第14話 オッサン、なぜか決闘に巻き込まれる

「はっは~どうしたナトルの諸将たちよ! ぽか~んとしおって、さては吾輩の最強将軍オーラに絶句しているのだなっ!」


 うわぁ~なんか変な将軍来たよぉ。

 大丈夫か? 完全にみんな引いてるぞ。


「ふむ、お主がフリダニアの援軍か? 自信満々のようじゃが、そこまでの大軍を引き連れてきたのかのう?」


 そんな白けた空気が広がり始めた場だが、王様がフリダニアの将軍に問いかける。

 すると将軍はテラスの方へ歩いて行き、王城の中庭を指さしてはっは~と高笑いした。


「はっは~みよ吾輩の精鋭100名の兵士を!」


 たしかに中庭には兵士たちの姿があった。

 ビシッと整列しているかというと、そうでもない。

 というか起立していない奴もいる。

 もっと言えばあぐらをかいて居眠りしている奴までいた。


 ―――グダグダじゃないか!


 なにこれ、これがフリダニア王国の正規軍なのか?

 ぶっちゃけ俺と変わらなく見えるぞ。


「な、たったの100人!?」

「どいうことだ。フリダニアはナトルとの同盟関係を軽視しているのか!」


 周りがザワザワしはじめる。確かに100は少なすぎる。

 ナトルに侵攻してくるノースマネア軍は約1万ほどらしい。

 対してナトル側は絞り出して3,000だ。俺のような予備役も含まれる。


 フリダニアが先の戦争で敗北したからといって、100人しか出せないってことはないだろう。

 というか何を考えているんだ? ナトルを助けないとフリダニアも危ないんだぞ。先日フリダニア第一王女であるマリーシアさまの通信による「フリダニアのゲナス王子は山岳地帯に主力を集中する」というのは、どうやら本当のようだ。


「はっは~吾輩の精鋭が来れば十分であろう。それとも盟主フリダニア王国ゲナス王代理の決定に不服があるのかぁ?」


 ナトルとフリダニアは同盟関係にあるが、盟主はフリダニアである。

 実質、力関係はフリダニアが上だ。だが、この対応はあまりに酷い。


「ふむ……あいわかった。ヌケテル将軍、決戦当日は存分に働いてくれ、遠路ご苦労だったな」


「はっは~わかればいいのだ~。んん? 剣聖どのか!?」


 ヌケテル将軍の視線がアレシアを捉えた。

 彼はズンズンとアレシアの前に進むと再びその口を開いた。


「いや~もはや剣聖殿ではないか。はっは~こんな小国に身を寄せていたのか~なにをとちくるったか、昔の師を探す旅に出たそうだが」

「ヌケテル将軍、貴様には関係のないことだ」

「はっは~そうつれないことを申すな~、小娘のクセに調子に乗りおってからに。剣聖の称号を捨てるとは愚か者よのう~」


「黙れ! あたしには先生の方がはるかに大事だっただけだ! さあ、先生もう行きましょう!」


 アレシアが俺の手を取り、謁見の間から退出しようとする。

 が、ヌケテル将軍がヌッと現れて行く手を阻んだ。


「ヌケテル! なんの真似だ!」

「へぇ~そのオッサンがおまえの師か~~」


 ヌケテル将軍はニヤニヤしながら、俺を見下すように見定めてきた。


「おいおい~冗談であろう。こんなオッサンが剣聖の師だと~」

「いい加減にしろよ、先生はあたしよりもはるかに強い。貴様など相手にはしない!」


 ふむ、なんだか話がややこしくなってきたぞ。オッサンが出る幕はない。

 無理にでも早く去った方が良いな……


 バッサ~~~


 なんか、将軍がマントを脱いだ。バサッと。

 おい、まさかこの将軍露出狂とかじゃないだろな。


「はっは~、みよ吾輩の装備を!」


 露出狂ではなかった。彼は自分の鎧をみんなに見てほしかったらしい。

 たしかに将軍の鎧はピカピカと輝いている。銅や鋼ではなさそうだ。ついでに盾も同じく光輝いていた。


「おお! あれはミスリルの鎧! しかも全面ミスリルだぞ!」

「すごい、フルミスリルの鎧など、初めて見た!」

「盾もミスリルのようだぞ!」


 なんだか周りの貴族や軍人たちがザワザワ騒ぎ立てている。

 どうやら硬めの鎧らしい。たしかに豪華な感じは一目でわかる、高そうだな。俺の収入何か月分だろうか。


「はっは~凄いだろう~~これが吾輩の「ミスリルシリーズ」だぁあ! 金貨1万枚もしたのだ~~!」



 ―――うおぉおおお! 何カ月どころか、オッサン一生働いても買えないやつだった……高っけぇええ。



「吾輩の領民どもから~搾り取った税金全てをつぎ込んで買った一品なのだ!」


「ふん、民の努力をむしり取った金でなにを偉そうにしている! あたしの先生の前ではどんな装備だろうが無意味だ! たとえミスリルであろうとな!」


 アレシア~あんまり焚きつけないでよぉお。オッサンに何を期待してるんだ。


 しかしあの鎧……確かに高価そうにはみえるが……


「はっは~ならば勝負だ! そのオッサンを倒せば、剣聖殿は吾輩の女になるか~? グヒヒヒ~」

「はっ! いいだろうその勝負受けて立つ! ヌケテル、貴様など先生の足元にもおよばないぞ!」


 いや、全然良くないんだけど……



 どうしてこうなった?




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