挑むはCクラス

 さて、なんやかんやありながらも目的の中深度までやってきた。ここではCクラスの魔物がメインで出現する。下手に深深度の直前まで行くとBクラスとか出てくる可能性もあるからな。


 あんまり奥にはいかずに戦おう。ステータス的に届いているとはいえ、戦闘経験の余りない俺がBクラスに単身で挑めばまず死ぬからな。


 まぁウェスタが居るからそんなことにはならないと思うが、念の為だ。


「主殿、そこそこの奴が来たのじゃ」


 ウェスタに言われて通路の先を見ると、そこには確かに今までとは全く違うオーラを放つ巨大な蛇の魔物、ケイブサーペントが居た。


 Cクラスの魔物だ。


「主殿の相手にちょうど良さそうじゃな……。ここは主殿に任せるのじゃ」


「え、まじ?」


 てっきりこのままウェスタが狩りをして楽しむのかと思っていたが、どうやら俺が戦う練習をしても良いらしい。


「何かあったら儂が助けに入るのじゃ。遠慮なく戦ってよいぞ!」


「ありがとう。頑張ってみるか!」


 そういうわけで俺はケイブサーペントの前に躍り出る。装備の効果で上がったステータスを踏まえると、俺は速度で翻弄しつつ高い火力を出していく感じの闘い方になると思う。


 当然敵の攻撃をしっかり回避しないといけなくなるから難易度は高くなるけどな。


「ケシャーー!!」


 目の前に来た俺に気が付き、ケイブサーペントが威嚇してくる。まずはあいつの鱗にどれだけ俺の刀での攻撃が通じるのか、一度試して見よう。


 装備によって3000を超えた速度でケイブサーペントの真上の天井まで跳躍する。まるで視界が切り替わったような移動の速さだが、しっかりと制御できている。思えば、レベルが上がってから全力を出すのは初めてだな。


 体勢を変え、そのまま天井を蹴ってケイブサーペントの首元に落ちる。その瞬間に刀で一閃。


 ずいぶんと手ごたえが軽いな。当たらなかったか?


 着地して、ケイブサーペントの方を見ると、首が切断されていて、そのまま消滅していった。


 どうやらちゃんと直撃していたらしい。俺の勝ちだな。


「初勝利おめでとうなのじゃ! 主殿!」


 少し離れた所から見ていたウェスタがこちらに駆け寄ってくる。


「おう、ありがとう。しかしまぁ、実感がわかないな」


「まぁあっさりと終了してしもうたからのう。主殿が初心者ならこうはいかなかったと思うのじゃ。少なくとも一年以上はダンジョンで戦っていたような慣れを感じたぞ!」


 そういえばスケルトンとは一年以上戦っていたし、その分の慣れもあるのか?


 思うように体が動いたのもきっとそれだけ体を動かしてきたからだろうな。


「これからも主殿は定期的に戦うと良いのじゃ! 儂がいるから安全とは言え、何が起こるかわからないからのう!」


「そうだな、頑張って強くなることにするか」


 幼女に守られる成人とか見た目が完全にあれだ。早急に強くなる必要がありそうだな。


「そういえば今日は魔石目的できたんじゃったな?」


「そうだぞ?」


「ここからは最高効率で行くのじゃ。『感知』」


 ウェスタの言葉と同時に何かがダンジョン全体に広がっていった気がした。これは?


「ウェスタ、何をしたんだ?」


「『感知』の魔法じゃ。周囲の状況が把握できる力じゃ。常日頃から使っている奴もいるが儂は普段は余り使わない魔法じゃな」


 おそらく異世界魔法の一種だな。絶対そうだ。


「そういうわけで残りの魔物を効率よく倒すのじゃ! 全滅RTAってやつじゃな!」


「どこで学んだんだ? RTAって」


「パソコンで見たのじゃ」


 んー、マジでパソコン使いこなしてんだよなぁウェスタ。俺よりパソコン使う時間長くなってもおかしくないぞ。教育上それはどうなんだ?


 まぁもう成人どころの話じゃなさそうだけどさ。


「いいからいくのじゃ、早く帰って配信の用意じゃよ!」


「はいはい、わかったって」


 俺はウェスタに引かれてダンジョンをかけて行った。


◆◆◆


「やっば……」


 一時間もする頃には俺の指輪の中に80を超えるCクラスの魔石が収納されていた。魔石のドロップ率は70%くらいで落ちないこともあるから実際には100近い数の魔物を倒してるんじゃないか?


 人を避けながらでこれなのか。うちのウェスタはすごいな……。


「よし、これくらいでいいじゃろう。主殿、帰るのじゃ!」


 全然疲れとかなさそうだな。俺は付いていくだけだったけど少し疲れたぞ。


「おう、途中でアイスとか食べて帰ろうか」


 これだけ動いたんだからアイスくらい食べないと暑くてやってらんないな。


「アイス? なんじゃそれは」


「冷たくておいしい食べ物だよ。まぁまずはダンジョンから出よう。話はそれからだな」


「了解なのじゃ!」


 ウェスタを連れてダンジョンから出る。時刻は現在11時。そうか、朝食べてすぐ家を出て、探索者協会に寄った時点で9時だったもんな。1時間の探索じゃ、昼も回らないな。


 せっかくだから昼食った後にウェスタ用の服とか見に行ったらどうだろう。ウェスタは今、緑地のファーが付いたパーカーのようなものを着ている。『清掃』がある以上、これ以外必要ないのもわかるが、これだと暑そうだし、装備感と中世感が強い。


 せっかくなら現代の動きやすくて涼しい服を買ってあげたい。おしゃれさせるのもいいと思うしな。配信者をやる以上SNS映えは大事だし。


 そうと決まれば、だな。


「ウェスタ、予定より早く終わったし、昼食って服でも見ていくか?」


「ん? アイスはよいのか?」


「それは三時にしよう……」


 アイス、案外気になっていたらしい。それは三時のおやつに回す感じで。


「ならば服を見に行くのじゃ! ちょうど動画映えする服が欲しいと思っていたところなのじゃ」


 どうやらウェスタも俺と同じ考えをしていたらしい。


 だったら後は行動あるのみだな!


「まずは昼! ラーメンを食いに行こう!」


「ラーメンとはなんじゃ……?」

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