記念閑話【ネタバレ注意】『社長とSクラス』
ダンジョンウィンド社。それはダンジョンができてすぐ、日本で立ち上げられた会社である。創業から数年にして、世界でもっとも有名な会社となった世界でもっとも現実見のない商会だ。
その本社ビルの最上階の一室。とある1人の女性が窓から街を見下ろしていた。そこに、1人の女性が勢いよくドアを開けて入ってきた。
「きいて! 私コラボ配信することになったよ!」
「コラボですか? あなたが?」
窓から街をみおろしていた女性はダンジョンウィンド社の代表取締役。今は昼の休憩中だった。客人の対応ということで、その女性は椅子に座って客人の方を見る。
「そうだよ! 相手は私とおんなじくらいすごい勢いで人気になってるグループなの!」
「まぁいいんじゃないですか? ……あの二人とコラボですか。鈴音には荷が重い気もしますね。加護、かけておきますか」
「反応うすーい!」
後半の呟きが聞こえていなかった鈴音という客人は薄い反応に対して少し腹を立てる。
「まぁ決定してから言われても私には応援することぐらいしかできませんしね。仕方ないでしょう」
「確かにそうだけど……」
正論を返され鈴音は頬を膨れさせる。拗ねているらしい。
「まぁそんなに怒らないでください。珈琲とお菓子ありますよ」
「わーい!」
拗ねていたはずの鈴音は一瞬でものに釣られた。鈴音は近くのソファーに腰を掛けると、珈琲とお菓子を待った。
「こちらをどうぞ」
女性は珈琲とお菓子をもって鈴音の向かいのソファーに腰を掛けた。中央の机にとても高価な珈琲とお菓子が並ぶ。
「いつもありがとーリンちゃん!」
「どういたしまして。さぁ、食べましょうか」
二人はまず珈琲を口に運んだ。ブルーマウンテンという銘柄の珈琲だ。これは鈴音が最も好むものなので、社長室に常備されている。
「うん、おいしいね」
「まぁ私が淹れましたから」
「さすが!」
珈琲を置いた二人はお菓子をつまみながら雑談を始めた。
「しかし、あなたも強くなりましたよね。あったばかりのころはBクラスぎりぎりのところでしたのに」
「リンちゃんが修行つけてくれたおかげだよ~。Sクラスになってもまだまだ全然勝てそうにないけどね~」
鈴音がこうして定期的にこのダンジョンウィンド社の社長室に足を運ぶのも、女性と戦うためであった。
「まぁ私はちょっとずるしてますからね。まだまだ負けませんよ」
「そろそろそのずるの内容教えてくれてもいいんじゃな~い?」
鈴音のその言葉を聞いたその女性は少し考え込んだ後に口を開いた。
「いいでしょう。じゃあ今日私の強さの秘密を半分だけ教えて差し上げます」
「おお~!」
女性の言葉に鈴音が拍手をする。と、同時に社長室のドアがノックされる。
「入って構いませんよ」
女性がそういうと、1人のスーツ姿の女性が中に入ってきた。
「魔剣制作部から依頼です。何やら魔剣とは性質の違う特殊な剣ができたそうです。社長に調査をお頼みしたいと」
「聖剣ですか……。そうですね、その剣を打った社員は昇給させましょう。後で直接そのものに会いに行くのでどなたかだけ教えてください」
すぐに剣を打ったものの処遇を決めた女性はそのものの名前を尋ねた。
「久蔵 竜馬という方です」
「わかりました。あなたもご苦労さまです。下がっていいですよ」
「はい、失礼しました」
スーツの女性が出ていくと、女性は鈴音に声をかけた。
「で、なんの話でしたっけ?」
話の内容を忘れたかのように。その態度に鈴音は頬を膨れさせながら先ほどの話の内容を伝える。
「ずるの内容! 教えて!」
「冗談ですからそんなに怒らないでください。では今から話ますね」
苦笑を浮かべた女性は鈴音に秘密の内容を語り始める。
「まず私の職業について、お教えしましょう」
「そういえば聞いたことなかったね」
「私の職業は『女王』です」
初めて聞いた職業に鈴音は目を見開く。
「そんな職業があるの!? 聞いたことないよ!」
「あなたの職業だって他人が聞けば驚くものでしょう。そう大げさに反応しないでください?」
俗にいうおまいうである。
「ま、まぁね。ところでその職業、どんな能力があるの?」
「部下、配下と認識するものの得た経験値を自分も得ることができます」
内容を聞いた鈴音は驚愕した。女性は世界で最も有名で大きな会社のTOP。一体どれだけの部下がいるのか。
「確かに、それはずるだね……」
「まぁステータスの詳細は教えられませんが私は神宮寺さんよりもざっと30倍くらいは強いと思っていてください」
日本どころか世界でもっとも強い探索者、神宮寺裕翔の30倍の強さ。それは鈴音を絶句させるには十分な情報だった。
神宮寺裕翔は、鈴音の力が10倍になってようやく戦いになるレベルの人だ。それが、目の前の女性の30分の1とは、到底信じられなかった。
「そりゃ私も勝てないわけだね。というか差をつけられる一方?」
「そうですね。今この瞬間も私は経験値を得ていますから」
なんでもないことのように告げられたその言葉に、鈴音は絶句した。
◆◆◆
リン「さぁ、私は先例を示しましたよ。勘がいい人なら彼の計画に気が付くでしょうね」
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