第三章 悪役令嬢VS学院四天王
17限目
「……と言う事で学院長からの懸念を我々が取り除いて差し上げなければいけない」
「その通りですわ。成り上がりの男爵風情が高貴な王族の方に近づくなど言語道断ですわ」
「我々の手で排除せねばいけません」
「そうだ、我々……エレガンスキャトルが不埒な輩に教えてやろう」
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さて、午前の授業も終わってお昼休みになった。今まではお昼は生徒が事前に準備していたお弁当を自分お教室で食べていたけれど、今日は学院の食堂……いわゆる学食の改装工事が終わってリニューアルオープンする日なのです。
事前にまーくんとも約束をしていたので、今日は初一緒にラブラブランチタイムなのです。
「どのように改装されたのか楽しみですわ」
「メニューも新しくなるとの噂ですし迷ってしまいそうです」
まぁ、二人っきりじゃ無いんだけどね。でもお友達と一緒って言うのも良いよね?
「それでは混み合う前に行きましょうか?」
「「はい」」
わたしの呼びかけにベスさんとヘレナさんは教室を出て学食に向かう。
やがて食堂に到着すると既に生徒で賑わっていた。わたしは辺りを確認すると後ろから声がする。
「アーリャ、こっちだ」
「マクシス様!!」
わたし達は声の主であるまーくんの元へ向かった。まーくんもお友達を連れているようで、いつも授業で一緒になる顔見知りだ。
学食はかなり広い作りになっていて、前世の学校のようなお昼休みと同時にダッシュで学食に行かないと席に座れないなどは無く過剰なほどのスペースが用意されていた。
……とは言え2階の眺めの良い席は限りがあって本来ならば早い者勝ちなのだが。
「そこは改装前からこの俺が使っていた席だ……どいてもらおうか?」
「なっ!! 学院では身分は関係ないからどく必要なんて無いだろう!!」
「そうだな、だが確かお前の父親は俺の領地で商売をさせてやっているだろう? この学院のこととは関係ないのだが、突然それが出来なくなったら大変だな」
「なっ、汚いぞ!! 親は関係ないだろう、親はよ!!」
「何のことやら……俺はただもしかしたら起こるかも知れない未来について語っただけだ。お前がどうするかは自由にすれば良い」
結果的にその生徒はすごすごと席から立ち上がる。ううっ、せっかくまーくんとのラブラブランチタイムだったのに嫌なものを見ちゃったよ。やっぱり建前上身分は関係なくても、こういう出来事は教室の外でも起こっているんだね。
「その必要は無い……ここは身分は関係ないし、学院外の外のことを持ち出して生徒の行動を強制するなど許されない」
「誰だ……ま、マクシス様!?」
まーくんいつのまに!? そしてまーくんはあっという間に貴族学部の生徒を説得して経済学部の生徒と仲直りませさせた。
「すまなかった……俺は余所へ行くからゆっくりしてくれ」
「いえ、良かったら一緒に食べませんか?」
「いいのか? わかった、ご一緒させてもらおう」
すごい、何をやったらこんなになるの? さすがまーくん。そういえば前世でも喧嘩した友達を仲裁してたっけ? ちょっと思い出して胸が温かくなる。
「素敵ですマクシス様、さすがです」
「本当ですわ」「私も感激しました」「さすがマクシス様だぜ」「感動です」
「そんな事は無いさ。同じ人間なんだ、誰だってわかり合えるものさ」
その笑顔にわたしの心は奪われちゃったよ。うっとり。うっ、さすがに良い匂いの学食で時間も経ってきたせいかお腹が小声で切なさを訴えかけてきた。幸い学食の喧騒でまーくんには聞こえなかったようで幸いだった。
「そ、そろそろわたし達も席を確保してランチタイム致しましょう」
「そうだな、俺もお腹が空いてきたよ」
「それでは何処に致しましょうか?」
「心配には及びません……マクシス様はこちらへどうぞ」
いきなりよく通る声が聞こえたかと思うと、その先には学食にはそぐわない豪華なブラウン色のドレスを着た女性が……生徒だよね? ……が立っていた。
「わたくしはミリョーネ・カルス。カルス伯爵家の長女にして……」
彼女はバッと芝居がかった両手を広げるポーズを取る。
「……学院の至高の存在であるエレガンスキャトルの一人ですわ!!」
どこからともなくチョコレート色のバラの花びらが舞い散った。
……うわ~面倒くさい予感がマキシマムだよ!
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