10. 猫の行商人『クーオ』
クーオと名乗ったケットシー族の行商人。
どうやってここにやってきたのかは内緒だそうだ。
気になるけどまずは必要な物を買おう。
「あの、僕たち農業をしているんですけど種がなくて」
「種、ですかニャ? ホーフーン様、あちらに見える畑、ずいぶんと広いようですがどうやって開墾したのニャ?」
「バオアのスキル『農業機器』の力にゃ。あの乗り物、『トラクター』も農業機器にゃ」
「なんと!? あれだけの広さの畑をひとりで開墾したのかニャ!?」
「ホーフーンにも手伝ってもらったけどね。それで、種はある? 出来れば種麦がほしいんだけど」
「それは土壌の状態を確認してからニャ。ちょっと拝見させていただきますニャ」
クーオは畑に近寄っていき、土をつまみ上げた。
つまみ上げた土をもみほぐしながら目でじっくりと見定め、こちらに振り返る。
果たして合格はもらえるのだろうか?
「立派な土だニャ。よく耕されていて湿気も十分ニャ。これは収穫も期待できそうなのニャ」
「それじゃあ」
「まあ、話を最後まで聞くニャ。私はあくまで行商人。代わりに買い取る物はあるのかニャ?」
「あ……」
うーん、売れる物がない。
いまは作物もないしあるのは世界樹の森で集めてきた果実や山菜、キノコのみだ。
これで交換してもらえるだろうか?
「クーオ、ひとまず種は先払いで収穫できた麦と交換してはもらえませんかにゃ?」
「ホーフーン?」
「世界樹の森の作物は外に持ち出すと腐るのにゃ。物々交換の対象にはできませんのにゃ」
「ああ、なるほど」
「あと、この畑を耕した『小型トラクター』に『小型耕運機』、『小型種まき機』を調べる権利をあげますにゃ。どうですかにゃ?」
え?
僕のスキルで出来た道具を調べる権利?
そんなの対価になるの?
ホーフーンに聞いたところ、十分に対価になるらしい。
クーオは各地で道具を調べ、ケットシーの里で魔道具を作る際のアイディアを出す役目も担っているそうだ。
そのため、僕のスキルで出てきたような珍しい道具を調べることは十分対価として役割を果たすとのこと。
意外だね。
それを聞いたクーオは喜んでトラクターを調べ始める。
ホーフーンから操縦方法の説明を聞くと、一時間足らずで完全に運転方法を理解して乗りこなした。
こういう物は得意らしい。
トラクターの仕組みはこれだけでなんとなく理解できたようで、もう十分だそうだ。
次に小型耕運機を調べる。
これはじっくりと形を調べ、スケッチをしながら僕やホーフーンに説明をしてきた。
中にあるねじれた棒状の部分が畑を耕すと聞くと驚いていたけどね。
でも、これもケットシーの里で類似品を生産できそうだということなので喜んでいた。
問題は、僕たちもまだ使ったことのない小型種まき機だ。
形を念入りにスケッチしているけど、僕もホーフーンも機能を説明できない。
こればっかりは実際に動かしてみないとどうしようもないという結論に至った。
「ニャ。面白い道具でしたニャ。あとは小型種まき機の仕組みがわかれば最高ですニャ。先払いとして種麦を差し上げますニャ」
やった!
これで種まきも出来る!
麦がどれくらいで育ちきるかわからないけど、一歩前進だね。
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