閑話『炎竜王と死霊王―其之壱―』
全く見えないと宗次郎がごねているその時、ウェスタとレイナは互角の戦いを繰り広げていた。
レイナが呼び出した鎌の闇をウェスタが剣の炎で打ち消していく。そして、ウェスタは加速し、レイナに向かって剣を振りぬく。
レイナはそれをかなり大きく回避し後方に飛んだ。ウェスタはレイナの様子に言葉をかける。
「なぜ避けたのじゃ? 霊体なんじゃから物理攻撃はあたらんじゃろ?」
「とぼけたことをおっしゃいますね。ウェスタさん、その剣の魔力、私の魔力波長に合わせてるでしょう? それは当たりますよ」
レイナは死霊王らしく、霊体であり、通常の攻撃、魔法は彼女に一切命中しない。しかし、対処法も存在し、レイナの魔力波長に合わせた魔力波長で攻撃することによって霊体をとらえることが可能だ。
「なんじゃ、気づいておったか。続きと行くかの!」
ウェスタはその輝く剣の火力をさらに上昇させ、レイナに接近しようとする。その瞬間にレイナの足元から湧き出した闇がウェスタを攻撃した。
「ちっ鬱陶しいものじゃ! 『
ウェスタは闇の魔法を避け、後方に飛びながら炎の魔法を地面に向かって発動する。ウェスタの手から炎が湧き出し、その炎は地面を這い、爆発しながら闇を吹き飛ばす。
「さすが炎竜王のウェスタさんですね。ブランクがながくてとても勝てそうにありませんよ。『
ウェスタの周りに闇が形作る監獄が現れた。この監獄は低位魔法で、実をいうと闇系に適正がある宗次郎ならすでに習得可能なほど簡単な技だ。
「なんじゃ、こんな低位魔法なら儂でもすぐに……なるほど」
ウェスタは続けて魔法を発動しようとするレイナを見て合点が行ったようだった。
「『
ウェスタが監獄を破る直前、その監獄は深淵と接触し、闇の奔流を生み出した。その奔流の上空でウェスタは息をついた。
「あと速度のステータスが10万低ければ当たっていたのう。まぁ当たらなければもんだいなしなのじゃ。『
ウェスタは炎で自身の速度にブーストをかけ、もはや音速の10倍すら超えたであろう速度でレイナの背後に回る。そしてそのまま『光焔の剣』を振りぬくが、レイナが背後に回した『九皐の鎌』で止められる。その時、レイナは一瞥すらしなかった。
「なるほど、闇にも視野があると考えてよさそうじゃな」
ウェスタは今気配と魔力を遮断して移動していた。それでも気づいたということは、つまり後ろに目があるか、その他視覚を得ることができる方法があるというわけだ。
「いい予想ですね。まぁ少し違います。闇の空間さえあれば私は五感すべてを広げることができますから」
「ふーむなかなか便利な能力じゃな。じゃが、とらえられぬほど早くうごけばよい話じゃ!」
ウェスタはさらに速度を上げて動き、今度はレイナの上を取る。
「さすが、早いですね。でも私も反射神経には自信がありますから」
「っ!?」
レイナはウェスタのかかと落としを回避し、鎌を振りぬいた。もはや回避は間に合わない。ウェスタは最速で魂装を解除し、腕を変化させ、爪での防御を行った。ウェスタの体で最高硬度を誇る部分は爪と角である。鎌での攻撃は問題なく防ぎ切った。
……はずだった。
「ぐっ……その鎌……」
本来ならばありえないそのダメージにウェスタは膝をつく。
膝をつくウェスタの前でレイナが解説する。
「そうですよ。この鎌は魂に直接攻撃を行います。防御できるのは魂装だけです」
「なるほど……そういうことじゃったか……」
ウェスタは膝をついたままレイナの話を聞く。
「まさか、これで終わりではないでしょう?」
「ふっまぁそうじゃな。これぐらいでは終わらんよ。主殿を守るものとして戦う責務が儂にはあるのじゃからな」
ウェスタはその言葉と同時に魂装を顕現し、立ち上がる。
「いや、まぁ主様を守る責務なら私にもありますけど」
「今いいところなんじゃからじゃまするでない」
一気に茶番感が増した戦いはついに終盤となる。
「それに…………やはり、運命は儂の味方のようじゃぞ?」
「急に何を言い出すんですか? ……いや、これはっ!?」
ウェスタが持つ光輝の剣、魂装が変質していくのにレイナは気が付いた。ごく稀に、魂に何らかの変化が起きた場合、魂装が変質する場合がある。
それが今、このタイミングで発生している。否、ウェスタが可能性をつかみ取り、発生させたのだ。
ウェスタの持つ剣は霧散し、そして黄金のオーラとしてウェスタの周りを纏う。
「……まさか、この年になってまで成長できるとは思わなかったのじゃ。感謝するぞ」
「何勝った気でいるんですか? 勝負はまだまだ、これからでしょう!」
レイナが鎌をウェスタに向けて宣言したその瞬間、すでに、ウェスタはすでにレイナの隣に立っていた。
「続けば、そうじゃな」
ウェスタの拳がレイナの腹部に直撃し、レイナが壁までふきとばされる。
一方そのころ、宗次郎はのんきにスマホを眺めていた。
「うお、なんだ?」
レイナが壁に激突したときの衝撃で宗次郎は一瞬だけ結界の外を見て、そしてすぐに手元のスマホに視線を戻した。
◇◇◇
??「特段質問があったわけではありませんが、少し耳寄りな情報をお伝えしに参りました。現在スマホをいじっている宗次郎ですが、チャンネル関連のお仕事をしています。と言うことで、ダンジョンから帰ったら次は配信回です。 ぱちぱち〜」
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