風宮くんはラブコメが書きたい

雪幡蒼

第1話 俺はラブコメを書きたい!

 俺の名前は風宮文雄、どこにでもいるごく普通の男子高校生だ。


 しかし、俺には憧れがある、ライトノベル作家になりたいということだ。

 近年流行りの異世界ものなどファンタジーにも憧れる。

 異世界が舞台で冒険の旅に出て、仲間達と熱き友情を乗り越えてボスを倒しに行く、その昔ながらのRPGのような物語には憧れる。

 王道の異世界転生ものならば、現代日本の主人公が異世界に転生して前世で持ち越ししたスキルを最大利用して異世界でチートな強さを持った状態で冒険する、それは最高だ。


 そう、現代においてラノベ戦国時代をいわれるこの世で、物語は世に溢れている。

 だが、俺にはこれを書きたいと思っているジャンルがある。


 俺が書きたいのはズバリ「ラブコメ」というジャンルが書きたい。


 なんのとりえもないごく普通の男が美少女に囲まれたリア充な生活を送る。それはなんというユートピアだろうか。

 美少女に迫られ、デートをしたり、関係を深め合ったり、周囲には常に男を慕ってくれる美少女がいる。なんという憧れの夢のようなシチュエーションだ。

 俺はこれまでたくさんのラブコメアニメや漫画にラノベにと目を通してきた。

 どれも共通するのはストーリーが進むにつれて、確定ヒロインと最後は結ばれる、その過程を見ていくのは面白い。


 本命ヒロインだけでなく、周囲の美少女達にもモテモテ、男の理想だ。

ライトノベルも大半はラブコメ要素が入っているだろう。

 それだけ人は「恋愛」というものに憧れる。

 リアルではモテない男がそういったアニメやラノベを見ることで、楽しむというのもあるだろう。年の近い男女、しかも美少女とそんな関係になって青春を過ごす、ああ、なんという夢だ。


 最近流行りの異世界ものだって、男主人公には美少女の仲間達が集まるのが鉄板だ。

 つまり、フィクション作品のほとんどには恋愛要素、つまりラブコメ要素が多いと言ってもいい。

フィクションの恋愛、それは見る側にも需要がある要素である。


 もちろん、俺にも普通の人並みには恋愛に憧れる。

 平凡な男に美少女で想いを寄せてくれる彼女ができる、素晴らしいことじゃないか。

 だからこそ、俺は自分にとっての理想の「ラブコメの物語」というものを形にしたい。

 現実に無理なのならば。せめてフィクション世界に夢を持ってもいいじゃないかッ!

 あいにくだが俺には昔から付き合いのある幼馴染も同居している妹や姉といった萌え属性な存在がいない。


 生まれて十六年、この方彼女などできたこともないのだから。

 普通でなんのとりえも魅力もない俺のような男を好きになってくれる女子なんていないだろう。


「うーむ。どうしたらラブコメとは書けるものなのか」


 こうして俺は、今日もパソコンの前で頭をうならせる。

 ラブコメが書きたい、そんな夢があったとしても、いざそのラブコメの物語を作る側になるなんて、レベルが高すぎるものだ。

 やはり自分に恋愛といった経験がないから思い浮かばないのだろうか?

 しかし、俺のようなやつに恋愛感情を持ってくれる女子なんているわけがない。

 いないからこそ、ラブコメの世界に憧れるわけで。


「やっぱり俺にそういう経験がないからまったく思いつかないのかもな」

 俺の理想のラブコメが読みたい、とは思ってもそれをなかなか実行に移すことはできない。


 こうして今日もただうなるだけだった。

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