第6話 私の弟
まず、私の弟……御堂くんって言います。
一個下なので…お二人と同年代ですね…。
御堂くんは、今年この緋葉ヶ枝高校に入学しています。
部活動はサッカー部。係活動は、保健委員会に入っていたみたいです。
…お二人とクラスは違ったみたいですけれど。知ってたりします…?
……そうですよね。
い、いえいえ…むしろ、本当に“一度も見た事がない”で正しいかも知れません。
…御堂くんは、5月の初め頃から、学校を休み始めたんです。
最初は体調が悪いと言っていたので、私も普通の体調不良として、特別気にして無かったんですけれど……徐々に様子がおかしくなっていったんです。
そ、そうですね……具体的に言うなら…。
口数が異様に減って……常に籠っている様に成りました。
色々聞いても、何も教えてくれなくて……。
病気…ですか……。そう…ですよね、最初はもちろんそう考えました。
でも……これは、長年の付き合いから…と言う非常に根拠に欠ける物言いになってしまいますが…病気では無い様に感じたんです。
それでも、その可能性は捨て切れないですよね…すみません。
ありがとうございます…。
じゃ、じゃあ、続けさせてもらいますね。
……本当にたまに部屋から出て来たかと思えば、深夜に何処かへ行ってしまう事もあって…。
親が家を開けている事も多いので、私がどうにかしなきゃって思って…その……おいかけたんです。……御堂くんのあとを。
……ごめんなさい。今思えば、とても冷静ではありませんね…。
でも、必死だったんです…。
辿り着いた先は…町外れの廃ビルでした。
そこへ入るためにはどうしても目立つ上、その…私の体力だと不安もあったので、そこでやむなく引き返しました…。
…………。
……廃ビルを見上げた時に、気が付いたんです。
遠くの民家からは見えにくい位置にいくつも明かりが点っている事に。
それだけじゃありません。
手前側の…ベランダの部分に、夜の帳の中で蠢く人影がいくつか見えました。
……私は、私は…どうしたらいいのか分かりませんでした…。
御堂くんが…自分の意志であそこに行っているとは、状況を省みても考えられません。
……単刀直入に…ですか。
…………日柳さん…。
お願いです……力を、貸してもらえませんか…。
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