17. 小麦から小麦粉へ

「なんと!? これが製粉機ですかにゃ!?」


 さすがのホーフーンも驚いたみたいだ。

 部屋の中央に陣取るこの機械は横に5人分、奥行きが3人分、高さが僕の背丈でふたり分くらいある。

 そんな巨大な装置に小麦を入れたら小麦粉が出来るんだからすごいよね。


 ホーフーンの興奮が覚めやらぬ中、クーオもやってきて話に加わった。

 クーオはホーフーンほど驚きはしなかったけど、やっぱりこの機械には驚きを隠せなかったようだ。

 そして、ふたりとも早く動いているところが見たいと要求してくる。

 僕も動いているところをみたいし、早速使うとしよう。


 この製粉機の使い方は、右手側の巨大なバケツの中に小麦を入れ、稼働スイッチを押すだけだ。

 乾燥させた小麦を全部バケツに入れても大丈夫だったので、すべて入れてしまった。

 あとは製粉機を動かすだけである。

 そのため、稼働スイッチを押そうとしたんだけど、そこでホーフーンから待ったがかかった。


「この装置の稼働をバオア以外でも出来るか確かめてみましょうにゃ」


「それもそうだね。クーオ、ボタンを押してくれる?」


「はいですニャ! ポチッとニャ」


 クーオが稼働スイッチを押すと、製粉機全体からゴウンゴウンとうなり声が上がり始める。

 しばらくすると、製粉機の左側から麻袋が出てきた。

 重さは……10kgぐらいかな。

 1袋目が出てきたあとは次々と麻袋が出てくる。

 僕らは麻袋の中身を確かめるため、一度製粉機を止めて麻袋を取りに行った。

 麻袋の中は……真っ白な小麦粉だった。

 こんな白い小麦粉みたことがない!


「すごいですニャ! これは特上品の中の特上品ですニャ!」


「やっぱりすごいんだね、クーオ」


「すごいに決まってますニャ! お貴族様が使う小麦粉だってまだ籾殻が残っていて家でふるいにかけますニャ。これはその必要がまったくないニャ! 革命的だニャ!」


「……そんなにすごいんだ、ホーフーン」


「すごいなんて物じゃないですにゃよ? 真っ白な小麦粉を大量生産できる機械なんて聞いたことがないにゃ。いま、クーオは舞い上がっていて忘れていますが、この機械の仕組みも調べてケットシーの里に持ち帰る必要がありますにゃ。でも、分解できるところが見当たりませんにゃ。再現は難しそうだにゃ」


 そういえばそうだった。

 クーオはケットシーの里の外で魔道具のアイディアを調べてくる役目もあるんだっけ。

 この機械の仕組みは難しいだろうなぁ。

 バケツに麦を入れて送り出すところまでは出来ても、小麦を小麦粉にする作業がまったくわからないもの。

 ケットシーたち、どうするんだろう。

 創意工夫でなんとかなるものなんだろうか?

 もし完成したらそっちも見せてもらいたいな。

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