突撃庭ダンジョン

 俺たちは今、自宅の庭にできた遺跡のようなダンジョンの入り口の前に立っている。必要な準備は昨日のうちにすべて終わらせている。買い物をしていて空間収納の指輪をもっていてよかったと思った。マジでなんでも入るからな。ウェスタ曰く亜空間では時間も経過しないそうなので、いろいろな食品などもぶち込んでおいた。


 亜空間にある資材だけで2か月はしのげると思う。それほどまでに多くの物資を買い込んだ。再確認も今、終わった。


「よし、ウェスタ、行こうか」


「了解なのじゃ」


 俺とウェスタは遺跡の階段を下りる。


 中に入ると、そこはくらい迷路のような遺跡となっていた。まぁ入り口からしてそんな雰囲気してたもんな。ウェスタに明かりを頼むか。


「ウェスタ」


「わかっておるのじゃ」


 呼びかけるだけでウェスタは火の玉を中に浮かべて光源を確保してくれた。


 明かりがつくと廊下の先まで見えるようになった。


「む、さっそく来るぞ!」


 ウェスタは廊下の先に何者かを見つけたようで身構える。俺もそちらに視線を向けると、体験を引きずった巨大なスケルトンがゆっくりとこちらに向かって歩いてきていた。


 スケルトンにしては巨大すぎる。ミノタウロスと同じくらいの大きさがあるぞ。


「ウェスタ、あいつはなんて魔物だ?」


「スケルトン・グレートソード。まだクラス分けされていない、このダンジョン初の魔物じゃな。クラス分けの基準からするとAクラスに分類される魔物じゃ」


 鑑定を使ったらしいウェスタからそんな答えが返ってくる。要するに新種か! しかも、スケルトンでAクラスに分類ということは今見つかっているスケルトンの種類の中で最強になるな。


 冷や汗が出る。そんな魔物が1層から出てくるとか、イカれてるとしか言えねぇよ。


 ん? そういえばスケルトンって……。


「ウェスタ、あいつをぎりぎり倒さない状態にすることってできるか?」


「む? 余裕じゃが何をする気じゃ? ……ああ、理解したのじゃ。失敗したらすぐにあの魔物は消し去るがそれでも良いか?」


 ウェスタはすぐに俺のやろうとしていることを理解してくれた。察しがいいな。


「問題ない! 頼む!」


「了解したのじゃ!」


 ウェスタはいつもの人間形態に加えて角を顕現させると、スケルトン・グレートソードに突撃していった。瞬間、スケルトン・グレートソードの大剣は粉砕され、四肢の骨がへし折られる。


 さすがだな。ウェスタがもはや何もできないスケルトン・グレートソードを引きずってこちらに戻ってきた。幼女に引きずられる巨人の骨……。すごい絵面だな。


「ほれ、やるといいのじゃ」


「ありがとな、ウェスタ。『契約』!」


 俺はスケルトン・グレートソードに向かって契約を発動する。ウェスタとの契約以来の発動だな。


 俺の魔力はスケルトン・グレートソードの意識空間に入り込む。前に俺は意識空間に入り込み、意識を交わすといった。確かにそれは間違ってないが、こういった魔物は意識が存在していないことも多い。そういう際は、意識空間を俺の魔力で塗りつぶすことで契約が成立する。まぁ本能ではじかれることもあるけどな。


 今回は……。抵抗反応がないな。このままいけば……。


 次の瞬間、スケルトン・グレートソードの上に魔法陣が現れ、その身体を読み込むように通過した。契約の魔法が刻まれたということだ。


 ウェスタの時は俺も意識空間に意識をすべて持っていかれ、これを見ることができなかったが、この演出のようなものは仲間が一人増えたという実感がわく。


「成功したのじゃな」


「ああ、成功した」


 前にゴブリンで試したときはダメだったのに、Aクラスのスケルトンでは成功か。


 やはり俺はアンデッド系、もしくはスケルトンだけに特化しているのでは?


「ちっ面倒じゃ」


 急にウェスタが振り向いて舌打ちをする。


「どうした、ウェスタ」


「まとめてくるのじゃ、数十体がな。あれを使うとするのじゃ。一応主殿には結界を張っておくとするかの」


 ウェスタは手だけをこちらに向けて、魔法陣を出す。すると、前に見たオーロラのような結界が俺の周りに現れた。と、同時に俺は契約したスケルトン・グレートソードの召喚を解除しておく。結界の中に入らないサイズだし、巻き込まれてしまったら大変だからな。


 しかし数十体、本当なのか? 俺もウェスタが見ているほうに目を向けると、うっすらとたくさんのスケルトンがひしめいている様子が見えた。


 ウェスタは両手を前に差し出し、大きな魔法陣を出した。何をする気だ?


「『蒼炎のブルーブレイ貫きジングレイ』」


 魔法陣から真っ青な炎の光線が照射される。


 その蒼炎は通路の先にいたスケルトンをすべて焼き尽くした。Aクラス数十体が焼き尽くされる威力か……。前にウェスタがやっていた爆発のようなやつよりも威力が高そうだ。


 軽くってのは本当だったのかもな。


「まったく、一層から面倒なのがおおいのう。トラップも警戒するのじゃ主殿。こういう性格の悪いダンジョンには必ず一層からトラップがあるのじゃ」


 いや、ウェスタのとこにもトラップあったし、自分がいたダンジョン性格悪いって言ってないそれ?


 まぁいいか。


「そうだな。しっかり注意していこう。宝箱とかは見分けつかないから、ウェスタに頼んでいいか?」


 ダンジョンのトラップは基本しっかり見ればわかるからな。でもミミックとかそういうのは見た目じゃ判別できない。それに関してはウェスタの鑑定に任せよう。


「了解したのじゃ。さ、先に進むぞ、主殿」


 おう。一層からこれじゃ、先が思いやられるけどな。




☆☆☆

あとがき

実は少し前から『最強火力二人のほのぼのVRMMO』というお話をカクヨムオンリーで投稿させていただいてます。もしよければぜひご一読ください!

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