第二章 世界樹の枝と外の状況

19. 小麦粉の取引

 最初に作ったパンの半分ほどは食べきり、残りの3分の2をクーオが、それ以外をホーフーンがカバンにしまった。

 クーオのカバンもマジックバッグで時間停止効果が付いているらしい。

 見た目は普通のカバンなんだけど、結構すごいものだった。


 そのあと、僕たちは手分けして持って来ていた最初の一袋の小麦粉をすべてパンにして焼く。

 結構ハードで疲れてしまった。

 パンを焼くだけでもこんなに手間がかかるんだなぁ。


「さて、あとはパンが焼き上がるのを待つだけにゃ。その前に、クーオ。今回の小麦粉、どれだけ買っていきますかにゃ?」


「どれだけ……持って行ける分だけ全部売ってほしいニャ! これだけ上等な小麦粉ならどこに行っても飛ぶように売れますニャ!」


「わかりましたにゃ。この分で行くと……10kgの袋1つで吾輩たちのパン10日分ほどが作れそうなので、3袋だけ残してあとは全部持っていくといいにゃ」


「それはありがたいニャ! それで、小麦粉を買うに当たり、ほしいものはなんニャ?」


「まずはしっかりとしたテーブルと椅子でしょうかにゃ? この小屋にはありませんからにゃ」


「それくらいなら、いますぐ犬車の中から持って来ますニャ。他に入り用な物はなんですかニャ?」


「パン焼き釜を載せるための土台に魔道式加熱機と土台、それに対応した鍋一式、お皿やナイフなどのカトラリー一式ですにゃ」


「なるほど。それくらいなら今回の取引で足は出ませんニャ。次に来るときまでに揃えておきますニャ」


 ホーフーンとクーオの商談はまとまったみたいだ。

 ホーフーンはあれこれ頼んでいたみたいだけど、それでも今回売りに出す小麦粉だけで十分に足りるみたい。

 一体、あの小麦粉にはどれくらいの価値があるのだろう。

 知りたいような、怖いような……。


「バオア様の要望はありませんかニャ? 言ってもらえれば大抵の物は揃えるニャ」


「僕のほしい物か……でも、僕は先に着替えも一式もらっちゃったし」


「着替えはお近付きの印でもありますニャ。あれだけ高度な機械を見せてもらえたのですから当然ですニャ」


 うーん、そうなるとほしいものか。

 なにがあるだろう?


「畑にまく肥料とかってあるかな? 水みたいな感じで液体の物がいいんだけど」


「液体肥料ですかニャ? ケットシーの里なら在庫がありますニャ。それを使って農業を続けるのですかニャ?」


「うん。どれくらい収穫量が上がるかわからないけどね」


「そういうことなら急ぎで届けますニャ。量もたくさん届けますので存分にお使いくださいニャ」


「いいの? ケットシーの里の秘伝とかじゃない?」


「まあ、ヒト族に売り渡すことはないニャ。でも、今回は特別ニャ。美味しく真っ白い小麦粉を増産するためケットシーの里も協力するニャ」


 勝手にこんなことを決めてもいいんだろうか?

 ホーフーンはクーオに任せておけばいいと言っているので大丈夫なんだろうけど心配だ。

 肥料が手に入ればもっと収穫量が増えるかもしれない。

 上手く手に入れてほしいな。

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