オルタネイト

清野勝寛

1



 なんかもう、とにかく色々ダルい。起きるのもメシ食うのも。人付き合いとかも当然ダメで、そんなんだからガッコ行くのなんてダルいオブダルい。キングオブダルい。

 それでも担任が「これ以上欠席が続くなら留年だ」とかぬかすから行かないわけにもいかなくて、じゃあ行くかーって着替えたのが昼十二時丁度。


「またお前か恒光夏蓮……」

 やば。めっちゃ肩震えてる。教室着いたらもう五限が始まってて、生徒指導のゴトーが授業してた。やっちゃたなー忘れてた。

「お前舐めてんのかこんな時間に学校来るとか」

「あー、いや―、舐めてるとかじゃなくて……起きれんくてというか、だる……」

 肩から大きく息を吐いて、ゴトーは板書を始めた。

「言い訳はいい。お前のことはこの授業が終わってからだ。さっさと座れ」

「あーい」

 席に座ると、前後の仲間達がバカお前時間考えろよとか、また夜中まで漫画読んでたんかと冷やかしてくる。まー大体そんな感じと答えると、お前ヤバすぎとか言ってにやにやされた。いやいや、あんたら今日ゴトーの授業があるから来てるだけっしょ。とは言わずにとりあえず、授業受けてるフリを始める。ゴトーがなんか呪文みたいなことを皆に話し始めると、だんだん意識が遠のいていく。チョークが黒板を叩く音。皆がノートにシャーペンを走らせる音。椅子が軋む音。全部があたしの睡眠を促していく……やばー……くっそ眠……。



「こら! 恒光!」

「あひょいっ!?」

 耳元で爆音が響き、飛び起きる。その勢いで膝を机の裏側に思いっきりぶつけた。

「あーいってー……」

「お前いい加減にしろよ! 昼にノコノコ悪びれもなく学校に来たと思ったら、そのまま授業全部寝てるとかよ! 舐めてるだろ! あぁ!?」

 起きたらその場でいきなり説教。寝起きの頭に、ゴトーの声がガンガン響く。カンベンして欲しい。

「しかもこれ何度目だ! 高校生にもなって、そんなんで社会で通用すると思ってるのかお前っ……! ああ!?」

 教科書で机をバンと叩かれる。クラスメイトはいそいそと教室から出ていった。六限は移動教室だ。

「……うす」

 そんなこと言われても分からんよ。社会のことなんてドラマと漫画と映画に出てきたことくらいしか分からんし。

「……お前、全然反省してないな? 自分が悪いことしてるってことが、分かってないよな!?」

「あー……や、そんなことは、まぁ……?」

 また、教科書で机を叩いてから、その教科書をあたしに突き付けて叫んだ。

「次の中間で赤点が一つでもあったら、留年だからな! 覚えておけよお前!」

「え、いやそれはマジ無理……」

「うるさい、いいか忘れるなよ。冗談じゃないからな! いつもいつもふざけた態度でお前は……」

 なんだよそれ、マジむかつく。だって普段テスト全部一桁とかだよあたし。実質お前は退学だって言ってるようなもんじゃんか。死刑宣告だよそんなん。あんまりだ。ちょっと学校来るの遅れただけで? そんなことに出来るの? あたし別に窓ガラス割ったりとか、校舎にバイクで乗り込んだりとかしてなくない? なのに留年とか、マジない。

「どうしました、後藤先生?」

 いつの間にか教室内には誰もいなくて、声がした方を見ると、前の扉の方から恐る恐る担任のサトーがこちらを覗き込んでいた。

「……丁度良い、佐藤先生。貴方にも責任がある話だ、こっちに来なさい」

「はぁ」

 笑顔が引きつってるぞ先生。サトー先生は学校の中では結構若い方の先生で、真面目なスポーツマンって感じ。若いからかは知らないけど、どんな先生にも大体ペコペコ頭下げてるイメージ。部活とかって、ネンコージョレツ? で厳しいって話を(漫画で)聞いたことがあるから、それって大人になってもなんだって、ちょっと可哀想。だって、入れ替わりで入ってくる先生とか含めても、若い人って少ない気がする。皆ゴトーくらいの歳じゃない?

「……ということで、中間テストで赤点があったら進級させませんので」

「えぇ、そんないきなり……!」

「いきなりではありません! ……とにかくなんとか状況が良くなるよう、彼女に指導ください! では!」

 サトー先生の話を聞かず、ゴトーは早歩きで教室を出ていった。残されたあたしとサトー先生は同じタイミングで溜め息を吐いた。ついでに予鈴のチャイムも鳴った。

「……あのな、恒光。勉強が出来ないとか、そういうのはある程度仕方ないことだと……いや、本当は良くないんだけど。やっぱり決められたルールは守らないとダメなんだ。先生がもし授業の時間になってもいつまでも教室に来なかったらどう思う?」

「んー……腹痛いんかな、とか思う、かも?」

 あたしがそう言うと、サトー先生はまた大きな溜め息。

「そうだな、それが分からないから、お前はそうなんだよな……まぁ、とにかく。ゴトー先生は前からお前のことについて随分悩んでいたから、もしかしたら本気で留年させる気かもしれない。だから、今回のテストだけでも頑張ろうな」

 えー。

……えぇー……?



そんなこと急に言われても困る。勉強とか中学生になる頃には完全に諦めたし。英語は全部ミミズ文字に見えるし、使わない漢字は覚えらんないし。計算は九九で終わったし、歴史とか、あたしは今を生きてるし。

 中間まではあと一か月ちょっとくらい。どうしようあたし……。

……もうだめだぁ。おしまいだぁ……。


「――ってことでぇ、ミネギシさぁん、助けてよーぉ」

「えぇ……」

 で、あたしが泣きついたのが去年の年末テストで学年一位だったミネギシさん。真面目クン(この場合は真面目チャンか)が良く使ってるレンズの分厚いダサ眼鏡を掛けて、休憩時間とかお構いなしにずっと勉強してる人。机に向かっていると肩まである真っ黒な髪で顔がどの角度からも見えなくなる。

 そんな人だから普段絶対喋んないタイプなんだけど、だってあたしの仲間なんて皆類友よ? むしろあたしのがまだマシってくらい。マジ理不尽。

「ね、そう思うでしょ?」

「はぁ……まぁ……」

 イマイチ煮え切らないミネギシさん。つか、こういう人らはどうしてウチの高校受けたんだろ。もっといい学校受けたら良かったのに。そう聞いたら、学校推薦で大学に行けるようにとか言ってた。あー高校受ける時もいたなぁ、スポーツ特待生がどうとかってやつ。いいよなぁスポーツ出来る奴はさ。だって勉強する必要ないんだぜ。スポーツだって、自分が好きなものだろうし、好きな事だけやって学校にも入れて、羨ましい。

「いえ、推薦と言っても試験は受けるんですよ。大学によって色々指定があるので」

「ほぉーん……? でどーなのさぁ、教えてくれるの?」

「そうですね……実は、私放課後は用事があって時間があまり……」

「ええーマジかよぉバンサクツキタじゃーん……」

 よく意味は分からないが、ピンチの時こう言うらしい。テレビでそんなことを言っていたのを思い出したので使ってみた。もう諦めて学校中退して仕事探すか……。

 ああ怠い。頭痛い。悩むのとか一番怠い。つか別にそんな人並みで生きることにこだわる必要ないんだよな。何かやりたいことがあるわけでもないし、だからって没頭する趣味もなし。大学に行くつもりも、真面目に働くつもりもない。

 ……これはマズイ、完全にクズの発言だなぁ。でも、本心だし。こんな感じでだらだらと高校三年間過ごすくらいだったら、とっとと辞めて働いて……って。

「……ってごめん、あたしヒトリゴトばっか」

「……あ、そういうことなら……恒光さん、私の用事を手伝ってくれませんか?」

「へ?」

 閃いたとばかりに両手を胸の前でパンと合わせて、急に笑顔になったかと思うとそんなことを言った。いきなり言われても困るんだけど。や、あたしも人のこと言えないんだけど。頭の良い人が考えることはよくわかんない。

「ええと……じゃあ、手伝ってくれたらその後勉強、教えてあげられます」

「え、あたしもなんかすんの。なんで」

 あたしがさっきより困った顔をするのに合わせてミネギシさんもどんどんテンションが上がっていく。え、なにこの人。怖い。

「実はちょっと、人手不足でして……恒光さんみたいな元気な人に来て貰えたら絶対お店の人も喜んでくれるとなぁと思って……」

「え、なに。つかバイトしてんの?」

「……お手伝い、です」

 少しだけボリュームを落として言う。そんなにこやかに言われてもなぁ。ウチの学校は今時珍しい、バイトが全面禁止の学校だったりする。優等生のクセに上手いことやってるなぁ。え、つうかヤバい。マジか、怖い怖い。昼間勉強で夜仕事とか、現代の若者としてどうなの。いつ遊んでんの。

 まぁそれは置いておくとしても、あたし仕事覚えられないと思うし、役に立たないと思うんだけど……。

「大丈夫ですよ、簡単なお手伝いですから。手伝ってくれたらそのお礼に勉強、お金も手に入って一石二鳥じゃないですか」

 どんどん前のめりになっていくミネギシさん。あたしはどんどんそのテンションに引き気味になっていく。んー、悪い話じゃあないんだろうけどさぁ。さっき高校辞めて働いてとか言ったけどさぁ。いきなりこのだらけた生活から変われるかなぁって。

……や、教えてとか言っといて何言ってんだよって話なんだけどさ。

「とりあえず今日だけお試しでやってみましょう。無理そうならそう言ってください」

「へ、へい……」


 そして放課後。

 結局ミネギシさんの押しに負け、駅前の商店街に向かう。夏休みが終わったばかりでやる気はないし、まだまだ外は暑いし、何より怠い。一方で隣を歩くミネギシさんは横から見ると背筋がピンとしているし、重たく見える黒髪が太陽に当たって超熱こもってるっぽいのに、涼しい顔してる。汗も掻いてない。きっと特別な訓練を受けているに違いない。そうに決まってる。

 ついでにバイトの事を聞いても、着いてからのお楽しみとか言って教えてくれない。

「さぁ着きましたよ」

「ここって……え、花屋?」

 正解というと、ミネギシさんは店の奥に入って行っちゃった。ここ、あたしも年一で母の日とかに来たりしてたんだけど、そっか、ここで働いてたのか……知らんかった。多分この辺一帯、なんか謎の開拓? が進められたり止まったりしていて、古い建物と新しい建物が混ざってごちゃごちゃしてる。そんなだから地元民以外あんまり近寄らない。そりゃそうだ、都心はすぐそこだから町を練り歩くにしたってこんな小規模な所よりもっといい所あるだろうし。あたしとかその仲間達……うちの高校通ってる奴らだったらまだ利用価値はあるだろうけど。近いし、安いし。

 で、花屋の話に戻るんだけど、大通りから一本中に入った所にある。見た感じはあんまりキレイじゃないボロ家。なんだけど、花屋って多分この辺にはここしかないから、日本人が花を送りたくなるシーズンになると決まって混雑する。あたしも来たことあるような。

 あーお店の人どんなだっけなー、店構え的に長いことやってそうだし、おばあちゃんとかだったかなーそれにしてはいい匂いするなー。

「残念、おばあちゃんは引退して、今はアタシが店長だよ」

「え」

 腕を組んでうんうん考えていたら、隣からエッジの聞いたイケボが聞こえてきた。顔を向けると、目がキリッと吊り目でおっかない印象のお姉さんが笑顔で立っていた。その脇には仕事着なのか、お姉さんと同じエプロンを白シャツの上から着ているミネギシさん。

「あんたが、柊子の言ってた新人さんってことでいいんだよね?」

「へ、えと、いや、あの……」

 もの凄い威圧感。ミネギシさんとは違う圧力を感じる。怖い。肩に置かれた手に、ずいぶん力が入っているように感じるんですが逃げるなってことですかね。

「要さん、あんまり脅かさないであげてください。そんなだから入った子すぐやめちゃうんですよ」

 ミネギシさんは何やら小さい小箱を運びながら店長っぽいこの人……カナメさん? を嗜めた。カナメさんはわざとらしく首をすくめてから、あたしを一瞥する。

「ま、細かいことは後にして、早速手伝ってもらおうか。あんた名前は?」

「えと、ツネミツカレンです……宜しくお願いします……」

 カナメさんは働かせる気満々だ。その後ろで何やら包装をしているミネギシさんがにこやかな笑顔をこちらに向けている。くそー良い笑顔見せやがって。そんな顔学校じゃしないくせに。

 それから数時間、花の包み方とまとめ方、それから今時分に人気の花を教えてもらった。花なんて全く興味なかったし、なんか独特の変な匂いがするからあんまり好きじゃない。吐き気がするとかそこまでじゃないんだけど、あんまり吸ってられない匂い。


 一先ず最初に命じられたのは包装紙のロールを専用の木の棒にセットしていく作業。花束をラッピングする為の包装紙のロールが腰の高さくらいにあるよくわかんない木の棒にセットされているんだけど、今そこにセットされているものを抜いて、新しいのと交換しなくちゃいけないらしい。怠い。なんでもそこにセットしておけば、テーブルの上にある線まで紙を引っ張るだけで、丁度良い長さに出来るそうだ。結果、作業中にバタバタしないから、花を傷付けないですむんだってさ。あったまいーよなー。

 包装紙は色々とりどり、全九種類。他にもリボンとかフィルムとか色々あるらしいけど、良く分かんない。飾り付け用かも。ロールの長さはあたしの腕よりちょい長いくらいだから……五十、六十センチ? とか。季節とかで紙を変えるらしく、丁度切り替えの時期ということで作業させられた。数本だしチョロいだろーって思ってたらこれが意外に重労働。ロールは重いし、木の棒のサイズがロールの穴サイズと一緒過ぎて上手く入らない。だんだん怠くなってきた……。

「恒光さん、以外に器用なんですね」

「え!? え、なんで」

 なんて思ってたらいきなりミネギシさんが話掛けてきてびっくりした。もう一時間くらいになるけど、ミネギシさんずっと花に水やりとかお世話? してる。まさかとは思うけど、幾ら狭いとはいえ、この店の花全部の世話をしてるわけじゃない……よな?

「まず包装紙の穴の縁に歪みがない。もし固定台へのセット時に力任せに挿し込んでいたらここに歪みや傷が入ってしまいます。最初の頃、私はよく失敗して要さんに怒られていました」

「お、おぅ……」

 昔を懐かしんでいるのか、楽しそうにミネギシさんは言った。いつの間にチェックしてたんだこの人。

「そして、包装紙を包んでいたこの梱包用の紙、テープを途中で千切らず、且つ紙の方に傷が入らないように剥がしている。この梱包紙は傷付けても問題ないものなのに、わざわざ丁寧に剥がすなんて、普段から几帳面なんでしょうね」

「そ、そんなことねーし、今日は、その、ちょっと……緊張してて」

 あれ、なんで褒めてもらってるのに反論してるんだあたし。つか普段怒られてばっかだからそーいうのちょっとハズい。やば、顔あっつい。

「そして正直なひとりごとがダダ漏れ過ぎる、と」

「えぇ、またなんか言ってた!? クセなんだよこれーなんか治んなくて……ってもういいっしょ! 恥ずかしいから本人の前で冷静な分析しないでよ!」

 ミネギシさんはあたしが困ってる姿を見てますます楽しそうに笑った。人は見た目によらない。この人絶対どエスだよ……。


 そんな感じで時間にすると二時間くらい、ミネギシさんと仕事をした。いや怠い通り越して辛かった……。立ちっぱっていうのがもうキツイ。膝とか腰とかすっげー痛い。それで、いつの間にか姿を消していたカナメさんが店の奥から出てきて、おうお疲れーとか言ってる。この人自分は働かないのか……。

 ミネギシさんがお疲れさまですと返したのであたしもそれに続いて応えた。

「よぉカレン。どーだった?」

「や、想像してたよりしんどいす……」

「だろ、花屋も色々大変なんだよ」

 や、あんた何もしてないじゃん……と、危ない。またひとりごとが漏れるところだった。

「素晴らしい働きぶりでしたよ恒光さん。私より力もあるみたいだし、即戦力です」

「いやいや……持ち上げないでよミネギシさん……」

 ミネギシさんが調子のいいこと言ってる。あれ、そういえばこの仕事時給幾らなんだろ。なんか色々何も聞かずに働き過ぎた。ブラックだったらどうしよう。

「いや、柊子が人をそんな風に褒めるのマジで珍しいから。これは今後の働きに期待だな」

「え、いやあたしまだ……」

「はい! 明日も宜しくお願いしますね、恒光さん。それじゃ約束通り、この後テスト勉強、見てあげます」

「え、えぇ……」

 あ、ヤバい。この組み合わせはヤバい。何も言い返させるつもりがない。やっぱりブラックかも。ごり押しだもん。聞いたことある、段々仕事の日を増やしていって、それが当たり前になるように仕向けるって。つかそうだ、この後勉強教えてくれるって話だった。うわどうしよ大分怠い。メンドクサイ。

 いやでも、ここで怠いからって帰ったらタダ働きみたいなものだしなぁ……。

「それじゃ、後はお願いしますね、要さん。お先に失礼します」

「あいよ、頑張って。カレンも」

「う、うす。お疲れっす……」

 外はすっかり日が暮れて、いつ設置されたんだかわからない外灯が申し訳程度にあたしらを照らしてた。いっつも全然気にしないそれにどうして気が付いたかというと、怠過ぎて歩く時に顎が上がってしまうからだ。ゾンビ歩きとでも名付けようか。

「どこでやりましょうか。私、普段は家でしか勉強しないので、こういう時何処が適切なのかいまいちわからなくて」

「あぁ……どこでもいいけど……」

 この人の普段とのギャップにも大分慣れてきた。こっちが素で、普段のあれは猫をかぶっているんだ、この人なりに。あたしの知ってる猫かぶりと大分違う。女が猫かぶるって言えば、普段の声よりちょこっとだけ声を高めに作って、語尾をちょっと緩くして、相手の視線より下に顔がくるようにして上目遣いで男の体に自分の体をそっと寄せる、みたいな奴。

 あたしも高校入学当初は皆に合わせてそんな感じでやってたけど、だんだん怠くなってきてやんなくなった。怠いのはマジで無理。なのに今あたしは、自ら怠さの極みに足を突っ込んでいる。意味がわかんない。

「あ、それじゃあファミレスへ行きましょう。私、前からドリンクバーというのをやってみたかったんです」

 目をキラキラさせてミネギシさんは言う。そしてあたしの意見はもうどうでもいいのか、何か夢を語りながら歩いて行ってしまう。

「え、ちょっと待って……今時ドリンクバー初とかあり得るの」

「はい、外食をしたことがなくて……ご飯は家か、要さんの所で頂いてしまうので」

 そんなセレブみたいな人、いるんだ。なんか一周回ってかっこいい気がしてしまう。でも正直別に大したものじゃないからあんまり期待しない方がいいと思う。だってあれって普通のジュースとかお茶を更に氷とか水で薄めて出てくるだけだし。三百円くらい取られるけど、実際一杯何円なんだろうってレベルで味しないし。まぁ、場所はどこでもいいし、それくらいなら全然奢れるし、安く済むならそれでいっか。

 一人で納得してミネギシさんに追いつき隣に並ぶ。ミネギシさんの目は、どんどんキラキラ輝き出して、星空みたいに見えなくもなかった。


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