第21話 剣聖アレシア視点、アレシアを救う者
ズーン、ズーン、ズーン
大きな地鳴りと共に接近してくる大型ゴーレム。
『ナトルのクソどもが~~! まさか王城攻略用に温存していたキングゴーレムを出さねばならんとは! こいつを稼働させた以上は覚悟しろよ!』
ゴーレムの頭部から拡張された声が聞こえてきた。人が乗っている。おそらくはこのゴーレムの指揮官だろう。
「うわぁああ! デカい!」
「各小隊! 戦闘陣形を崩すな! 魔法部隊攻撃魔法用意!」
たしかにデカい。
あたしに斬れるのだろうか。
だが……
―――やるしかない!
あたしは腹を括って、大きく深呼吸して体内に【闘気】を練りこみ始める。聖剣を正眼に構えたようとしたその時―――
ブゥウウウンという音と共に徐々に周りが見えなくなっていく。
―――こ、これは……
周りの景色が漆黒に染まっていく。どんどん黒く……
『ギャハハっ! ナトルのゴミども! 貴様らに攻撃の機会など与えるかぁあ!』
「な、なんだ周りが突然暗くなったぞ!」
「各小隊、持ち場を離れるな! クソ何も見えん!」
「魔法部隊、目標を見失いました。攻撃できません!」
『そりゃそうだ! わがキングゴーレムが【闇のスモーク】を発動させたからなぁ! 貴様らの視覚は奪われたんだよぉ!』
クッ……暗い、がひるんでいる場合では……ガッ!!
あたしの体は重い一撃とともに、後方に吹っ飛んだ。
「ご、ゴーレムの一撃か? だがどうやって?」
あたりを見回すものの、全てが暗い闇だ。なにも見えない。
辛うじて聖剣を合わせたことにより直撃は回避できたようだが。体中が痛い。
『ギャハハっ! キングゴーレムは魔導暗視ゴーグルを標準装備しているのだぁ! すごいだろう! 暗闇だろうがなんでも見えるんだぞぉお! ナトルのド田舎兵士どもにはこんな技術力はないだろうがな! 魔道具最高国家ノースマネアの力作にひれ伏すがいいぃい!』
とうことは、こいつだけがこの暗闇で攻撃できるということか。
マズイ、あたしがなんとかしないと。
闇の奥から、フォンフォンとなにやら不気味な音があたりに響き始める。
『さてと、お遊びは終わりだ! 魔力ゴーレム砲門ひらけ! 砲撃開始ぃいい!』
あたり一面に、ズドンズドンと地鳴りが連続して響き渡る。
地鳴りがするたびに、兵たちの苦痛の叫びが聞こえてきた。
『ギャハハっ! 手も足もでないか! ナトル兵ども~~!』
あたしはなんとか体を動かすも、どんどん動きが鈍くなっていく。
さっき受けたダメージが原因じゃない……
────怖いんだ、やっぱり暗闇が。
ついには動かなくなってしまった自分の体を恨んだ。なぜだ、闇さえなければこのぐらいの苦境乗り切ってきたはずなのに。いや違うか……
────単に鍛錬が足りなかっただけ。
なんだか自分の思考が、自分のものなのかどうかもわからなくなってきた。
ただひとつだけ。わかっているのは、あたしはこのまま何もできずに死を迎えるということ。
『そこにいるのは先ほど暴れまわってた小娘かぁ? ん~んん? それは聖剣だな? ということは貴様が剣聖かぁああ! ギャハハっ! これはいいぞ、剣聖を葬り去ったとなれば我がノースマネアの技術力は大陸中に知れ渡ることになる! 最大のゴーレム砲で始末してくれる! 極大魔力ゴーレム砲、発射準備ぃい!』
もう両手もろくに動かなくなった。虹色の聖剣に申し訳ない。
こいつを振るうこともなく、あたしは終わるのか。
────なにが剣聖だ。あたしは未熟な小娘だ。
『極大魔力ゴーレム砲へ魔力注入開始! 魔力充填50%!』
コロン
破けた上着からパンが落ちた。アンパンだ。
先生と別れる前に1つ持たせてくれたんだったか。先生は本当にアンパンが好きだな。
『魔力充填100% 最終安全装置を解除! ゴーレム全乗員は衝撃に備えよ!』
アンパンを見ながらふと思う―――先生は諦めるだろうか?
たぶんだけど、あたしに対しては諦めも重要だと言ってくれるだろう。
でも、先生なら諦めないだろう。少なくともやれることは絶対する。
―――なら
弟子のあたしもやる!!
あたしは最後の気力を振り絞って立ち上がった。
聖剣を正眼に構えて、いまできる限りの【闘気】を集中させる。いつもならしっかり地に根を張る両足がガクガクと揺れている。ベストでないことはわかっている、でもそんんなことは関係ない。
『魔力充填120% 発射準備完了!』
「―――ふぅううううう」
今できる最大の斬撃を―――
『極大魔力ゴーレム砲!! 発射ぁあああ!』
闇の奥からあたしに近づいてくるゴゴゴゴゴという、轟音。
勝負だっ―――!!
――――――「剣技最大奥義! 一刀両断!!!」
渾身の虹の斬撃があたしの聖剣から放たれる。
闇の奥から現れた極大の衝撃波と正面からぶつかり、凄まじい炸裂音があたり一面にこだまする。
「クッ……」
―――押される
せめてこの一撃だけでも相打ちに! これを防がないと後方にいるナトル軍は全滅だ。
―――でも押される
全身の【闘気】をこれでもかと体中から無理やり練りこむ。意識も飛びそうだ。全身が震え始める。
ここまでか……
そう思った時―――
うしろからとてつもない斬撃が飛んできた。
ゴーレムの放った極大の衝撃波は、その斬撃により見事に真っ二つに裂かれていき。一瞬にして四散した。
「こ、これは……!?」
さらにあたしたちを覆っていた闇のスモークも真っ二つに裂けていく。暗闇が消えて光が戻ってくるではないか。その先にいたのは……
ああ、やっぱり来てくれた。先生……
□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□
いつも読んで頂きありがとうございます。
少しでも面白い! 少しでも続きが読みたい! 更新頑張れ! と思って頂けましたら、
作品の「フォロー」と「☆評価」(☆で称えるを3回押す)、各話「♡」で応援していただけると、作者の大きな励みとなります!
すでに作品フォローや☆評価、♡応援をしてくださっている皆様、本当にありがとうございます!
暖かいコメントをしてくださっている皆様、本当にありがとうございます!
めちゃくちゃ作者の励みになっております!
これからも面白いお話を投稿できるように頑張りますので、
引き続き応援よろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます