サブストーリ―「迫る双極【2】」
広大な過去の図書館から現世に戻った葉加瀬を連れて、仰木は本日宿泊する予定のホテルまで来た。
当然言語が分からないので、チェックインは葉加瀬が行う。
その後二人で部屋に入ると、手に入れた情報の閲覧を行っていく。
「天使に関する記述が多いね」
「天使だぁ?」
普段は宗教でしか聞かないような単語を耳にした仰木は急に何を言っているんだという顔をする。
「そう、天使。実在したらしいね」
「その本にはそう書いてあんのか?」
葉加瀬が手に持つ能力で手に入れた絶対の資料。それを見て仰木はいう。
「そう。とりあえず読んでいく」
仰木とも情報を共有するために、葉加瀬はその資料を声に出して読み上げて行く。情報を整理するためか、仰木もそれを黙って聞き入る。
「天使に関する記述:宇宙を作り上げた創造神ルビデウスの直属の配下。7人の大天使が主となり行動を行っている。火、水、風、土、氷、雷、光の大天使がいるが、光の大天使は現在消息不明である。創造神の命令によってのみ動き、現在は任務『グレートリセット』を実行中である」
「……なるほどな」
今まで一度も情報を間違ったことのない葉加瀬の能力だが、今回ばかりは仰木も疑ってしまう。余りにも唐突で荒唐無稽は話であるからだ。
そして、それがワシントンでの事件にかかわると、そう言っているのだから。
「まだまだあるよ。読んでいこうか」
「ああ、続きな」
葉加瀬はページをめくり、先ほどと同じように読み上げる。
「『グレートリセット』に関する記述:現在大天使たちが急務で取りかかっている任務である。創造神の失態であるとされるこの世界を終わらせることを目的とする。現在、全宇宙に存在する14の文明のうち、8つの文明が天使によって滅ぼされた。炎の大天使アルトレイアはラプレスの文明を、風の大天使シルフィーナは地球の文明を亡ぼすために行動中である」
「……マジ?」
「こればっかりは私もわからない。でも私の能力が間違っていたことはいままで一度もないから」
二人は真剣に考え込む。この情報が本当だったとして、どう対応するのか。政府にこのまま報告してもいいが、間違いなく真剣に取り合ってはくれないだろうということもわかっている。
「……とにかく続きだ。これ以降の情報がないと話がはじまらない」
「まだ情報はあるもんね。次、行こうか」
葉加瀬がページをめくる。その手は軽く震えていた。
「地球侵攻に関する記述:2033年6月21日、風の大天使シルフィーナが地球に対して攻撃を開始した。その影響により一つの都市、ワシントンで大きな被害が発生する。しかし、侵攻は悪魔憑き、紅 司(神宮司 礼二)によって止められた。その際、シルフィーナは負傷し撤退。現在は状態を整え、侵攻の用意をしている。過去、地球では光の大天使が消息不明となっているため、風の大天使は最大限の警戒をもって任務にあたる」
ページをめくる度に世界に激震を与えかねない情報が出てくる本を持つ葉加瀬の手は震えている。葉加瀬は確かに強い能力を持って、それを活用してはいるが、本質としては一般女性である。
彼女にとって、この情報は少し重かった。
だが、仰木にとっては違った。
「……紅さん、偽名だったのか。まぁそれはいい。とりあえず希望が見えたぞ。この情報を持つものとして最優先でやることは悪魔憑きと接触することだ。おそらく、悪魔憑きは紅さんだけじゃない。そして、天使と敵対しているのなら敵の敵は味方でおそらく手を組める」
「私も賛成、かな。とりあえず悪魔憑きについての記述がある本も持ってきてるからそれも後で読もう」
「とりあえず次のページを……」
そう仰木が言いかけたとき、部屋の中に風が吹いた。
仰木がとっさに窓を見ると、いつの間にか窓が開いている。
「日本人のお二人さん。悪魔憑きについて、一体どこで聞いたんだ?」
部屋の入り口、ドアの前に身長180cmほどの金髪の若い男が立っていた。
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