11. 『小型種まき機』の性能

 僕たちは行商人のクーオからたくさんの種麦をもらうことが出来た。

 なんでこんなに持ち歩いていたのかを聞いたところ、どこも不作で種麦にすら困っているところが多いそうだ。

 そういったところで売るために持ち歩いていたのだとか。

 それを譲ってくれるだなんてありがたいな。


「さて『小型種まき機』の使い方にゃ。まずは、この上にある箱に種となる麦を入れるにゃ」


「うん。でも、不思議な材質の箱だね。薄いのに頑丈そう。それに、鉄とかじゃなさそうだ」


「そこはスキルの力で出来た不思議物質ということで片付けましょうにゃ。早く麦を入れるにゃ」


 ホーフーンとクーオに補助してもらいながら種麦を箱の中に入れる。

 もらった種麦をいっぱいになるまで詰め、箱の蓋をした。

 これで準備出来たのかな?


「はいですにゃ。準備完了ですにゃ。あとは小型トラクターに小型種まき機をつなぎ、耕した畑の端で小型種まき機を起動させるにゃ。そうすれば種が蒔かれるはずにゃ」


「わかった。早速行ってくる」


 僕は小型トラクターに乗り込み小型種まき機をドッキングさせる。

 そして、畑の方まで行ったら小型種まき機を起動させた。

 すると、小型種まき機の方からものすごい音と振動が伝わってくる。

 本当に大丈夫なのかな?


 心配しても仕方がないと判断して畑の上を小型トラクターで進んでいく。

 これだけで種まきが進んでいくらしいけど、本当なんだろうか。

 ある程度進むと、後ろの方でホーフーンとクーオが小型トラクターの通ったあとを確認しているのが見えた。

 僕も行ってみるとしよう。


「おや、バオアも来ましたかにゃ」


「うん。どうなってるか気になったからね」


「それなら問題ないと思いますにゃ。小型種まき機の通ったあとはしっかりと種まきがされていますにゃ」


「種まきって……どこに?」


 小型種まき機が通ったあとの地面はでこぼこに盛り上がっている部分と引っ込んでいる部分に分かれている。

 出っ張っている部分はなにか濡れたようなあとがあるんだけど、どういうことなんだろう?


「種はこの出っ張った部分の中に埋め込まれていますにゃ」


「埋め込まれている? そんなことまでしていたの?」


「はいですにゃ。おそらくですが、小型種まき機の仕組みはこうにゃ」


 ホーフーンの説明によると、小型種まき機が通ったとき、地面に穴を開けてそこに種を落とす。

 種を落としたあと薄く土をかぶせ更に肥料となる液体をかけているのだそうな。

 そこまでやってくれるんだ、小型種まき機って。


 そして、その横で頭を悩ましているのはクーオだ。

 仕組みは説明されたけど、実際どうやって実現するかを悩んでいるらしい。

 結局はホーフーンが絵におこしてそれを持ち帰ることで決着したようだ。

 技術を持ち帰るというのも楽じゃないね。

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