんと私が結婚するものだと思ってるみたい。


 「水奈、高校も風ちゃんと同じなの?」


 「うーん、どうかな?」


 ママに聞かれた時も、風太くんが教えてくれないなんて言えないもの。

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