伯爵位最強

 俺達が付いたその時、すでにこのダンジョンにおける悪魔と人間の戦いは決着がついていた。


「ウチの勝ちやで」


「参ったね。ぼくの負けだよ」


 巨大な斧を持ったメイドの首筋に俺もよく知る召喚士の日向さんが剣を突きつけていた。あれ、あの人ゴリゴリ拳で戦うタイプの人だった気がするんだけど。


 いや、違うわ。あれ『魔王武装』だな。なんで日向さんがそれを使えるんだ?


「うん? 夜見!? なんでここにおるんや!?」


「あ、それはですね……」


 日向さんは悪魔に突きつけていた剣をしまい、こっちの方に来た。万一悪魔が暴れたらどうしようかと思ったが、あの悪魔はおとなしくそこで待機していた。


 というわけで、俺は今までの事をいろいろ説明した。ちなみにこの時に気が付いたが、日向さんの目が金色になっていた。俺の左目と同じである。


 つまり、日向さん、魔王になってました。


 魔王は種族とか職業になることもある概念的な物の一つだ。特徴として、目が金色になるというものがある。魔王になると『魔王武装』が使えるようになるが、魔王としての格が上がると、それが『大魔王武装』に進化する。


 俺の前世はそれに至るまでの強さを持っていた。まぁ今の俺が使えるのも『大魔王武装』だけどね。


「話を聞く限りやと最後のダンジョンにはまだ言ってへんねやろ? ここはまぁウチが解決したし、はよ次いきや。詳しい話は来週会うときにしよや」


「そうですね。ではまた会ったときにお話ししましょう。先を急がせてもらいますね」


 というわけで皆に話して先のダンジョンに向かうことにした。


 転移する直前、メイド服の女性ともう1人のアイドルのような服の女性が日向さんに手を振りながら黒い穴の中に消えていくのが見えた。あのアイドルっぽい服の人、おそらく悪魔公爵だろうし、挨拶しておけばよかったかな?


 そしてやってきたのは最後のダンジョン、博多ダンジョン。ここでも犠牲が出なければ、完全に犠牲なし、しかも数名が覚醒したっていう最高の状況で全てを終える事ができる。


 状況はどうだ?


「皆結構いい筋してる。そこの君、えーと、里中君だっけ。君はもうちょっと魔力の偽装を工夫した方がいいかも……。案外魔力の集まりで魔法の発動ばれてるから。遠山君は……パワー不足かな。速度もいいけどもう少し威力が欲しいかも」


「押忍! 『閃光槍』!」


「くっ! 終わったら筋トレだなっ!!」


 えーと……ここだけなんか普通に授業してるんだけど……。金髪碧眼、誰が見ても息をのむような絶世の美少女が、Sクラス二人にアドバイスをしている。Sクラス二人の攻撃を軽々と素手で弾きながら……。


 マジでどういう状況なんだ。というか、ここまで皆悪魔だったのに、このダンジョンだけ悪魔じゃないのかな? 悪魔の特徴である深紅の瞳や、角が彼女には確認できない。


「うん、いいね。反復練習してけば強くなれる。才能より努力だね。……ごめんね、少し、いいかな」


「なんでしょうか」


「ん?」


 完全に二人が生徒のようになってる。というか、あの美少女、こっちに気づいたらしいな。


 ゆっくりとこちらに歩いてくる。


「えーっと……彼と二人きりにさせてもらえたりしないかな?」


 その言葉にウェスタとレイナ、そして鈴音が反応した。


「主殿をどこの者とも知れぬ奴と二人きりになどさせんのじゃ」


「申し訳ありませんが、主様は私達が守ると決めていますので」


「女の子と二人きりになんてさせるわけなくない?」


 ……鈴音だけなんか違う。


「まぁそうだよね……。じゃあ悪いとは思うんだけど少し手荒に……『虚空・転』」


 その時、その少女が発動した何かによってこの空間にいた皆がほぼ同時に気絶した。Sクラス探索者たちも鈴音も、そしてウェスタもレイナも。


 ……何をしたんだ? 生きてはいるみたいだけど……。


「私と同じ力を持つ私の王子様。是非、私と一度戦って?」


 この美少女の所望は俺との闘いらしい。なんか皆が起きたら怒られそうな気もしないでもないけど、今は俺も元の力をどれくらい使えるか試したい。


 一度、戦ってみるとするか。


「わかった。俺も本気で戦わせてもらう」


「楽しみ」


 まずは手始めに……。


「『大魔王武装スペシャル・アーマメント』」


 俺はまず初めに『大魔王武装』を展開。俺の左腕に豪華な装飾がなされた腕輪が現れる。


 この腕輪が俺の『大魔王武装』。名は『降臨の腕輪アバント・ブレスレット』。単純な身体強化系の『大魔王武装』だが、この強化範囲はぶっちゃけ

頭がおかしい。ステータスが全体的に大体200万から300万くらい伸びる。


 大魔王の名にふさわしい壊れ具合である。


「じゃあ私も見習うね。『魔王武装アーマメント』」


 彼女も彼女で能力を発動する。『魔王武装』、ね? こいつ魔王か!!


 彼女の目の前に一本の槍が出現したその時、彼女の目に変化が訪れる。


 右の瞳が金色、左の瞳が赤色に染まる、左右は違えど、色は俺と同じだ。


 つまり……。悪魔で、魔王というわけだ。


「伯爵位最強の悪魔ビエラ。全力で戦わせてもらうね」


 伯爵位最強……。一体どれくらいの力で倒すことができるかな……?


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る