34限目

「まさかエレガンスキャトルの3人もがやられてしまうなんて……ですがたとえ一人になろうとも戦わねば」


「心中お察しします、アリシア様」


「このエレガンスキャトルも残すところこの私、アリシア・バルバのみ……大見得を切って破れたミリョーネはあれ以来こちらに顔を出さず、カイナは芸術の道に目覚めたとキャトルを抜けて作曲活動に打ち込み、ルビィ様は修行をやり直すと休学されてしまった」


「大丈夫です、私もお力になります。まずはアーリャがジョブの力を使えないような状況で勝負をかけるべきです」


「キャレル……心強いわ。それなら学期末に行われる高貴な家柄の者のみで行われるダンス会『ローゼスフラッター』があります。これなら卑怯なジョブを使う事も出来ないでしょう……あの成り上がり男爵を適当に理由付けして招待しましょう」


「それなら私はアーリャが勝負を避けられないよう手を回します。前回の勝負は良いところまでいったので、今度こそ逃げられないようにしてやりますから」


「ふふふ、成り上がりの男爵風情が……束の間の勝利に浮かれている事ね。最後に勝利するのは高貴な血を持つ者のみと言う事を分からせてさしあげるわ!!」




「ん? アリシア様、誰か来ました」


「あら、何かしら? ミリョーネ……ではないようね」


「……」


「え?」


「……」


「な、何ですって!! 今年の『ローゼスフラッター』が中止ですって!? その代わりに王国のやんごとなきお方達を招いたパーティーが大々的に開かれる!? 主催者があの成り上がりの男爵家ですって!?」


「……」


「んなっ!? この、エレガンスキャトルが解散ですって!? このルームも今後使用出来ないなんて嘘ですよね!? いくら長年続いてきたからと言って在籍している人間が二家では維持は不可能!? そ、そんな馬鹿な事があって良いと思っているのですかぁ!!」


「そんなまさか、これもアーリャの根回し!? あの卑怯な小娘!!」


 学院四天王最後のひとりアリシア・バルバとの戦いは開始を待たず終戦。エレガンスキャトルも学院開校以来続いた長い歴史に幕を閉じたのだった。



□ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □ □



「よし、これで面倒の種を刈り終えたよ」


「お疲れ様です、お嬢」


 学園四天王だかわからないけど三人も続けてくれば四人目のバルバ家のご令嬢が来る事は明白。それならば彼女の家柄、特技を調べれば何を仕掛けてくるかわかるもんね。

 わざわざ向こうがやって来るのを大人しく待つ理由がないので先にこちらから手を打たせてもらったよ。


 四天王の集まりもそれをよく思っていない教師や生徒の意見を集め、人数が減った理由も合わせて学院に掛け合ってもらって解体出来たし、さすがにしばらくはちょっかいを掛けてくる事は難しいはず。


「もうすぐ春休みだから流石に領地に戻って色々やらないとだね」


「既にお嬢の指示の元、領地改革は進んでいます。進捗も随時手紙で送られてきていますので大きな問題は無いかと思いますよ」


「そうだよね~でも全く顔を出さないわけにはいかないからね。しばらくの間、まーくんと会えないのは寂しいけど行かないとだよ」


 そんなわけで春休みは私の領地 (仮)に戻って色々やらないといけないのです。休み中はまーくんもお城に帰っちゃうし、学院に残っても仕方がないからね。領地改革はもちろんわたしが直接現地でやらないといけない事もあるので……え? 何かって? それは向こうに着いてからのお楽しみだよ。


「早めにやる事を終えて実家にも帰りたいな……久しぶりに家族にも会いたいよ」


「それならば残りの学院生活を健やかに過ごすためにそろそろお休みしましょう。まだまだ授業もありますし、大げさに集めたパーティーの手続きもやる事は山積みです」


「は~い」




 ……こうして短い1年目の学院生活は恙無つつがなく終わり、わたしは自分の領地へ向かうのでした。




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